目次

  1. レベニューシェアとは 
    1. レベニューシェアの具体例
    2. レベニューシェアの目的
    3. レベニューシェアの相場
    4. レベニューシェアとプロフィットシェアの違い
    5. レベニューシェアとロイヤリティの違い
  2. レベニューシェアのメリット
    1. 収益増加が期待できる
    2. 発注側は新規参入がしやすくなる
    3. 相乗効果で事業の磨き上げにつながる
  3. レベニューシェアのデメリット
    1. 利益追求のプレッシャーを感じる
    2. コスト負担に見合う収入を得られない可能性がある
    3. 成果物の権利が曖昧になる
  4. レベニューシェアの成功事例・失敗事例
    1. 【成功事例】宿泊施設の予約サイト運営
    2. 【失敗事例】サロンのホームページ作成
  5. レベニューシェア契約で失敗しないためのポイント
    1. ビジネスモデルを理解する
    2. パートナー選びは慎重におこなう
    3. 契約書の内容は詳細までしっかり作りこむ
  6. レベニューシェアを飛躍のツールに

 レベニューシェアとは、収益分配型で結ばれる契約です。

 一般的には、ある事業から生み出される収益をあらかじめ決めた割合で関与した事業体間で分け合う協力体制を総じて「レベニューシェア」と呼んでいますが、狭義には、事業の発注側と受注側で一定の割合で分配する成果報酬型の契約形態の一つとされます。

 レベニューシェアは、発注側と受注側が利益とリスクを共有する新たなビジネスモデルとして注目されています。

 レベニューシェア型の雇用契約では、受注側は無償、もしくは安価で業務を請け負うことになるため、自身の費用負担で成果品を提供する必要があります。しかし、将来、当該事業によって得られる収益のなかから、一定期間にわたって報酬を受け取ることができます。

 例えば、発注側がスマートフォン用のアプリを開発したいとき、これを受注する開発会社とレベニューシェア契約を結ぶとしましょう。開発会社にはアプリのダウンロードから得られる売り上げに応じて、発注者から一定の収益が支払われ続ける、このような収益モデルがレベニューシェアの特徴です。

 レベニューシェアがよく活用される例は、以下のようなIT業界です。

  • ECサイトなどのWebサイト制作
  • アプリ開発
  • システム開発会社による業務システム開発
  • サービス開発

 IT業界は、売り上げが数値で把握しやすいため、レベニューシェア型契約に適しています。また、開発側(受注側)が運用・保守・メンテナンスも請け負い続けることが多いため、レベニューシェアで成果に対する報酬を支払う契約を結んでおけば、契約期間中のさらなるブラッシュアップも期待できます。

 これまでの契約方式では、特定の作業量に対して固定の報酬を支払う固定報酬型の形態が一般的でした。発注者は必要な資金を調達し、実際に事業を稼働させるまで効果はわからないなかで、場合によっては大きな損失を抱える可能性もある覚悟をもって臨まなければなりませんでした。

 つまり、発注者が全面的にコストを負担し、リスクを背負って事業に参入することが求められていたのです。発注者側に偏った過大なリスク負担は新規参入の高い障壁となり、市場が活性化しません。

 レベニューシェア型の契約形態は、受注側にサービス導入時の業務を安価(もしくは無償)で請け負ってもらう仕組みのため、発注側は売り上げ発生前に多額の資金を準備する必要がありません。そのため、スタートアップ企業や、経営資源に限りのある中小企業や小規模事業者にとって、新市場・新分野への参入を促進する有効な手段となり得ます。

 さまざまなステージの企業の参入により企業間の競争が促され、成果品の品質向上など、市場の活性化も期待できるでしょう。

 契約は売り上げの配分率を決める形で結ばれることが多く、「いくらにすれば適正」という相場については、業務内容や収益率、業務や費用の負担割合や業界環境など、それぞれの状況に応じて異なり、一定の数字を見出しにくい背景があります。

①レベニューシェアの契約金額の考え方

 レベニューシェアは成果報酬型のため、基本的な考え方として、リスク負担や業務遂行にあたっての実働時間など、事業への貢献度に見合った報酬が期待できる数字であることが前提となるでしょう。

 固定報酬型であれば、発注側が初期投資を全面的に負担し、受注側はノーリスクで事業に参画できたことと比較すると、リスクを引き受ける受注者側にメリットがなければ、成功報酬型の契約は成立しません。

 事業が好調な場合は、「固定報酬型で成立する契約金額よりは、受注側には高額な報酬が支払われる」という相場観は持ち合わせておくべきでしょう。つまり、発注側の視点で考えれば、委託先へのトータルの支払額を比較した場合、固定報酬型で支払っておいた方が低くて済むこともある、ということです。

 受注側の立場としては、業務分担や必要経費などの負担規模を算出し、固定報酬型であれば得られるであろう相場を受取総額の基本としてイメージしながら、譲歩できる最低ラインをよく見定めて交渉にあたることが推奨されます。

②レベニューシェアの相場例

 筆者の知る限りでは、粗利の大小によって異なりますが、事業で生じる売り上げの1~3割の金額を発注者が受注者に支払うケースが多いように見受けられます。例えば、仕入を伴う小売業であれば粗利が小さくなるため、売り上げの10~18%と2割未満に抑えるケースが一般的でしょうか。

 ファッション系ECサイトのレベニューシェアでこれを超える率を見かけたことがありますが、クレジットカードの決済手数料も含まれていたうえに、セール期間中は割合を下げるなど、弾力的な運用がなされていました。

 同じ物販であっても、サプリメントのような健康食品や化粧品など、利益率の高い商品であれば、高い歩合での設定も可能かもしれません。

 レベニューシェアとよく似た成功報酬型の契約形態として、「プロフィットシェア」があります。

 レベニュー(revenue)は「売り上げ」、プロフィット(profit)は売り上げから経費を差し引いた「利益」となります。レベニューシェアは、事業で得た「売り上げ」から一定割合で分配されるのに対し、プロフィットシェアは「利益」を一定割合で分配する契約となります。

 受注側が無償もしくは安価で業務を請け負う点、当該事業によって得られる将来の収益から一定期間にわたって報酬を受け取ることができる点など、共通点もありますが、分配対象が異なるため注意が必要です。

 売り上げを超える諸経費が発生した場合、レベニューシェアであれば、受注側は契約に基づく配分率で報酬を受け取ることができますが、プロフィットシェアであれば、売り上げがあっても利益が残らなければ、受注側は報酬を受け取ることができません。報酬の実現性という観点からは、レベニューシェアの方が受注側に有利といえます。

 逆に、発注側については、レベニューシェアよりもプロフィットシェアの方が、よりリスクを低減できる可能性があります。費用面だけをとらえて考えれば、どちらの契約を選択するかによって、発注側と受注側のリスクが逆転します。

レベニューシェア プロフィットシェア
定義 売り上げが生じた場合、経費を差し引かずに、一定割合で分配する 経費を差し引いて、利益が残った場合に分配する
分配対象 売り上げ 利益
リスク分担 受注側に有利 発注側に有利

 似たような形態なので混同しがちですが、契約の際は言葉に惑わされることなく、分配対象を明確にしたうえで、できるだけ公平・公正な契約になるように、条件を整理していきましょう。

 レベニューシェアとよく似た考え方にロイヤリティがあります。

 ロイヤリティは、権利を持つ者にその権利を利用する側が支払うもので、特許権、商標権、著作権などの知的財産権の利用に対する対価を指します。特にノウハウがなくても開業できるフランチャイズ方式でも、加盟店が本部へ定期的に払う対価をロイヤリティと呼びます。ノウハウや看板を利用する権利の対価と考えるとよいでしょう。

 これらロイヤリティにはさまざまな支払い方式があり、その一つとしてレベニューシェアのように売り上げに対して一定割合を支払う「売上歩合方式」や、プロフィットシェアに近い「粗利分配方式」などの「定率方式」があります。

 業務委託を伴うレベニューシェアやプロフィットシェアとは異なる概念として整理しておきましょう。

 レベニューシェアでの契約下では、支払い枠が固定されないため、発注側は初期投資を抑え事業スタート時のリスクを軽減できます。一方、受注側には、収益を継続的に得られるビジネスチャンスをつかむ可能性があります。

 具体的なメリットは、以下の通りです。

  • 収益増加が期待できる
  • 発注側は新規参入がしやすくなる
  • 相乗効果で事業の磨き上げにつながる

 それぞれ詳しく解説します。

 発注側・受注側の双方が、新たなパートナーシップや提携により、新しい顧客層へリーチする可能性を手にします。これによって、事業拡大やイノベーションによる収益増加が期待できます。

 また、リスクの分散で大きな赤字を回避し、収益を共有することで双方のモチベーションが高まり、売り上げ増大を図る取り組みを双方が積極的に行いたくなるしくみが生まれ、成果につながります。

 特に受注側は、契約が続く限り継続的に収益を得られるビジネスチャンスをつかむ可能性があり、自社の収益モデルにプラスに働くことが期待できるでしょう。

 初期投資が少なくなることで、参入のハードルが下がり、新市場に挑戦しやすくなります。契約内容はケースバイケースで調整も可能で、事業の成長に応じて弾力的な運用が期待できます。

 特定のビジネスモデルや業種に限定されず、有望なアイディアがあれば、技術やノウハウを有する別の事業体とのレベニューシェアで新規参入することができるのもメリットです。

 レベニューシェアは、双方がそれぞれのアイディアやノウハウを持ち寄って、収益の最大化を図る仕組みです。同じベクトルで力を出し合うことで、お互いから学ぶ機会を得ることができます。

 当該事業だけでなく、それぞれほかの事業や取り組みにおいてもその学びを生かし、お互いの事業の磨き上げにつながることも期待できます。

 レベニューシェア型の契約形態にはさまざまなメリットがある一方で、留意したいデメリットもあります。

  • 利益追求のプレッシャーを感じる
  • コスト負担に見合う収入を得られない可能性がある
  • 成果物の権利が曖昧になる

 それぞれ少し詳しく見ていきましょう。

 レベニューシェアは成功次第で双方の収益が変動するため、利益を追求するプレッシャーは高まることが予想されます。順調なうちはよいのですが、思うような売り上げが見込めない場合には、利益分配の比率が公平に感じられなくなったり、コスト負担への不満が出たりすることもあり得るでしょう。

 双方の努力で超えられる壁であればよいのですが、そもそものビジネスモデルに無理があるケースも考えられます。

 レベニューシェアは売り上げの一部を分配するため、売り上げが低下した場合は収益が下がります。双方のコスト負担に見合うレベルの収入が得られるかどうかという金額の不確定性は大きなデメリットです。当事者がどんなに努力をしても、コントロールできない外部環境の変化など、ビジネスには不確定な要素がつきものです。

 受注側にとっては、本来であれば一定額を得られるであろうスキルを提供したり、従来であれば背負う必要のないコストを負担したりしなければならないため、これらのデメリットがレベニューシェア選択のハードルとなることも考えられます。

 従来は、成果物の権利については著作権のような特殊な場合を除き、コストを負担する発注側に許諾されるよう契約を結ぶものでした。レベニューシェアでは、リスクやコストも共有しているため、成果物の権利だけを発注側が100%持つことには抵抗があるでしょう。関係が悪化してしまった場合、成果物の利用ができなくなる可能性もあります。

 また、双方が事業の当事者となるため、当事者間の合意形成に時間を要し、結果としてビジネスの競争力低下を招くこともあります。

 ここでは、筆者が知るレベニューシェアの成功事例と失敗事例を解説します。

 スマートフォンの普及により、インターネット経由の宿泊予約が増加しています。自社ホームページに予約ページを設けているケースも見受けられますが、じゃらんや楽天トラベルなどの「OTA(オンライン・トラベル・エージェント:インターネット上のみで旅行商品を取り扱う旅行会社)」の集客の重要性は無視できないほど高くなっています。

 一般的に、OTA経由の予約には売り上げに応じた手数料が発生しますが、これはレベニューシェアの一種といえます。また、このOTAを使いこなすための代行業者や、OTAへの手数料支払いを避けたい宿泊施設の公式ホームページ運用を請け負う業者も増えており、これらのケースにはレベニューシェアがなじみます。

 発注側の宿泊施設が、ホームページの発注も躊躇するような小規模事業所だったとしても、キラリと光る魅力があり、稼働率を上げさえすれば十分な売り上げが見込める施設であった場合、レベニューシェアでの支援が可能です。

①レベニューシェアの成功事例

 当時、フリーランスで独立したばかりの筆者は、コンサルタントとして関与していた家族経営の宿泊施設に対して、レベニューシェアを提案。公式ホームページの構築・運営、予約フォームの受付・事前決済など、インターネットを使った集客から送客までを無償で請け負い、以降Web経由の予約から生じる売り上げについて1割の報酬を得る契約をしました。

 連泊を促す滞在型コースの構築、宿泊費の設定、貸出品の有料化など、客単価を上げる提案を数多く行い、タイムリーにホームページを更新していきました。宿泊者増に対応するため、現地のレイアウトやシフトの見直しもこまめに行い、倉庫スペースを客室にするリフォームの提案が受け入れられたこともあります。

 宿泊施設は、集客、予約、決裁などの業務に煩わされることなく、現地でのサービス提供と顧客満足度向上に専念することができます。Web上の広報・宣伝の強化は売り上げアップ、つまり報酬増につながるため、宿泊施設が細かく指示をしなくても、受注側のモチベーションは維持されます。

 利益が定量的に数値化できる事業で、かつ付加価値の高い事業であれば、レベニューシェアは適しています。この事例のように、一見零細であっても、商圏が拡大する要素を持ち成長性が見込まれる事業においては、発注側・受注側のパートナーシップがうまく働き、事業の拡大が期待できます。

 ネット経由の予約が増加しているジャンルとして、美容系サロンが挙げられます。ホットペッパービューティーのような圧倒的な大きさを誇る美容系サロンの検索・予約サイトが、独自のマーケティングでターゲットを集客しています。

 このポータルサイト上で選ばれるためには、さまざまな工夫が必要です。工夫するためには追加コストがかかるしくみになっており、並行して売り上げに応じた歩合の手数料も払う契約が標準的です。

 そんな費用は払えない、と考える零細な事業者をターゲットに、レベニューシェアでのホームページ作成や、予約サイト運営を提案する業者からのアプローチをいくつも見かけてきました。

 サロンは技術が主体となる業種であり、一見すると付加価値の高い商いのように見えますが、店舗を構えればテナントの賃料や、美容機器のリース代、施術をマスターするための研修代や資格の維持費など多くの固定費がかかるものです。

 さらに、労働集約的な業種のため、人数を増やさなければ売り上げは増えません。人手不足が慢性化する状況下では、人件費も高騰します。こんな業界でレベニューシェアを導入しても、お互い不幸です。

①レベニューシェアの失敗事例

 創業間もないある美容系サロンでは、ホームページを無料で作ってもらえたものの、その報酬として予約の1~2割を5年間支払うレベニューシェアで契約していました。美容業の利益率は8割ともいわれますが、小規模なサロンでは稼ぎの規模が小さく、固定費の割合が高くなってしまうため、売り上げに応じた手数料は大きな負担でした。

 人手を増やせば売上増も見込めますが、人件費負担を考えると踏み切れません。また、ホームページ構築の技術は日進月歩で、あっという間に陳腐化します。導入当初は斬新に見えたページも、次第に見劣りするようになっていきましたが、売り上げの見込めないサロンのホームページに、業者が手を入れることはありませんでした。

 年を経て、簡単にホームページを構築できる便利なサービスが次々に現れ、自分で作った無料ページの方が、ずっと見栄えがよく仕上がると思われましたが、当然契約期間内にほかのサイト経由で予約を受けることは禁じられています。

 サロン側は「ネット経由で予約が入ると不利だから」と5年間、せっかく活用しようと思っていたインターネットを集客に使いきれず、結果的に業者側も思ったような報酬を得ることができませんでした。

 レベニューシェア契約の形態は、収益に応じて報酬額が変動する点が特徴です。契約の当事者は、参画する事業のビジネスモデル(収益を生み出すしくみ)を一定程度理解しておくことが、失敗を防ぐポイントとなります。

 レベニューシェア契約で失敗しないための具体的なポイントを紹介します。

失敗しないためのポイント 概要
ビジネスモデルを理解する 成果を定量的に可視化できるかどうか、付加価値の高い事業であるかどうか見極める
パートナー選びは慎重におこなう 良好かつ透明度の高いコミュニケーションが維持できる、かつ長期的な視点を持って高め合える相手であるか見極める
契約書の内容は詳細までしっかり作りこむ 業務範囲(双方の負担)と報酬の分配に関する条項、また契約の終了に関するルールは明確に定めておく

 それぞれ詳しく見ていきましょう。

 前提として、すべての業種・業界や事業体においてレベニューシェア契約が適しているとは限りません。この契約形態を選択すべき事業なのか、よく検討する必要があります。

 成果報酬型で分配される、ということは、成果を定量的に可視化できることが最低条件となります。かつ付加価値の高い事業であることも必須条件であると考えます。売り上げに連動させるため、手数料を払っても経費がまかなえるだけの収益が発注側に残ることが、事業継続上当然の条件となるからです。

 また、付加価値がどこで生じるのか、そのビジネスモデルが理解できない業種や業界の事業において、レベニューシェアで参画することは避けなければなりません。将来性や成長性という言葉に惑わされて、感情や勢いで契約してしまうと、将来的な契約の継続性を損ない、トラブルに発展する恐れがあります。

 IT業界やECサイト運営において、レベニューシェアが採用されやすいのは、売り上げが定量化されるため、収益やリスクを算出しやすく、報酬の見込みが立てやすいことによるものです。さらに、IT分野は付加価値の高いビジネスモデルを構築しやすく、売上基準で分配しても利益が残るしくみを構築しやすいことから、導入にあたっての安心感もあります。

 レベニューシェアの契約相手は、単なる受発注の上下関係ではなく、運命共同体となる対等な関係です。お互いに切磋琢磨して、事業が成功するまで伴走できる関係を構築し、維持できるか、よく見極める必要があります。信頼できるパートナー選びが、事業の成否を左右するといっても過言ではありません。

 まず、良好かつ透明度の高いコミュニケーションが維持できるか、利益分配の比率やそのほかの契約内容を明確に共有できる関係の構築が重要です。簡単な覚書で強引に進めようとしたり、分配計算の基礎となる売上データの開示を拒んだり、誠意のない対応が見受けられたりするようであれば、撤退する勇気も必要です。

 さらに、長期的な視点を持って、高め合える相手なのか、人柄はもちろん、業種・業界的に協働関係が結べる相手なのか、客観的に判断することが重要です。レベニューシェアは、短期的な成功に一喜一憂するよりも、長期的なパートナーシップの下で収益の最大化と事業の成長を目指すべき形態であることは、いうまでもありません。

 民法上は口約束も契約として成立するとされていますが、「契約」として法的に保護されるためには、互いの権利と義務についての合意内容を具体的に明らかにし、「契約書」として可視化して、いざというときには証拠として使えるように保存しておく必要があります。

 レベニューシェアの場合、業務範囲(双方の負担)と報酬の分配に関する条項は、特に重要です。責任や負担を押し付け合うことのないよう、具体的かつ現実的に定めていく必要があります。また、契約の終了に関するルールも明確に定めておくことで、トラブルの防止につながります。

 リスクを負担している当事者同士、事業が成功している限りは、契約を長く継続して、初期投資に見合った資金を回収したいと思うものです。一方で、うまくいかないケースでは、事業の成功を待ちきれずに当事者のいずれかが一方的に業務から離脱して事業が継続できなくなる事態も起こり得ます。何を条件として契約が終了するのか、あらかじめどのようなルールを定めたかは、トラブル回避のためにも重要な意義を持ちます。

 レベニューシェアに関する契約書については、契約期間の定めがない、もしくは一定程度の長期期間を定めることが前提になると思われます。特定の相手方との間において継続的に生じる取引の基本となる契約書のうち、契約期間が3カ月以内であり、かつ更新の定めのないものを除いた文書は、「継続的取引の基本となる契約書(印紙税法の第7号文書)」に該当するものとして、1通につき4,000円の収入印紙を貼付する必要があります。納税義務違反に対しては「過怠税」が課せられます(参照:印紙を貼り付けなかった場合の過怠税|国税庁)。

 なお、収入印紙がなくても、民事上の効力がただちに失われるわけではなく、必ずしも契約内容が無効とはなるわけではありません。

 筆者は20年程前、ISP(インターネットサービスプロバイダー)のOEMを手掛けるベンチャー企業に勤めていました。レベニューシェアで大手通信会社と連携し、自前の設備を保有することなくプロバイダー事業を展開することができたものの、接続料の従量制を前提としたビジネスモデルは、定額制が主流となったブロードバンド化の進展であっという間に通用しなくなってしまいました。

 設備こそ投資しませんでしたが、長期にわたって回収するつもりで、接続時間の長期化やデータ量で接続料アップを図るために投資したコンテンツ制作費などは収益を大きく圧迫し、ほかの取り組みもなかなか実らず、会社は営業を停止しました。

 自戒をこめて伝えたいのは、誰かが無理をするビジネスモデルは長続きしないということと、時代の流れや規制緩和、技術革新など、事業を取り巻く環境には常にアンテナを張っておかなければならないということです。

 レベニューシェアは、資本が乏しくても、アイディアに共感する仲間同士がそれぞれの技術やノウハウを持ち寄って、新たな事業を興すことのできる素晴らしい仕組みです。従来の受発注の「上下関係」ではなく、「対等なパートナーシップ」がベースになっています。

 投資目的で出資するのとも違って、当事者となって事業の中身をよく理解し、取り巻く環境に関心を持ち、事業の成功に向けて協働できる関係は、それぞれの飛躍のきっかけになり得るものです。レベニューシェアを活用してさまざまな挑戦を重ね、チームで新たな価値を作り出す醍醐味を多くの事業者に味わってほしいと思っています。