キャパオーバーとは?原因やなりやすい人の特徴、対処法や対策を解説
キャパオーバーとは人や物の処理能力の限界を超えた状態のことで、ネガティブな意味で使われることが多い言葉です。この記事では、キャパオーバーが起きる原因やなりやすい人の特徴、対処法や対策について解説します。また、会社として取り組む対策のポイントやキャパオーバーのポジティブ面についても紹介します。
キャパオーバーとは人や物の処理能力の限界を超えた状態のことで、ネガティブな意味で使われることが多い言葉です。この記事では、キャパオーバーが起きる原因やなりやすい人の特徴、対処法や対策について解説します。また、会社として取り組む対策のポイントやキャパオーバーのポジティブ面についても紹介します。
目次
キャパオーバーとは、人や物の処理能力の許容量・許容範囲(キャパシティ)の限界を超えた状態を言います。仕事でキャパオーバーになっている状態は、業務過多でこなせていない状態・残業が続いている状態などがあります。
このような状態が続くと、疲れやすい・眠れない・ミスが増える・気持ちに余裕がない・仕事への意欲が低下するなど、体調面やメンタル面で不調をきたしてしまうことがあるので注意が必要です。一方で、キャパオーバーを乗り越えた経験が成長につながることもあります。
キャパオーバーを起こしてしまう要因には、状況だけでなく本人の性格も関係しており、多岐にわたりますが、ここではキャパオーバーになる三つの主な原因について説明します。
これは自分の仕事の処理能力に比べて単純に仕事の業務量が多く、業務量過多になっている状態です。このような状態は、主に以下の場合に発生します。
トラブルや急な顧客対応など、突発対応の業務が多い職場だと、計画通りに進まず業務量過多になりやすいと言えます。突発対応業務の場合、時間的な余裕がないためにミスを誘発してしまい、余分な作業を発生させてしまうこともあります。
業務量を把握し、常に業務量をコントロールしているつもりでも、業務量を過少に見積もってしまい、結果的に業務量過多になってしまう場合があります。
業務量の見込み違いは、例えば経験したことがない、もしくは経験が浅い仕事に挑戦した場合に起こりやすいと言えます。これは、業務の難しさの判断や留意点、ポイントを押さえた計画作成などが不十分になってしまうためです。
筆者が自動車会社の研究所に勤務していたとき、当時の研究所長から「研究者は計画を立てる際に、タスクを完了させるための所要時間を楽観的に見積もる傾向がある。そのため、研究開発の終了時期や設定したマイルストーンの時期が遅れがちになる」とよく言われました。所要時間を楽観値で見積もってしまい、キャパオーバーにつながることは研究開発以外でも同様に起こりやすいことでしょう。
人は一度に複数のことを同時並行でこなすことはできません。たくさんの業務を抱えている人でも、その瞬間瞬間では一つのことしか扱えないのです。そのため、悩みを抱えていると、仕事中もそのことばかりを考えてしまい業務に集中できず、仕事の効率が落ちてしまいます。
特にプライベートの悩みについては、他人に話しにくいケースが多いものです。また、悩みがなかなか解決できない場合は、気持ちの面でも悪影響がでてしまい、仕事に対する集中力が低下してしまいます。
キャパオーバーになりやすい人にはさまざまな特徴があります。自分がキャパオーバーになりやすいかどうかを知ることは、キャパオーバーと向き合っていくうえでも重要です。ここでは、キャパオーバーを感じている人に多い特徴を四つ紹介します。
仕事を任せるうえで、責任感の強い人は信頼でき頼りになります。しかし責任感の強い人は、うまくいかない理由を、他責ではなく自責で捉えてしまい、抱え込んでしまう傾向があります。
他責も自責も、過度になると上司や他部署の人間に責任を押し付けるような言動が見られたり、自分の能力不足や仕事のスキル不足を責めてしまい心身のバランスを崩したりするなど、自分や周囲の人に影響を及ぼしてしまいます。
特に責任感の強い人は、周りの協力をあおがずに「自分で何とかしよう」「任せるよりも自分でやった方が早い・質が高い」「やり方を教えるのが面倒」と考え、自分で仕事を抱え込んでしまうことがあります。仕事を割り振らないことで、自分の業務が増える一方になり、キャパオーバーにつながっていきます。
完璧主義の人は、自分の理想通りにするために、仕事の細部にもこだわって仕上げようとしてしまいがちです。芸術家や職人であれば、そのような仕事のスタイルは自分のスキルや評判を向上させるうえで有意義な場合もあることでしょう。しかし、要求品質以上の品質で仕事を完了させることは多くの場合過剰品質です。仕事や業務の時間が必要以上に多くなり、キャパオーバーにつながります。
人からの頼みごとを断れない人は、キャパオーバーに陥りやすいと言えます。このような人は「仕事ができないと思われたくない」「嫌われたくない」などと思っていることが多く、周囲からの評判を気にしすぎる傾向があります。また、自分に自信が無く、断る勇気が出ないことも原因の一つでしょう。時間がないときでも引き受けてしまい、業務を消化しきれなくなります。
スケジュールの立案やタスク管理が苦手な人も、キャパオーバーに陥りやすい傾向があります。このような特徴を持つ人は、そもそも自分の仕事量やスケジュールを把握しておらず、締め切りや納期に間に合わないことがしばしばあります。また、常にスケジュールに追われていて気持ちに余裕がないため、ミスを起こしやすく、仕事の手戻りが発生しがちです。その結果、時間が不足して余裕がさらになくなっていき、やがてキャパオーバーを起こしてしまいます。
キャパオーバーが起きている場合、まずは早期発見・状況把握、自分自身のケア、業務上の問題への対策という順番で取り組むことが大切です。ここでは、この順番でキャパオーバーへの対処法について確認していきましょう。
キャパオーバーになったときや、なりそうなときは、信頼できる人に早めに相談しましょう。キャパオーバーになって業務の質が低下すると、周囲に迷惑をかけてしまう可能性もあります。早めにアラートを出して、状況を共有化し、対処することが大切です。
アラートを出す際は、以下のようにするとよいでしょう。
キャパオーバーを起こしていると、疲れやすい・眠れない・仕事への意欲がわかないなど、体調面やメンタル面でも不調をきたしている場合があります。
このようなときには、心身の疲労やストレスを溜めずにリフレッシュするようにしましょう。例えば、休日に仕事を持ち込まない、有給休暇を活用して休息をとることも有効です。趣味を充実させたり、適宜休息をとったりなど、自分なりのケアの方法を見つけましょう。
また、生活習慣の乱れが原因で、キャパオーバーの状況を悪化させている場合があります。適切な睡眠時間を確保したり、栄養バランスの整った食事を採ったりするなど、生活習慣を整えて体調管理をすることで、キャパオーバーの改善につながります。
悩み事を抱えやすい人は、悩み事の原因や理由、ネガティブな結末などを頭のなかだけで考えて堂々巡りになっていることが多くあります。そのようなときは、悩んでいることを紙などに書き出してみる(可視化する)ことが有効です。可視化して客観的にみることで、考えが整理されて不安な気持ちを軽減できるだけでなく、新たな解決策を見つけられる可能性もあります。
頭のなかで考えていることをただ紙に書くだけでも効果的ですが、書いたことに対して原因を深掘りしていくとより思考を整理できます。例えば、書き出したことを、時系列に並べてみて、現在・過去・未来と整理してみましょう。過去のことは原因や誘因、現在のことは今の状況、未来のことは解決すべき課題と捉えることができます。
「原因や誘因を取り除けないか」「今の状況に対処するにはどうしたらよいか」「未来に起きるかもしれない不都合な事柄を避けるにはどうしたらよいか」という観点で整理すると、具体的な解決策を考え出せるでしょう。
キャパオーバーが起きているときには、抱えている業務の棚卸しをしましょう。そのうえで、特に進捗が思わしくないものについて、改めて課題ばらしやアクションプランの見直しが有効です。そして、業務の優先順位づけやスケジュールの見直し、業務の取捨選択をおこなって、キャパオーバーを解消します。
また、人手不足がキャパオーバーの原因になっている場合は、早急に人員を補う、業務の一部を外注化する、業務の効率化に取り組む、設備投資をおこなうなど、早急に対策を検討する必要があります。対策を検討するなかで、必要だと思い込んでいた業務が不要になっている可能性もあります。
キャパオーバーにならないためには、人材面(思考・能力)と仕事面(進捗管理・業務量管理・優先順位管理)の両面からアプローチする必要があります。
観点 | 対策 |
---|---|
思考 | 完璧主義を止める |
能力 | 業務処理能力を高める |
進捗管理 | スケジュールやタスクの進捗を管理する |
業務量管理 | 自分や社員の適切な仕事量を明確にし、周囲と共有する |
優先順位管理 | 仕事や業務の優先順を決める |
ここでは、これらの五つの観点から、対策方法について説明します。
「キャパオーバーになりやすい人の特徴」の章で述べましたが、完璧主義の人はキャパオーバーになりやすい傾向があります。性格はすぐには変えられませんが「100%の出来でなくてもよい」と意識するだけで、状況が改善する可能性があります。
完璧主義を止めるためには、仕事のアウトプットの姿を、関係者間で具体的にすり合わせておくことも効果的です。事前にすり合わせておくことで、過剰品質を避け、必要以上に時間をかけてしまうのを防げます。
キャパオーバーの原因が、業務を進めるうえで必要となる知識や技術などの基本能力の不足にある場合は、不足するものを身につけることで改善が見込めます。業務ごとに習得が必須な知識や技術を明確にして、優先度が高いものから教育訓練をおこなうことで、キャパオーバーになりにくくなります。
また、スケジュール管理やタスク管理の精度や仕事のスピード、得意・不得意な業務は人によって異なります。苦手だからといってやらないことは好ましくありません。苦手なことの克服に取り組む姿勢が大切です。
しかし、現実的には苦手を解消できないこともあるでしょう。ただ、できないことばかりが続くと、ストレスが溜まり、仕事への意欲が低下してしまう可能性もあります。どうしても克服できないときは周囲に不得意な業務の内容を共有して協力してもらうなどが有効です。
キャパオーバーになっていないかどうかを見極めるためには、自分が抱えているタスクを把握し、進捗状況を管理することも有効です。
例えば、タスクの進捗状況を周囲と共有したり、期日や納期をまとめたスケジュールを可視化したりすることです。タスクの進捗遅れや納期遅れが発生した場合、その状況が可視化されるため、素早く対策を講じられるようになります。
なお、昨今はタスク管理ツールも充実しています。タスク管理ツールを使えばやることをToDoリストとして整理できたり、チームメンバーとスケジュールを共有できたりするので便利です。適宜活用してみましょう。また、実施すべきタスクのうち「いくつ完了したのか」という完了率を定期的にモニタリングすることで、進捗速度の変化の可視化も可能です。
適切な仕事量を超えてしまわないように、自分や社員がこなせる仕事量を明らかにしておくことが必要です。
前節で述べた、スケジュールやタスクの進捗状況を可視化したうえで、断る勇気をもってはっきりと伝えれば、過剰な量の仕事を依頼されず、キャパオーバーの予防が期待できます。相手も、可視化されたスケジュールを見れば納得してくれるでしょう。
自分の仕事や業務の優先順位を決めることも予防に効果的です。優先順位の高い仕事や業務から順に処理することで、業務全体を円滑に進められるようになります。優先順位を決めるときは、緊急度と重要度のバランスを見て決めると効果的です。例えば、緊急度は高いが重要度は高くない業務(自身の業務と関連性の低い会議への参加など)は、優先順位を見直す候補と言えるでしょう。
また、優先順位だけでなく、キャパオーバーになったときに遅らせる、または中断する業務(劣後順位)も決めておけば、時間や気持ちに余裕をもって仕事をこなせるようになるでしょう。
経営者や部下を持つ上司は、社員がキャパオーバーにならないための対策を講じておくことが大切です。具体的な対策として、以下が挙げられます。
筋トレと同じく、メンタル面での不調につながらない程度であれば、キャパオーバーは能力アップに不可欠な手段とも言えます。キャパオーバーを乗り越えた経験が、スキルアップや人材としての成長にもつながります。
ストレッチした目標を設定し、それを克服していく経験を積むプロセスを、意図的に設定していくことで、効率的・効果的にスキルアップを図れます。キャパオーバーの予防策や対処法をうまく活用し、人材育成と業績向上を達成することを期待しています。
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