目次

  1. 人月計算とは
    1. 工数とは
    2. 人月単価とは
    3. 工数が使用される場面
  2. 工数(人月)を応用したプロジェクトの計算方法
    1. 必要な開発人数
    2. 必要な作業期間
    3. プロジェクト全体の金額(見積金額)
  3. 工数計算が重要な理由
    1. 見積もりの精度向上
    2. プロジェクト管理の適正化
    3. 業務の効率化
  4. 工数計算・管理を効果的に行う方法
    1. 過去の類似プロジェクトを参考にする
    2. バッファーを積む
    3. 管理ツールを活用する
    4. 工数の予測と実績を比較する
  5. 工数管理は効率化の鍵

 人月計算とは、プロジェクト体制の検討、作業を外注するための見積もりに使われる「工数」を算出することです。読み方は「にんげつけいさん」です。

 人月計算は、主にシステム開発におけるプロジェクトやタスクの規模を算出するために使われます。また、事務処理や特定業務の外注に必要な工数を算出する際にも用いられます。

 工数とは、プロジェクトやタスクを完了するために必要な期間と人数を意味します。プロジェクトやタスクの規模を表す際に、期間もしくは人数だけでは不十分です。1年間のプロジェクトと一口にいっても、100人が1年間稼働するのか、3人が1年間稼働するのかで全く規模が異なるためです。

 ですから、プロジェクトやタスクの規模を表す場合には、期間と人数を考慮した工数が必要になります。なお、工数は基準とする期間によって、人月(にんげつ)、人日(にんにち)、人時(にんじ)という単位に分けられます。

工数の単位
人月 1カ月に何名が稼働するのかを示す単位
人日 1日に何名が稼働するのかを示す単位
人時 1時間に何名が稼働するのかを示す単位

①人月とは

 人月は、1カ月間に何名が稼働するのかを示す単位です。通常、プロジェクトやタスクの期間が1カ月以上にわたる取り組みの工数は「人月」で表します。

 1人月とは、1人の人員が1カ月間費やす作業の規模を意味します。5人が3カ月間フルで稼働する場合には、15人月と表されるわけです。

 多くのケースでは、人月の1カ月は20日間、1日の稼働時間を8時間として計算します。つまり、1人月は160時間(1人 × 8時間 × 20日)分の作業があるということになります。

 ただし、1人月とは必ずしも1カ月で終わる業務を意味しているわけではなく、稼働する人員数が1人であることを意味しているわけでもない点に注意が必要です。例えば、下記は何れも1人月を意味します。

1人月の例
・1人の人員が1日8時間、1カ月間稼働
・1人の人員が1日4時間、2カ月間稼働
・2人の人員が1日4時間、1カ月間稼働

②人日とは

 人日は、1日に何名が稼働するのかを示す単位です。通常、プロジェクトやタスクの期間が1日以上、1カ月以内の取り組みの工数は、人日で表されます。

 1人日とは、1人の人員が1日間費やす作業の規模を意味します。例えば、5人が3日間フルで稼働する場合には、15人日と表されます。

 なお、人月同様、人日の1日とは8時間のことを意味する場合がほとんどです。つまり、1人日は8時間(1人×8時間)分の作業があるということになります。

 留意点は、人月と同様、1人日とは、1日で終わる業務を意味しているわけではなく、稼働する人員数が必ずしも1人ではない点です。例えば、下記は何れも1人日を意味します。

1人日の例
・1人の人員が1日8時間、1日間稼働
・1人の人員が1日4時間、2日間稼働
・2人の人員が1日4時間、1日間稼働

③人時とは

 人時は、1時間に何名が稼働するのかを示す単位です。タスクの期間が1日以内の取り組みなど、比較的小規模なプロジェクトに使われます。

 1人時とは、1人の人員が1時間費やす作業の規模を意味します。つまり、1人日とは8人時ということです。

 人月単価とは、1人月当たりの費用単価のことです。システム開発、事務作業、コンサルティングなどの外注サービスにおいて、クライアントに請求する費用を算出するために用いられます。例えば、「人月単価100万円」の場合、クライアントが1人当たりに支払う月の単価報酬は100万円というわけです。

 人月単価は会社ごとに独自に設定されており、マネージャー、リーダー、メンバーなどの役職ごとに単価が異なります。業種や業界によって平均的な相場がありますが、会社として平均的な単価とするのか、高く設定するのか、低く設定するのかは、サービスを提供する企業の戦略により異なります。

 付加価値の高いサービスを提供している場合には、業界の平均的な人月単価よりも高く設定するかもしれません。他方、他社よりも人月単価を低く設定して、多くの人員を参画させることで売上を高めようとする戦略もありえます。

 このように、人月単価は業界や業種、業界におけるポジションや戦略によって決められます。

 工数はさまざまな場面で使用されます。

工数が使用される場面
・システム開発などを外注する場合の費用を見積もる
・システム開発などのプロジェクトの工数に見合った体制を構築する
・システム開発などのプロジェクトの工数に見合ったスケジュールを策定する
・BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)として現行業務を可視化し、工数を洗い出したうえで業務を効率化する

 工数は、プロジェクトの開発人数や作業期間を算出する際にも活用できます。また、見積金額の比較や交渉の際にも、工数を把握することは重要です。

 システム開発などのプロジェクトにおいて、「開発に必要な工数の見積もりができていて、且つ期限が明確に決まっている」場合は、必要な開発人数が求められます。この計算は、期限通りにプロジェクトを完了するために必要な開発人数を見積もるときに役立ちます。

 下記のような例で考えてみましょう。

 ・開発に要する工数:30人月
 ・開発期間:3カ月

 この場合、必要な開発人数は下記式で算出できます。

 30人月 ÷ 3カ月 = 10人

 つまり、10人の開発者が3カ月間フルで開発をする必要があるとわかります。

 「開発に必要な工数の見積もりができて、開発に従事する人数も決まっている」場合は、作業期間がどれくらい必要かを見積もることが可能です。下記のような例で考えてみましょう。

 ・開発に要する工数:30人月
 ・開発人数:5人

 この場合、必要な作業期間は下記式で算出できます。

 30人月 ÷ 5人 = 6カ月

 つまり、5人の開発者がフルで開発に従事した場合、6カ月を要することがわかります。

 A社において、下記のように人月単価が定められていたとします。

【A社の人月単価】
 マネージャー:120万円/人月
 リーダー:100万円/人月
 メンバー:80万円/人月

 プロジェクトを遂行するために、マネージャーが0.5人月、リーダーが3人月、メンバーが10人月必要だった場合、プロジェクト全体の金額は下記のように算出されます。

役職 人月単価 必要な工数 金額
マネージャー 120万円/人月 0.5人月 60万円
リーダー 100万円/人月 3人月 300万円
メンバー 80万円/人月 10人月 800万円
合計 1,160万円

 このようにプロジェクトに必要な金額を算出することで、見積金額として提示できるようになります。

 ここまでは、工数の考え方や計算の方法について解説をしてきました。ここでは、工数計算が必要な理由について説明したいと思います。

 工数計算はシステム開発、事務処理、コンサルティングなどを外注する場合に、見積もりの精度を高めるために必要です。工数(人月)が不明な場合、見積金額の妥当性を評価することは難しいからです。

 工数が明らかになっていれば、人月単価を乗じることで、見積金額を算出できます。また、工数と人月単価の比較により、外注先の比較検討が可能になります。

 各社が提示している見積もりの工数において、無駄な工程がないか、過剰に工数を積んでいないか、削減できる工数がないかを確認することで、コスト削減の余地が生まれるケースもあります。また、各社の人月単価を比較することで、割高なのか、割安なのかを把握することも可能です。

 プロジェクトを進めるとき、プロジェクトのタスクごとにどの程度の工数を要するのかが明らかになっていれば、工程ごとに何名の人員が必要かを見積もることも可能になります。結果、適正な人的リソースの配置が可能になります。

 BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)においては、業務フローや業務一覧で現状業務を可視化します。その際、各タスクごとに工数を算出することで、将来のあるべき姿の業務において「どの程度工数が削減できるか」を具体的に把握できるようになります。

 また、業務効率化の効果が明らかになることで、施策の優先順位を立てやすくなる効果も期待できます。

 ここからは、工数計算や工数の管理を効果的に行うためのポイントについて触れておきたいと思います。

 工数を算出する際には、過去の類似のプロジェクトを参考にすると効果的です。プロジェクトの推進には、予想外の事態がつきものです。その結果、当初の想定を大きく逸脱する場合があります。類似のプロジェクトを参考にすることで、そういった想定外の事象も織り込んだ工数の算出が可能になります。

 もし類似のプロジェクトがない場合には、ボトムアップ的に工数を算出していくことになります。システム開発であれば、想定されるコードの行数から見積もりしたり、BPRであれば可視化した各タスクの作業時間と発生頻度から人日や人月を算出したりします。

 ボトムアップの方法を採用する場合でも、比較的似ているプロジェクトを参考にすれば工数算出の精度を高められるはずです。

 工数を見積もるときには、バッファー(余裕)を積むことが大切です。プロジェクトをギリギリで完了できるくらいの工数の場合、予定外のハプニングが発生すると工数が足りなくなる事態になりかねません。

 つまり、プロジェクトが予定通りに完了しなかったり、見積もり金額で提示している工数では納品物を完成できなかったりする可能性があるのです。不測の事態を想定して、工数にバッファーを持たせましょう。

 バッファーを持たせるには、類似のプロジェクトなどを参考にして、不足の事態が起こりそうな工程に多めに工数を積むことが必要です。

 工数の管理は「エクセル」や「スプレッドシート」を使用するケースが多いものですが、「管理ツール」も必要に応じて活用するとよいでしょう。

 工数の見積もりや見積金額の算出を行うだけであれば、エクセルやスプレッドシートで十分です。しかし、「プロジェクトの進捗管理」まで必要な場合には、管理ツールの活用を検討する余地があります。

 エクセルやスプレッドシートのメリットは、追加コストが不要である点と、フォーマットや運用を自由に設定できるところです。他方、大きなプロジェクトや業務で関与する人数が多くなってくると、入力や管理が非効率になる場合があります。

 このような場合に管理ツールを使用することで、入力の手間や管理の煩わしさを軽減できます。ただし、管理ツールはコストが発生するため、費用対効果をふまえて活用要否を検討しましょう。

 工数を算出した後は、予測した工数と実際にかかった工数の比較をしましょう。予測と実績の比較により予測の誤りを把握でき、次回以降の工数の見積もり精度を高められます。

 また、プロジェクトの途中で工数の予実を確認することで、プロジェクトの残りの期間で体制、スケジュール、外注している契約の見直しが必要かの判断ができる場合もあります。

 工数管理を適切に行うことで、外注費用の見積もりが正確になり、コスト削減につながります。

 また、システム開発では、工数計算を用いて必要な人員数や期間を具体的に割り出し、適切なリソース配置を行うことが可能です。さらに、プロジェクトの進捗状況を適切に把握したり、必要な見直しを迅速に実行できたりします。

 工数管理は、「効率化の鍵」です。適切な工数管理を行い、プロジェクトや業務の効率的な運営を目指しましょう。