目次

  1. 売り上げの9割を占める看板商品
  2. 穀粉メーカーでレシピ開発
  3. 「知りません」では通用しない
  4. ソフトクリーム発売の狙い
  5. 美観地区にカフェをオープン
  6. 廃棄される皮で染めたエコバッグ
  7. 地元企業とのコラボを加速
  8. いつかは「きびだんご超え」を

 大手饅頭伊部屋の本店は、岡山城下の風情を今も漂わせる地域にあります。2024年8月下旬に訪ねると、平日にもかかわらず、大手まんぢゅうを求める地元客が次々と訪れていました。

 初代伊部屋永吉がこの地で創業。備前藩主らに愛され、まんじゅうの名前も岡山城大手門に由来します。最初は白い厚皮のまんじゅうでしたが、大正時代、あんこの比率を高め、備前米から作られた甘酒と小麦粉を混合して発酵させた薄い生地で包む形となりました。

たっぷりのあんこを薄皮で包んでいるのが、大手まんぢゅうの特徴です(大手饅頭伊部屋提供)
たっぷりのあんこを薄皮で包んでいるのが、大手まんぢゅうの特徴です(大手饅頭伊部屋提供)

 直営3店のほか、駅や百貨店、空港などで岡山定番のお土産として定着。「薄皮饅頭」(福島県)、「志ほせ饅頭」(東京都)とともに「日本三大まんじゅう」と呼ばれています。

 「朝作ったものは昼過ぎに温かい状態で店頭に並びます。賞味期限は1週間ですが、なるべくできたてを味わっていただきたいので、販路や生産個数を手広くすることはできないんです」 

 1個86円(税込み)の大手まんぢゅうが、売り上げ全体の9割超を占め、生産量が1千万個以上になる年もあります。大岸さんは「大手饅頭伊部屋という社名の通り、うちは和菓子屋ではなく饅頭屋なんです。他の和菓子の製造ノウハウはあまりなく、工場も大手まんぢゅうに特化した設備になっています」

 まんじゅうにこだわり続けて187年。大岸さんも、その伝統とともに歩んできました。

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