福祉・介護職員等処遇改善とは 加算の一本化へ2025年度から完全移行
福祉・介護職員等処遇改善とは、処遇改善加算一本化とも呼ばれ、福祉・介護職員の処遇改善のための3つの加算を、4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化する制度です。厚生労働省は2025年度以降の新加算の完全施行までに計画的な準備を進めるよう事業主に呼び掛けています。
福祉・介護職員等処遇改善とは、処遇改善加算一本化とも呼ばれ、福祉・介護職員の処遇改善のための3つの加算を、4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化する制度です。厚生労働省は2025年度以降の新加算の完全施行までに計画的な準備を進めるよう事業主に呼び掛けています。
目次
日本の高齢化が進むなか、賃金の低さ、労働時間の長さなどを背景に介護人材の不足が問題となっています。これまでも介護職員の処遇改善に向けて、処遇改善加算など複数の加算がありましたが、要件も手続きも複雑で事業者にとって大きな負担となっていました。
こうした状況を改善するため、厚労省は2024年6月から、処遇改善に係る加算の一本化を実施しました。ポイントは以下の3つです。
そのうえで、2024年度障害福祉サービス等報酬改定で新加算の加算率を引き上げるとともに、障害福祉の現場で働く人のベースアップへとつながるよう、配分方法の工夫をしています。
これまでは、以下の3の加算措置がありました。
新しい福祉・介護職員等処遇改善加算は、これまでの3つの加算措置の要件を再編・統合し、加算率を引き上げました。新加算は、4つの段階(Ⅰ~Ⅳ)と、2025年3月までの経過措置の区分(Ⅴ)が設けられています。2025年4月からは経過措置区分(Ⅴ)が廃止され、すべての事業者は新加算Ⅰ~Ⅳのいずれかの区分を選択することになります。
福祉・介護職員等処遇改善加算は4つの段階があり、要件と加算率は以下の通りです。
介護職員等処遇改善加算 | 加算率 | 要件 |
---|---|---|
Ⅰ | 24.5% | 新加算(Ⅱ)に加え、以下の要件を満たすこと。 ・経験技能のある介護職員を事業所内で一定割合以上 配置していること(訪問介護の場合、介護福祉士30%以上) |
Ⅱ | 22.4% | 新加算(Ⅲ)に加え、以下の要件を満たすこと。 ・改善後の賃金年額440万円以上が1人以上 ・職場環境の更なる改善、見える化 |
Ⅲ | 18.2% | 新加算(Ⅳ)に加え、以下の要件を満たすこと。 ・資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備 |
Ⅳ | 14.5% | ・新加算(Ⅳ)の1/2以上を月額賃金で配分 ・職場環境の改善(職場環境等要件) ・賃金体系等の整備及び研修の実施等 |
新加算には、以下の3種類の要件を満たすことが必要です。
それぞれ、新加算のどの段階を目指すかで必要な要件が変ります。
キャリアパス要件はⅠ~Ⅴまであります。このうち、Ⅰ~Ⅲは根拠規程を書面で整備の上、すべての介護職員に周知が必要です。
キャリアパス要件Ⅰは、任用要件・賃金体系に関する内容です。介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する必要があります。2024年度中は年度内の対応の誓約で認められます。キャリアパス要件Ⅰは、新加算のⅠ~Ⅳいずれの段階でも必要です。
キャリアパス要件Ⅱは、研修の実施に関する内容です。介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、この計画に係る研修の実施または研修の機会を確保する必要があります。
2024年度中は年度内の対応の誓約で認められます。キャリアパス要件Ⅱは、新加算のⅠ~Ⅳの段階で必要です。
キャリアパス要件Ⅲは、昇給の仕組みです。介護職員について以下のいずれかの仕組み
を整備する必要があります。2024年度中は年度内の対応の誓約で認められます。
キャリアパス要件Ⅲは新加算のⅠ~Ⅲの段階で必要です。
キャリアパス要件Ⅳは、改善後の賃金額です。経験・技能のある介護職員のうち1人以上
は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であることが求められますが、小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除されます。2024年度中は月額8万円の改善でも認められます。
キャリアパス要件Ⅳは新加算のⅠ、Ⅱの段階で必要です。
キャリアパス要件Ⅴは介護福祉士等の配置です。サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していることが求められます。キャリアパス要件Ⅴは新加算のⅠの段階で必要です。
月額賃金改善要件はⅠとⅡがあります。
月額賃金改善要件Ⅰは、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を基本給または毎月支払われる手当の改善に充てる必要があり、2025年度から適用されます。
現在、加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合があります。月額賃金改善要件Ⅰは、新加算のⅠ~Ⅳの段階で必要です。
月額賃金改善要件Ⅱは、現行ベア加算未算定の場合のみ適用されます。旧ベースアップ等加算未算定事業所は、新加算算定開始時に、旧ベースアップ等加算相当額の3/2以上の基本給等の引上げが必要となります。新加算Ⅰ~Ⅳへの移行に伴い、現行ベア加算相当が新たに増える場合、新たに増えた加算額の3分の2以上、基本給・毎月の手当の新たな引上げを行う必要があります。
月額賃金改善要件Ⅱは、新加算の区分Ⅰ~Ⅳで必要です。
職場環境等要件のうち、新加算でⅠかⅡの段階であると認定されるには、6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組み、情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する必要があります。ただし、2024年度中は区分ごと1以上、取組の具体的な内容の公表は不要です。
新加算でⅢかⅣの段階にあると認定されるには、6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む必要があります。2024年度中は全体で1以上で構いません。
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