目次

  1. 接遇研修とは
    1. そもそも接遇とは
    2. 接遇マナーの5つの原則
    3. 接遇と接客の違い
  2. 接遇研修で学べる内容
    1. 接遇への姿勢
    2. 接遇のイメージ作り
    3. 接遇マナーの実戦練習
  3. 接遇研修を実施するまでの手順
    1. 目的と対象者の決定
    2. 研修計画の作成
    3. 研修方法の選択
    4. 研修実施の周知
  4. 接遇研修の選び方
    1. 講師の実績はどうか
    2. 臨機応変に実施できる研修内容か
    3. 実践的な内容が含まれているか
    4. 自社に合う実施方法を選択できるか
  5. 接遇能力を上げて会社を活性化させましょう

 接遇研修とは、身だしなみ、姿勢や動作、言葉遣い、電話対応、お客様への訪問、来客対応時における所作を学ぶ研修です。新入社員だけでなく、中堅社員、場合によっては、管理職も、自分の接遇所作が自己流になっていないかを確認するという意味で、接遇研修を受けることが望ましいでしょう。

 接遇研修を受講するにあたっては、以下の姿勢が大切です。

 ①やらさせれているという感覚ではなく、自ら進んで学ぶという姿勢
 ②自分自身を客観的に見つめて、現状から努力して向上させるという姿勢
 ③学んだことを意欲的に使って成果につなげていこうとする姿勢

 これらの姿勢を意識することで、自らの接遇スキルは上がっていきます。

 接遇とは、相手に思いやりをもって接することです。そして、その思いやりが、本当に相手が望んでいることなのか、相手の感情を満足させているものなのか、考えることも大切です。その積み重ねで、上司・部下・お客様との人間関係が円滑になっていきます。

 例えば、訪問してきたお客様にどのように対応されますか。すぐに席を立って、相手の目を見て「こんにちは」などと声をかけていますか。接客している人以外の人も、作業の手を休めて挨拶していますか。自分の身だしなみ(髪型、服装、顔・爪、小物)は、その場にふさわしいものになっていますか。

 また、電話がかかってきたら、積極的に電話に出ていますか、会社名・部署名・名前を名乗っていますか、明るく笑顔で、そしてはきはきとした声で対応していますか。取り次ぎの仕方は適切ですか。

 こういった具体的な場面で、相手に満足感を与えることができれば、売上があがるかもしれません。商談がまとまるかもしれません。逆に、思いやりをもって接していないと、相手はどのように感じるでしょうか。相手に不快感を感じさせたら、二度と来客してくれないかもしれません。取引停止になるかもしれません。

 お客様との縁がきれたり取引停止になったりするよりも、売上が上がったり商談がまとまったりする方がよいと、誰もが思うはずです。ですから、接遇は大切です。

 まずは、接遇研修で基本的な「型」を学びます。「型」に慣れてきたら、「型」をベースにその場の状況や相手に応じた対応をするよう心がけ、よりレベルの高い接遇を目指していくとよいでしょう。

 接遇の基本5原則は、挨拶、見出しなみ、表情、言葉遣い、態度です。これらについて、次に説明します。

接遇マナーの5つの原則
挨拶 挨拶はコミュニケーションの第一歩です。積極的に挨拶をすることで、相手に良い印象を与えましょう。自分から先に、明るい声で元気に、笑顔で相手の目を見て、挨拶しましょう
身だしなみ 見た目の第一印象はとても大切です。第一印象は、視覚で55%、聴覚で38%が決まるといわれています。服装、髪型、顔・爪は、会社、職場の雰囲気にあった清潔感のあるものにしましょう
表情 表情もコミュニケーションの一つです。挨拶は笑顔でしていますか。お詫びをするときは、神妙な表情でしていますか。時、場所、場面に応じた表情をコントロールしましょう
言葉遣い 相手に伝わるように話すことを意識します。短く、簡潔に、専門用語は使わないようにして、相手の反応も見ながら話すのが基本です。敬語の使い分け、クッション言葉、敬称も、注意します。避けるべき表現も注意しましょう
態度 姿勢や歩き方、目線で「この人に任せれば大丈夫だ」という良い印象を与えることがあります。その一方で、悪い印象を与えることもあります。常に、態度が見られていることを意識しましょう

 接客は、相手に対して不快感を与えない程度の必要最低限のマナーのことをいいます。一方、接遇は、接客の内容に加えて、相手を思いやる対応をすることをいいます。接遇がうまくできるようになれば、より相手に好印象を与えられるようになります。

 接遇研修で学べる内容は、以下のとおりです。

接遇研修で学べる内容
・社会人として仕事をしていくために必要な挨拶・身だしなみ・表情・言葉遣い・態度といった基本的な知識を習得できます
・ケーススタディ、ロールプレイイングで体感し、録画・録音で客観視して、学んだ知識が実践で使えるようにします
・接遇を通して、自分に関わるすべての人に対する「思いやり」の心を育みます

 接遇研修は、すべて学ぼうとすると、まる3日くらいの時間が必要となります。その会社が今必要としている接遇項目を取り上げて、時間を有効活用して行うことが大切です。

 具体的に何をどのように学ぶのか、以下で詳しく解説します。

 受講者には、まず接遇研修の全体像を話し、研修の目的、意義を理解してもらいます。接遇とはどういうことなのか、考えてもらうのが目的です。そして、心構えとして「自ら進んで学ぶ姿」「自分自身の現状を知って改善していこうとする姿勢」「学んだことを実践していく姿勢」を理解してもらいます。積極的に学ぶ姿勢がなければ、時間の無駄となってしまうためです。

 各項目ごとに、3分から5分程度の動画を視聴します。動画では、登場人物が模範的な言動、所作をしますので、その様子を見て接遇イメージをつかんでいきます。動画視聴後、すぐにスライドを見ながらポイント解説を聞き、その項目の理解を深めていきます。

 次に、ポイントに注意しながら実際にやってみます。そして、隣の人とペアになってお互いに相手の人に見てもらい、意見を述べてもらいます。動画の視聴、ポイント解説、ワークを予定しているすべての項目で繰り返してやっていき、実践で使えるものとしていきます。

 接遇研修を実施するまでの手順は、以下のとおりです。

接遇研修を実施するまでの手順
1.目的と対象者の決定
2.研修計画の作成
3.研修方法の選択
4.研修実施の周知

 まずは、接遇研修の目的と対象者を決めていきます。

目的の例
・新規採用者に一通りの接遇を身に着けてほしいのか
・中途採用者に自社の社風を理解してもらいたいのか
・中堅社員・管理職に自分を再度見つめなおしてほしいのか

 また、事務職、営業職、販売職、現場職のどの職種の職員を対象としてするのか。あるいは、社内アンケートや、他社・お客様からの意見を受けて行うのか。それを整理、検討しながら、目的や対象者を決めていきましょう。

 本来の仕事の時間を使って研修をしますので、研修時間を決める必要があります。3時間(半日)の研修にするのか。まる1日なのか。2時間を3回実施するのか、など。職場の状況も考慮して研修時間を決めます。

 次に、多岐に渡る接遇項目のなかから、この研修では何を学んでもらうのか、目的・対象者をもとに内容(項目)を決めていきます。ここで最も大切なのは、会社で使える研修予算の範囲内で計画を立てることです。

 研修方法は、会社の都合で決めて問題ありません。特徴として、社内の人事・総務担当者が講師となる社内講師では、予算は安価で済みます。ただし、社内の講師ですので、研修スキルがどの程度あるのかという課題があります。

 一方、外部の専門家に依頼する外部講師では、研修スキルは一定レベル以上あることが見込めます。ただ、それなりの報酬を支払う必要があります。

 研修は必ずしも対面である必要はありません。オンライン研修(社内講師の場合も、外部講師の場合もあります)であれば、会社の支店・営業所が全国・海外展開している場合であっても、対象社員が一斉に研修を受講できます。

 ただ、オンライン研修は一般的に緊張感が薄れる傾向がありますので、緊張感を維持するための工夫が必要です。ペアワークがとてもしにくいので、研修効果がやや上がりにくいとも感じます。

 接遇研修のなかでも、新規採用者研修、職種別研修などは研修をする時期をあらかじめ決められるため、年度当初に会社内の周知ができるはずです。一方、中途採用者研修や、他社・お客様からの意見を受けて行う研修は、時間の誓約があります。すみやかに周知しましょう。

 交代制勤務を取っている職場では、急な研修の実施では、勤務計画に支障が生じてしまいます。臨時に行う研修であって、かつ、時間の制約がない場合であっても、少なくとも2カ月前には周知するのが好ましいでしょう。

 接遇研修を外部講師に依頼する場合、大切なのが研修・講師の選択です。ここでは、接遇研修を選ぶときのポイントを紹介します。

接遇研修の選び方
・講師の実績はどうか
・臨機応変に実施できる研修内容か
・実戦的な内容が含まれているか
・自社に合う実施方法を選択できるか

 講師の実績を確認しましょう。接遇研修での多くの実績があれば、その講師の研修スキルやコンテンツが磨かれていると考えられますので安心です。ただ、講師は「専門家」ですので、他の内容の研修であっても一定数の実績があれば、十分会社の期待に応えられると考えてよいでしょう。

 なお、接遇研修をするのには、特に資格は必要ありません。誰でも接遇研修はできます。

 会社のニーズに合わせて、臨機応変に実施できる研修がよいでしょう。接遇研修の項目ごとに、動画、スライドのページがあれば、対象職員別、職種別に求められる項目を選んで、目標にあった研修を組み立てることができます。

 新規採用者向けなのか、中途採用者向けなのか、管理職向けなのか、その会社での経験によって、項目は変えるべきです。また、事務職なのか、営業職なのか、工場勤務者なのか、接客業なのか、職種によっても学ぶべき項目は異なってきます。

 顧客対応を想定した実践演習を通して、言葉遣いや立ち居振る舞い、表情などを効果的に学べます。個人ワーク、ペアワークという実技、そして、その人の話し方や所作を録音・録画・確認して自らを客観視することで、実践能力を高めていける研修がよいでしょう。

 過去の顧客対応事例やよくあるトラブル事例などを題材に、効果的な解決策を検討していくケーススタディがあれば、より実践的な問題解決能力と柔軟な対応力を養えます。

 接遇研修の実施方法には、対面研修のほかにオンライン研修があります。上述の「研修方法の選択」でも紹介しましたが、オンライン研修は対象社員が一斉に研修を受講できる反面、ペアワークがしづらい懸念があります。会社のニーズにあわせて選択しましょう。研修期間、研修時間も、同様です。

 いずれの実施方法でも、ポイントとなるのは研修講師と会社との十分な打ち合わせです。会社の思いと講師の考えに齟齬が生じないよう準備して、研修を実施しましょう。

 接遇は、相手に対する思いやりを所作や言葉に表したものです。接遇がしっかりできていると、お客様から一目置かれるようになり、ビジネスにプラスとなります。

 接遇研修は、形式的なもので「新入社員がするもの」というイメージがありますが、そうではありません。新入社員や中途社員が入社したとこに、会社の良し悪しが評価されるのは、既存社員の接遇ができているかどうかです。

 先輩社員や上司の接遇がきちんとできていれば、新入社員や中途社員は先輩や上司を尊敬します。ですから、中堅社員や管理職も接遇研修を受ける意味があるのです。

 そして、すべての社員の接遇能力が上がっていけば、コミュニケーションが良くなっていき、会社が活性化していくでしょう。接遇研修には、積極的に取り組んでいきたいものです。