65歳までの雇用確保義務、2025年3月末に経過措置を終了へ
![2025年4月からの65歳以上の雇用確保義務化](http://p.potaufeu.asahi.com/3ea7-p/picture/29005364/4db350c9e6c80933c8a7c90e41daced6.png)
厚生労働省によると、65歳までの雇用確保義務について、継続雇用制度の対象者を限定できていた経過措置は2025年3月末に終了します。2025年4月からは新たに、希望者全員の65歳までの継続雇用制度を導入するなどの雇用確保措置をとる必要があります。事業者は、具体的にどのような対応をすればよいかを整理しました。
厚生労働省によると、65歳までの雇用確保義務について、継続雇用制度の対象者を限定できていた経過措置は2025年3月末に終了します。2025年4月からは新たに、希望者全員の65歳までの継続雇用制度を導入するなどの雇用確保措置をとる必要があります。事業者は、具体的にどのような対応をすればよいかを整理しました。
目次
厚労省の公式サイトによると、高年齢者が意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を目的として、高年齢者雇用安定法の一部が改正され、2013年4月1日から施行されています。
厚労省の2024年「高年齢者雇用状況等報告」によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%と前年から変動はなく、企業規模別でみると、中小企業では99.9%(変動なし)、大企業では100.0%(0.1ポイント増加)となっています。
2012年度までに、労使協定により高年齢の従業員を本人の希望に応じて定年後も引き続き雇用する「継続雇用制度」の対象者を限定する基準を定めていた事業主は、経過措置として、対象者を以下のようにすることが認められていました。
2013年4月1日~2016年3月31日…61歳以上
2016年4月1日~2019年3月31日…62歳以上
2019年4月1日~2022年3月31日…63歳以上
2022年4月1日~2025年3月31日…64歳以上
しかし、この経過措置は2025年3月31日で終了します。
2025年4月1日以降は、高年齢者雇用確保措置として、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
ただし、あくまで「65歳までの雇用確保の義務」であり、2025年4月1日以降、65歳までの定年の引き上げが義務になるわけではないことに注意が必要です。
経過措置終了後に希望者全員を65歳まで継続雇用する旨が就業規則に定められていない場合は、就業規則の変更が必要です。必要に応じて、都道府県労働局やハローワークに相談してみてください。
厚労省の公式サイトに掲載されたQ&Aによると、希望者全員を65歳まで継続雇用する場合は以下のような就業規則が考えられます。
第○条 従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、65歳まで継続雇用する。
逆に、就業規則のなかに定年時に継続雇用しない特別な事由を設けている場合は、高年齢者雇用安定法違反となります。ただし、就業規則の解雇事由又は退職事由と同じ内容を、継続雇用しない事由として、別に規定することは可能だと説明しています。例として次のような条文を紹介しています。
(解雇)
第○条 従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
(1) 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないとき。
(2) 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
(3) ……
(定年後の再雇用)
第△条 定年後も引き続き雇用されることを希望する従業員については、65歳まで継続雇用する。ただし、以下の事由に該当する者についてはこの限りではない。
(1) 勤務状況が著しく不良で…(以降は解雇事由と同一にする)
厚労省の通達「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」によると、「高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じる」と書かれています。
65歳までの雇用確保の義務化にあわせて、関連する法制度や制度変更についても紹介します。
高年齢雇用継続給付は、60歳のときよりも賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳末満の一定の一般被保険者に支給される給付です。2003年以降の給付率は賃金の15%でしたが、2025年4月からは10%に縮小されます。
「70歳就業法」「70歳就業確保法」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法では、65歳から70歳までの就業機会を確保するための努力義務が新設されました。
厚労省の2024年「高年齢者雇用状況等報告」によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%(2.2ポイント増加)となっています。
65歳以上の雇用確保に努める事業者向けには、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業者向けには65歳超雇用推進助成金があります。
2024年度は以下の3コースが設けられています。詳しくは厚労省の公式サイトへ。
65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成するコース
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して助成するコース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業に対して助成するコース
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