観光産業再生促進事業、2025年4月16日から宿泊事業者の公募を開始
杉本崇
(最終更新:)
観光産業再生促進事業(観光庁の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo06_00027.html)
コロナ禍で増加した債務の返済に行き詰まり倒産・廃業を検討する宿泊業が増えるおそれがあるなか、観光庁は「令和6年度補正予算 宿泊業における事業再生調査事業」の公募を令和7年(2025年)4月16日(水)から5月16日(金)まで実施すると発表しました。単なる財政支援ではなく、債務を抱えつつも事業再生能力があると見込まれる宿泊事業者に対し、他の公的支援制度と連携しながら、事業再生に関するアクションプランの策定を支援するものです。さらに、この調査を通じて得られたノウハウを集約し、宿泊業の事業再生等に関するガイドラインの策定を目指すことを目指しています。
ホテル・旅館業の倒産状況
東京商工リサーチによると、2023年のホテル・旅館業の倒産は79件でした。新型コロナの影響を受けた2020年は118件で、その後は毎年70~90件で推移しています。
観光庁は「観光産業の中核である宿泊業は、これまで地域における観光需要の受け皿としての役割を果たしてきたが、コロナ禍で増加した債務の返済に行き詰まることで、本来その宿泊施設が有する魅力を十分に発揮することができず、今後、倒産・廃業に至る宿泊事業者が増加するおそれがある」と分析しています。
観光産業再生促進事業とは
こうしたなか、観光庁はコロナ禍による影響で債務超過に苦しむ宿泊業向けに、2025年度から「観光産業再生促進事業」を実施します。
観光産業再生促進事業とは、過大な債務を抱えながらも再生能力があると見込まれる宿泊事業者に対して、事業再生アドバイザーを派遣し、伴走支援・調査を行う事業です。
この調査事業の内容・結果を踏まえ、宿泊業に特化した事業再生等に関するガイドラインの策定を目指します。
補助金や交付金ではなく、あくまで観光庁の調査事業です。調査にかかる経費は国費で負担します。採択された宿泊施設は、観光庁が指定する事業再生アドバイザーによる事業再生指導等を取り入れながら事業を進めることになります。
伴走支援は、調査事業期間後も、宿泊事業者が自ら事業再生を実現させることを目指し、事業再生アドバイザーの支援を受けながら継続的に事業再生を進めることが前提です。その後の事業再生の進捗状況について、観光庁が行うフォローアップ調査などに協力する必要もあります。
公募の詳細:応募資格と要件
調査事業への参加を希望する宿泊事業者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
申請者
申請対象となるのは、中小企業の分類される宿泊事業者ですが、同一法人で複数運営している事業者は除くことに注意が必要です。また、運営関係者に、暴力団又は暴力団員の統制の下にある関係者が含まれていないという要件もあります。
また中小企業活性化協議会の「収益力改善支援」や「プレ再生支援・再生支援」などの、支援の対象に該当する事業者である必要もあります。
調査事業に付随する業務
採択された宿泊事業者は、以下の業務に取り組む必要があります。
- 対象債権者全員の同意を得た計画書を提出すること
- 中小企業活性化協議会等の公的支援を活用すること
調査期間
調査期間は、2025年6月12日(木)~2026年3月6日(金)を予定しています。
採択方法と選定基準
審査は、一次審査(書類審査)と二次審査(プレゼンテーション審査)の二段階があります。
一次審査では、提出された書類資料に基づき、「選定基準」に従って審査をします。
二次審査では、一次審査を通過した申請について、審査会が設置され、事務局による経営状況の確認や本調査事業の協力に対する取組意欲等について、定性面も含めたプレゼンテーション審査(オンライン開催を含む)が行われます。二次審査は2025年5月27日(火)~29日(木)のどこかで開催される予定です。
二次審査は、提出された申請様式を用いて事務局との質疑応答があります。
採択結果は、6月上旬ごろに通知される予定です。
応募先・公募要領
申請は、観光庁 観光産業課の宿泊業における事業再生調査事業担当にメールで送る必要があります。申請前には、かならず観光庁の公式サイトにある公募要領を読んでください。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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