目次

  1. 完全無添加で人気だったのに休業
  2. 「なくなるなんてもったいない」
  3. M&A直前に破談
  4. 「かまぼこを作りながら死にたい…」
  5. 3年ぶりに製造を再開
  6. システム会社が承継に名乗り
  7. 「一番熱意が強いあなたが社長に」
  8. 若いチームと「職人の勘」で生産拡大

 吉開のかまぼこはもともと魚屋として創業し、やがてかまぼこづくりが本業となります。かまぼこはお節料理や結婚式の引き出物としても人気で、吉開喜代次さんが社長だった高度経済成長期は売上高1億円を記録した年もありました。

 人気の理由の一つが無添加へのこだわりでした。練り物を無添加でつくることは難しく、特に「リン酸塩」はかまぼこ特有の弾力を出し、保水性も向上させるための添加物で、使わないと仕上がりが安定しないというデメリットがあります。

 吉開さんは顧客からの「完全無添加で作ってほしい」という声に応え、約8年かけて完成。福岡市、そして東京など全国から買いに来る人もいるほどの人気でした。皇室への献上経験や、農林水産大臣賞や水産庁長官賞などの受賞歴もあります。

 経営は黒字でしたが、吉開さんの子どもは後を継がず別の道へ。他に後継者もおらず、繁忙期に働きづめで腰を痛めたことから、2018年に惜しまれつつ休業を決めました。

「古式かまぼこ」は高級魚エソのすり身だけを使っています(吉開のかまぼこ提供)
「古式かまぼこ」は高級魚エソのすり身だけを使っています(吉開のかまぼこ提供)

 その後も再開を望む手紙や電話が店に寄せられる中、2019年に思わぬ電話がかかってきました。「閉店になってしまった理由と今後の見通しについてお話を聞かせてください」。当時福岡大学4年生の林田茉優さんからでした。林田さんが振り返ります。

 「大学のゼミでベンチャー起業論を学ぶ中、後継者問題に注目し、吉開のかまぼこについて知りました。こんな素晴らしい技術を持っているのに後継者不足でなくなるなんてもったいない。何か私にできることはないかと電話しました」

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