目次

  1. 職人の当たり前を「言語化」
  2. 高級感のあるパッケージを制作
  3. 東京近辺からの注文が半数に
  4. 「祖父と孫の関係」で理解を深める
  5. 「健康社会に貢献する」新商品開発
  6. 高級飲食店に飛び込み営業も
  7. 事業承継をキャリアパスに

 大学でベンチャー企業論を学んだ林田さんは、高度な技術を持つ企業の後継者不足問題に興味を持ち、廃業寸前だった吉開のかまぼこを知ります。「後世に残したい」と引受先を探すかたわら、3代目の吉開喜代次さん(79)とともに、2021年秋、完全無添加の「古式かまぼこ」の復活に挑みました。

 その味を評価したシステム会社の「フロイデ」(福岡市)が経営権を取得し、林田さんの熱意を買って経営を託しました。2021年12月から林田さんが4代目社長、吉開さんが会長となる新体制がスタートしました(前編参照)。

 社長になった林田さんが優先的に着手したのは、かまぼこ作りの技術と知識の継承とリブランディングでした。リブランディングのきっかけとなったのが、新体制発足直後に知ったかまぼこ板の「秘密」でした。吉開のかまぼこで使用している板は、大分県日田市のメーカーのものです。この板は、特許も取得した独自の乾燥技術で、かまぼこの水分を吸収しながらもにおいやヤニ、アクが出にくい仕様になっています。

古式かまぼこに使う板は吸水性に優れ、においやアクなどが出にくい特注品です(吉開のかまぼこ提供)
古式かまぼこに使う板は吸水性に優れ、においやアクなどが出にくい特注品です(吉開のかまぼこ提供)

 そんな秘密を知った林田さんが「それ、すごいじゃないですか」と言ったところ、吉開さんは「そんなのかまぼこ屋なら常識だよ」と素っ気ない反応でした。林田さんが振り返ります。

 「職人である吉開さんが長年当たり前と思ってきた技術が、消費者目線では当たり前じゃないことも多いんです。そういったことを一つひとつ言語化するのは、まだ素人で消費者の感覚に近い私だからできますし、吉開のかまぼこの魅力と価値が市場でもっと評価されることにつながると考えました」

 リブランディングせざるを得ない事情もありました。吉開のかまぼこが2018年から休業している間に、古式かまぼこの原料となる高級魚エソの水揚げ高が海洋環境の変化などもあって減少し、すり身が3倍ほどに値上がりしていたのです。

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