ホンダと日産、経営統合の協議打ち切り 重複する取引先は9242社
杉本崇
(最終更新:)
2024年12月に開催した日産自動車・ホンダ・三菱自動車共同会見(写真はホンダの公式サイトから https://global.honda/jp/news/2024/c241223c.html)
ホンダと日産自動車は2024年12月23日、経営統合の協議に入ると発表しました。2025年6月までに最終合意し、2026年8月の持ち株会社設立を目指すと説明していましたが、2月13日、経営統合に向けた協議を打ち切ると発表しました。帝国データバンクは「、CN(カーボンニュートラル)燃料といった低燃費なエンジン技術の需要が高まるなど、新技術分野への期待もみられる。そうしたなかにあって、サプライヤー間における優勝劣敗が一層進むことも予想され、自動車メーカーとともにサプライヤー各社の動向が注目される」と分析しています。
ホンダ・日産・三菱自の経営統合スケジュール
日産自動車・ホンダ・三菱自動車共同会見(写真はホンダの公式サイトから https://global.honda/jp/news/2024/c241223c.html)
ホンダ・日産・三菱自動車のプレスリリースや3社の共同記者会見によると、経営統合に向けて今後想定されるスケジュールを公表していました。
2024年12月23日…経営統合に向けた検討に関する基本合意書締結
2025年1月末…三菱自動車が参画の可能性を2025年1月末めどに判断
2025年6月予定…最終契約書(株式移転計画含む)締結
2026年8月予定…共同持株会社が東証プライム市場上場
しかし、2月13日にホンダと日産の経営統合に向けた協議が破談。ホンダの三部敏宏社長は、オンライン会見で、日産を子会社化する形での株式交換による統合を提案していたことを明らかにしたうえで、その理由について「厳しい判断が迫られる局面に対峙したとき、ホンダと日産双方の代表者で構成されるボードでは議論に時間を要し、判断のスピーディーが鈍る可能性が否定できない」としてワンガバナンス体制を考えていたといいます。
一方の日産の内田誠社長も会見のなかで子会社化の提案について「我々の力を最大化することは難しいのではないかという気持ちが強くあった」と話しました。
ホンダ・日産両社のサプライチェーン、9242社が共通
ホンダと日産の経営統合では、自動車産業サプライチェーンにも大きな影響があると考えられました。
帝国データバンクは、ホンダ・日産・三菱自動車も含む国内自動車メーカー10社に対して部品などのモノやサービスを提供する周辺産業を「自動車産業(サプライチェーン企業)」と定義し、分析しました。
分析結果によると、国内自動車メーカー10社のサプライチェーン企業数は、2024年11月時点で国内に推計6万8485社でした。
|
企業総数 |
Tier1 |
Tier2 |
Tier3~ |
トヨタ |
40680 |
2306 |
22334 |
16040 |
ホンダ |
22465 |
2305 |
14045 |
6115 |
日産 |
19084 |
1817 |
12204 |
5063 |
マツダ |
12328 |
958 |
7378 |
3992 |
スズキ |
9922 |
965 |
6722 |
2235 |
スバル |
9733 |
1350 |
6190 |
2193 |
三菱自 |
9244 |
1190 |
6379 |
1675 |
ダイハツ |
9108 |
973 |
6068 |
2067 |
いすゞ |
8356 |
849 |
5390 |
2117 |
日野 |
6287 |
806 |
4253 |
1228 |
このうち売上高が判明した企業を規模別にみると「1億円以上10億円未満」が3万6108社(54.1%)と最も多く、「1億円未満」が1万4952社(22.4%)と続き、「10億円未満」の企業で76.5%を占め、中小企業が自動車産業を支えていることがわかります。
ホンダのサプライチェーンに登場する企業は2万2465社、日産のサプライチェーンに登場する企業は1万9084社あり、ホンダと日産両社で共通する9242社、三菱自動車を含めた3社で共通する企業は3472社ありました。
サプライチェーン企業業種別企業数(帝国データバンクのプレスリリースから https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000991.000043465.html)
9242社のうち売上高が判明した企業を規模別にみると、「1億円以上10億円未満」が4507社(50.1%)と最も多く、「1億円未満」が1752社(19.5%)と続きました。
売上高 |
企業数 |
1億円未満 |
1752 |
1億円以上10億円未満 |
4507 |
10億円以上100億円未満 |
2176 |
100億円以上500億円未満 |
414 |
500億円以上1000億円未満 |
81 |
1000億円以上 |
68 |
ホンダと日産両社で共通する9242社の業種をみると、「自動車部分品・付属品製造業」が550社と最も多く、「金型・同部分品・付属品製造業」が480社、配送を担う「一般貨物自動車運送業」が381社、「工業用プラスチック製品製造業」が379社、「金属プレス製品製造業」が373社と続いていました。
自動車産業のサプライチェーン全体の傾向と比べて、ホンダと日産で重複する企業は製造業が多く、汎用性、技術力、規模、信頼性を有している自動車製造を支える需要な役割を果たしていることがわかります。
経営統合が破談を前にした帝国データバンクにヒヤリングに対し、神奈川県内の企業からは以下のような声が出ていたといいます。
- 今後の生産計画を含め困惑しているが、日産は往年のファンが多いことも特徴の1つ。ファンの心を掴むクルマ作りに期待している(自動車部品製造)
- 自動車業界全体にどのように波及するのか不透明(機械製造)
- ホンダとの統合は“オールジャパン”として期待していた。今の状況は楽ではないだろうが、悲観はしていない(自動車部品加工)
- 今後、国内・北米向け新型車の販売が上向くことに期待したい(金属加工)
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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