貿易政策を国家安全保障の重要な要素として扱い、主要な安全保障ニーズを満たすために他国への依存を減らすと表明。連邦政府の各部署に調査と、以下のような対処を取るよう指示しています。
大統領覚書は、関税について具体的な導入時期は明記していません。ただし、米国の貿易赤字の解消だけでなく、カナダ、メキシコ、中国などからの不法な移民および合成麻薬「フェンタニル」の流入への対処を迫る目的があるため、2月1日に執行する可能性があるとトランプ大統領は発言していました。
現状は、メキシコで原産地規則を満たす生産や加工をすれば、生産企業の国籍にかかわらず、無税で米国へ輸出できるのですが、トランプ大統領は就任前から中国企業がメキシコを経由して無税で輸出するのを防ぐ意向を明らかにしています。
大統領覚書は、関係省庁からの報告期限の多くを4月1日までと設定しているため、世界各国からの輸入品に一律10~20%の関税を課す「ユニバーサル・ベースライン関税」は、関係省庁からの報告を受けてから分析に取り掛かるとみられますが、後述のように米国のインフレをより加速させかねず、国民や議会の理解を得られるかは不透明です。
トランプ大統領のそのほかの大統領令について、地経学研究所のブログが詳しいです。
トランプ大統領、2月4日から中国に関税 カナダ・メキシコは猶予
トランプ大統領は2月1日「IMPOSING DUTIES TO ADDRESS THE FLOW OF ILLICIT DRUGS ACROSS OUR NORTHERN BORDER」と題し、メキシコとカナダ、中国からの輸入品に新たに関税を課す大統領令を出しました。それによると、関税措置は米国東部標準時4日午前0時1分(日本時間同日午後2時1分)以降の輸入分からとなります。
ただし、メキシコについては、トランプ大統領は関税措置の開始を1ヵ月間停止することで合意したとSNSで明らかにしました。不法な移民および合成麻薬「フェンタニル」の流入への対処で一定の進展がみられたためだといいます。
カナダのトルドー首相も、トランプ大統領との電話会談の後、SNSで関税措置が30日間停止されたと投稿しました。
JETRO、企業向けの相談窓口を設置
JETROは「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を設置し、北米地域等を専門とする専門家を配置し、広く日本企業からの個別相談対応にあたることを発表しました。
また、米国、カナダ、メキシコおよび中国の各事務所や、全国49ヵ所(大阪本部含む)の国内事務所にも相談窓口を設置し、本部と連携して相談対応にあたるといいます。
オンラインでの申し込みは、JETROの公式サイトへ。
トランプ2.0、関税がもたらす日本への影響分析を紹介
トランプの関税政策は、日本にどのような影響を与えるのでしょうか?日本のシンクタンクや研究所などが相次いで分析レポートを発表しています。
JETROアジア経済研究所はプラスと分析
JETROのアジア経済研究所の公式サイトには、「トランプ政権の中国・カナダ・メキシコに対する関税政策の影響」と題したレポートが公開されています。
それによると、カナダ・メキシコへの25%の追加関税に加え、中国にも10%の追加関税を賦課した場合、中国のGDPは0.3%の減少にとどまる一方で、米国のGDP減少幅は1.1%となると推計。米国の物価も0.9%上昇すると分析しています。
カナダ・メキシコ・中国からの貿易転換効果で、日本は0.2%、ASEAN10は0.3%上昇し、世界全体でみると、GDP減少幅は0.3%となるといいます。
三菱総合研究所(MRI)「リスクも事業機会も」
三菱総研の公式サイトによると、トランプ氏が2024年11月末に表明した「対中10%追加関税+対メキシコ・カナダ25%関税」は、米国のGDPを0.6%ポイントほど下押しすると分析。
日本にとっては、0.3%ポイントほどの上昇効果がみられる一方、「ユニバーサル・ベースライン関税」が導入されると、逆に0.3%ポイント下押しすることになりそうだと推計しています。
トランプ関税は、日本企業にとってリスクだけでなく、事業機会をもたらす可能性もあるといいます。米国の製造業はコンピュータや半導体、医療機器などを中心に他国への依存度が高い特徴があるため、米国市場に「域内調達・生産・販売」を前提に参入することで、新たな事業機会を得られる可能性があると指摘しています。
ニッセイ基礎研究所、関税政策は「2月1日が試金石」
ニッセイ基礎研究所の公式サイトに公表されているレポートは、財務長官、商務長官、米通商代表部代表、大統領経済諮問委員会(CEA)委員長、国家経済会議(NEC)に指名された閣僚や候補者はトランプ大統領が実現を目指す関税政策を支持するスタンスを明確にしていることを紹介しています。
関税政策に関してトランプ氏と経済閣僚の間で具体的な進め方について見解の相違はあるものの、終的にはトランプ氏の決定に従うことになるとみられるが、2月1日の関税実施がその試金石になるだろうとみています。
大和総研「現地生産が回避策になりうる」
大和総研の公式サイトでは、トランプ政権1期目の分析や、今後の「ユニバーサル・ベースライン関税」をもとに考えると、関税引き上げの影響を強く受ける企業が関税回避策をとる傾向は変わらないだろうとみています。
トランプ大統領にとって関税は交渉材料
トランプ大統領の関税政策は、相手国との交渉でより自国に有利な条件を引き出すための交渉材料でしかないことに注意が必要です。カナダとメキシコ、中国への関税についても、一過性のものとなるかもしれませんし、とくに中国に対してはより高い関税を課そうとする可能性もあります。
今後、日本との交渉にも影響を及ぼすかもしれません。記事「第2次トランプ政権が発足 日本企業が想定しておきたい3つの地政学リスク」で、著者の和田大樹さんは、防衛費の引き上げや、貿易赤字国という視点で日本を標的に関税を武器として活用してくる可能性もあると指摘しています。
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