目次

  1. サイバーセキュリティとは
  2. サイバーセキュリティ産業の現状と課題
  3. 国内企業の競争力の課題点
  4. 産業構造の問題点
  5. 産業振興へ 経産省が掲げる3つの柱
    1. 国産製品・サービスが活用されるための環境整備
    2. 優れた国産製品・サービス創出のための発掘・後押し
    3. 成長の原動力を生む基盤の強化
  6. 今後のロードマップ

 総務省の特設サイト「国民のためのサイバーセキュリティサイト」によると、サイバーセキュリティとは、私たちがインターネットやコンピューターを安心して使い続けられるように、大切な情報が外部に漏れたり、マルウェアに感染してデータが壊されたり、普段使っているサービスが急に使えなくなったりしないように、必要な対策をすることを指します。

サイバーセキュリティ市場全体の現状
サイバーセキュリティ市場全体の現状

 サイバーセキュリティ産業に目を向けると、国内市場は、セキュリティ製品の大部分が海外企業によって開発・提供されており、システムインテグレーター(SIer)が海外製品を輸入し、システム構築に合わせて販売・サービスを提供する形態が主流となっています。

 ユーザー企業は、SIerが提示する製品を基に製品・サービスを選んでいますが、選択基準は必ずしも自社のリスクを踏まえたものではなく、これまでの利用実績や価格が重視される傾向にあります。

 新興企業の製品は、ユーザー企業にとって活用意欲が乏しく、新規参入のハードルが高い状況が続いています。販路開拓でも、SIerの寄与が大きいものの、実績のない新規製品は企業からのニーズが乏しいため、SIerからの関心も低く、事業規模が小規模にとどまっています。

 セキュリティビジネスにおける主要企業の売上高を見ると、富士通、日立グループ、NEC、NTTグループなどが上位を占めています。

サプライサイドの現状
サプライサイドの現状

 しかし、市場規模・成長率ともに大きいWebセキュリティやゼロトラストなどの分野をみると、グローバル市場で、日本企業の製品はで外資系企業にシェアを奪われているのが現状です。

 また、他国製品と比較して圧倒的に優位な性能を持つとは言えない点や、日本企業の売上に占める研究開発費は、他国企業と比較して少ない傾向にも課題があります。

 国内のセキュリティビジネスは、「買い手がつかないので儲からない」「儲からないので事業開発や投資が十分なされず競争力が低下」という悪循環に陥っています。製品・サービス調達の際に実績が重視される商慣習が存在し、企業の新規参入のハードルが高いことが、この状況をさらに悪化させています。

 経済産業省は、サイバーセキュリティ産業を振興するために、以下の3つの柱を掲げています。

  1. 国産製品・サービスが活用されるための環境整備
  2. 優れた国産製品・サービス創出
  3. 産業全体を支える基盤の強化
今後の成長に向けた課題と今後の方針
今後の成長に向けた課題と今後の方針

 政府機関等が有望なセキュリティ製品・サービスの活用機会を提供することで、企業の市場参入のハードルを下げることを目指します。

 具体的には、サイバーセキュリティ分野の有力スタートアップを一覧化して公表し、政府機関等への情報展開を実施します。

 また、3月に始まる「IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度」や、現在経産省のタスクフォースで議論が進められている「サイバーインフラ事業者に求められる役割等に関するガイドライン」や「SSDF(セキュア・ソフトウェア開発フレームワーク)導入ガイダンス」も活用します。

 サイバーセキュリティに関連する技術・社会課題の解決に貢献する技術・事業を発掘するための事業化支援事業を実施します。

 有望な技術については、研究・製品開発を進める上で必要なデータの提供や、事業化を進める上での専門人材の派遣等、研究開発・事業化を進めるために必要な環境整備を行います。

 ニーズ省庁・機関からの声も踏まえつつ、成果物がニーズ省庁・機関において有益な活用がなされるよう、経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプロ)を通じて、サイバー空間の状況把握力や防御力の向上等に資する技術開発・社会実装を推進する。

 AI等の専門性とセキュリティの知見を兼ね備えた人材の育成プログラム(「セキュリティ・キャンプ・コネクト」)を開催したり、独創的なアイディア・技術を活用する人材を発掘・育成する「未踏事業」との連携を強化したりしています。

 サイバーセキュリティに関する国家資格である「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」について、得意分野・専門領域を可視化する「アクティブ・リスト」の整備や各種補助事業等への要件化・指針等への紐付けたり、資格維持コスト低減を目的とした「みなし受講制度」の導入したりすることも検討します。

今後のロードマップ
今後のロードマップ

 経産省は、今後のロードマップとして次のような目標を掲げました。

  1. 3年以内:「企業・人材数の増加」
  2. 5年以内:「我が国企業のマーケットシェアの拡大」「重要技術の社会実装」
  3. 10年以内:「安全保障の確保やデジタル赤字の解消への貢献を実現」

 KPIとして国内企業の売上高を足下から3倍増(約0.9兆円⇒約3兆円超)を目指します。