目次

  1. ニッチを攻め続けてきたニッケンかみそり
  2. 金属を打つ音とともに育つも「将来を決めないで」
  3. 「切る」技術生かせるブドウの病害予防
  4. 講習会の5分をもらうために産地めぐり

 ニッケンかみそりは、創業者の熊田文夫氏が1953年に日本研削を設立し、かみそり類の製造販売を開始したのがルーツです。

ニッケンかみそりの歴史を感じさせる商品や工場の扉など
ニッケンかみそりの歴史を感じさせる商品や工場の扉など

 売り上げ全体の89%はかみそりに頼っていますが、医療脱毛や電動シェーバーの普及とともに、国内のかみそり市場は年々縮小しています。

 そこで、「体に生えているあらゆる毛を書き出し、どこの部位ならかみそりが必要とされるのか」を追求し、ヘアカッター・すね毛カッターに加え、2018年からは鼻毛カッターと耳毛抜きを発売するなど、ニッチな分野を攻め続けることで売上を維持してきたといいます。

自社開発の鼻毛カッター(写真左)、すね毛カッター(写真右上)、プレスンシールカッター
自社開発の鼻毛カッター(写真左)、すね毛カッター(写真右上)、プレスンシールカッター

 創業者の孫で熊田征純さんの実家は工場から150m先にあり、「カンカンカン…」とプレス機が金属を打つ音を聞きながら育ちました。しかし、周りから「将来は社長」と言われるのが苦手で「勝手に将来を決めないで!」と心のなかで叫んでいたといいます。

 大学卒業後は大手工作機械メーカーに入社。シンガポールへ赴任した1週間後に父は他界。父と最後にした会話が「もう戻って来なくてもいい。一部上場企業で部長職を目指せ」という言葉だったので、家業には帰らない決意をしました。

 転機となったのは、フランス赴任中の休暇でイタリアの水の都ヴェネチアを訪れていたときのことです。ゴンドラに揺られながら眺める街は、歴史と文化が息づいていました。

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