データドリブン経営へ 意思決定に必要な判断材料をつくる手順と実践事例

データドリブン経営とは、経営判断や戦略づくりにデータを活用し、同時にリスクを最小化することで、組織全体のパフォーマンスを最大化する経営手法です。これには最新のデジタルツールを導入するだけでなく、組織、人材、そして文化を含めた総合的な変革が必要です。情報処理推進機構(IPA)の資料を活用しつつ「AIを導入しても成果が出ない」「意思決定に必要な判断材料がない」といった課題を解決するための手順と実践事例を紹介します。
データドリブン経営とは、経営判断や戦略づくりにデータを活用し、同時にリスクを最小化することで、組織全体のパフォーマンスを最大化する経営手法です。これには最新のデジタルツールを導入するだけでなく、組織、人材、そして文化を含めた総合的な変革が必要です。情報処理推進機構(IPA)の資料を活用しつつ「AIを導入しても成果が出ない」「意思決定に必要な判断材料がない」といった課題を解決するための手順と実践事例を紹介します。
目次
IPAの特設サイト「データスペースアカデミー」によると、データは、「ヒト、モノ、カネ」と並ぶ重要な経営資源であり、様々な部門で価値を生み出せるだけでなく、繰り返し利用可能な経営資源でもあります。
データドリブン経営とは、データをもとに企業の戦略や意思決定ができることを指しており、実践できると、以下のような具体的なメリットがあります。
現在の状況を素早く正確に理解し、将来の動きを予測することで、エビデンスに基づいた合理的な判断ができるようになります。
サービスや組織における新たなチャンスや課題を発見し、社内外のデータを組み合わせることで、新たなサービス創出や既存ビジネスの改善しやすくなります。
異常の兆候を早期に捉え、データ漏洩などのリスク顕在時には迅速な状況把握と対応が可能となり、事故リスクも抑えることにつながります。
競合他社がデータを活用し、AIが熟練の技さえ学習する時代において、データ活用は他社に先んじられる可能性があります。
複雑化・高速化するサプライチェーンで、データ連携がスムーズな企業は迅速に対応でき、取引先からの信用が高まる可能性があります。製品そのものだけでなく、データ連携の観点からも企業が評価されるようになるには、標準に基づいたデータ整備が重要です。
データドリブン経営の実現度合いを測り、改善を促すための指標が「データマチュリティ(成熟度)」です。データマチュリティとは、組織がデータを継続的に活用し、価値を最大化し、リスクを最小化する能力のレベルを示す考え方です。イギリス政府が「データマチュリティ・アセスメント・フレームワーク」を導入しているように、これは組織の継続的な成長を促す仕組みとして活用されています。
データドリブン経営に向けてのデータマチュリティには次のような項目があります。
評価項目ごとに自組織の客観的評価を確認し、次のステップに行くための策を考えつつ、リソースや組織の置かれた現状や経緯を踏まえ、各評価項目の目標を設定したり、他部門と比較し、優れた事例を参照して活用を検討することが大切です。
トヨタの一次サプライヤー「Tier1」である旭鉄工はIoTとデータを駆使して製造現場のカイゼンに努めています。生産工程でセンサーを設置してデータを収集し、経営者の木村哲也さんが主導してきました。IoTを活用したDXで電力消費を42%削減するなどして、収益を年10億円近く改善させています。
カイゼンに役立っているのが生成AIを活用した「AI製造部長」です。200本の製造ラインのIoTデータを自動巡回し、IoTデータを解釈し、「D(カイゼンアドバイス)」もできるようになりました。社員もSlackを通じて気軽にカイゼン相談できる環境が整っています。
2024年に創業100年を迎えた青木商店(福島県郡山市)は、フルーツショップ、フルーツジュース、フルーツタルト&カフェの3事業を柱に、「フルーツバー果汁工房果琳」などを全国に約200店舗を展開しています。
きっかけはコロナ禍でした。4代目社長の青木大輔さんは「それまでは売り上げ予測をベテランの勘に頼ることが多く、マネジャーが全国を飛び回って各店舗に直接アドバイスをしていたんです。しかし、人の往来ができなくなったことで、コミュニケーションが希薄になり、マネジメントにおける効率性の課題が浮かび上がってきました」と振り返っています。
そんなときに取り組んだのがDX。これまで勘や経験に頼ってきた部分をデータで可視化。売り上げを予想し、フードロスの削減やスタッフのシフト調整、発注や在庫管理など、ITを活用した攻めの販促を目指しています。
データドリブン経営を実現するために、IPAは段階的なステップを勧めています。
データドリブン経営は、個人の活用能力を高めることを前提としつつ、組織全体の力を最大化する取り組みであり、そのためには組織のリーダーの強いコミットメントが不可欠です。
データマチュリティの向上は、組織の基礎体力を向上させ、持続的な成長と競争力強化の道を切り拓く、現代ビジネスにおける最重要戦略と言えるでしょう。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。