目次

  1. 企業経営の後継者選びの3条件 同族企業にも役立つ
  2. 「何を決めたか?」とは 決断力
  3. 「何を始めたか?」は組織の新たな習慣の創出
  4. 「誰を育てたか?」とは後任育成
  5. いつかバトンを渡すその日のために
  1. 何を決めたか?
  2. 何を始めたか?
  3. 誰を育てたか?

 企業経営の後継者選びの3条件は、創業家一族からの参加が多い同族企業や、人材豊富な大企業には役立ちそうな基準ですね。

 では、次の後継者候補を3条件を満たす鉄板人材に育てるには、どんな経験を積ませたらよいでしょうか?今回はその点について考えてみましょう。

 まず一つ目「何を決めたか?」です。

 決断力のある人をどう育てるかです。それには、決断力の本質を知る必要があります。その本質は……直感です。

 決断は未来の選択です。様々な情報を集め、あれこれシミュレーションします。

 でも、どれだけシミュレーションしても、出てくるのは成功確率〇%という数字のみ。100%成功します、なんて保証はどこにもありません。

 他人に相談すれば「こっちの方がいいでしょう」とアドバイスしてくれるでしょう。ですが、だからといってその人が決断の責任を取ってくれるわけではありません。

 そのため最後に未来を選択するときは「大丈夫なのか」「やっぱ止めた方がいいのか」、社長が自分の直感を信じて決めるしかないのです。

 その直感力を磨く方法は、場数を踏むしかありません。何度も自分で重要な意思決定をしましょう。すると、上手くいくときはこんな感覚……、上手くいかないときはこんな感覚……、その手応えとか違和感が、なんとなくわかってきます。

 この感覚こそが、未来を選択するときに最も信じられる根拠となります。決断の経験を数多く積ませるには決断せざるを得ない場に身を置くことです。

 本社の社長以外で最もそのような機会が多いのは、子会社や関連会社のトップでしょう。トップであれば決断の回数は飛躍的増えます。

 本部で大勢を率いる部門のトップにいても、社長の下のポジションであれば、決めるのは社長。自分がリスクを背負って決断する機会は決して多くはないでしょう。

 ほんの数人でもいい。小さな組織を率いて社員とその家族の命運を背負う立場になり、ミッションを果たすために自分で悩み、決断する。

 そして、その結果として、うまくいったら仲間と一緒に笑い、失敗したら反省し、一人悔し涙を流す。その経験を重ねると、決断力は磨かれてきます。

 また外資のグローバル企業では、本社の役員になる前に必ずアジアや北米などエリアブロック長を経験するのが一般的です。役員に相応しい決断力を磨き、実力を内外に知らしめるためでしょう。

 このように、決断力ある人財を育てるには、小さな組織のトップを決断させるのが一番です。

 次に第2の条件「何を始めたか?」について考えてみましょう。

 新たに何かを始めるのですから、新規ビジネスの立ち上げや、新市場の開拓、新システムの導入、新工場等の立ち上げ、新たな大型パートナーとの提携、組織の新たな習慣の創出などの経験が必要です。

 しかも、新たな取り組みを、社長に「お前が担当してやれ」と言われてからやるのと、自分から社長に「これからは**の時代です。わが社も**に取り組むべきです」と進言するのでは全然違います。

 自ら進言したと事実が不退転の決意となり、最後まで諦めない、逃げない人材を育てるからです。

 よって、必要な教育は「これからは**の時代です。わが社も**に取り組むべきです」と気づく機会を提供することです。

 それには様々な分野の最先端に触れて、衝撃を受けることです。「海外視察」「国内視察」など解説付きで企業の取組みや展示会を見て回る機会や、経営者が集まる勉強会に参加します。

 そこではその会に参加している経営者と積極的に交流します。そして、自分と同じような立場の人が、「こんなこと考えて、もう歩みだしている」ことを知る。それが「ぜひうちも!」という衝撃になります。

 ベンチャー型事業承継代表理事で『アトツギベンチャー思考』の著者である山野千枝さんは、スタートアップ企業が集まりプレゼンテーションするイベントを観ることを、アトツギに勧めています。

 なぜなら、スタートアップの社長の社会課題解決への問題意識の高さとユニークな発想。そしてそれを周囲を巻き込みながら実現していく実行力。それらすべてが「衝撃的」だからです。

 「百聞は一見に如かず」といいます。本を読み、Youtubeを見るだけでは「衝撃」と呼べる感覚はなかなか得られません。是非、三現主義で先進事例に触れる機会を増やすと良いでしょう。

 三つ目の「誰を育てたか?」は、自分の後任育成です。それには後任にしたい人物を選び、ゴールを決めてやり方を任せ、権限委譲して見守ることです。

 仮にその人物が失敗しても、「責任はやり方を承認した私にある」とカバーしてセカンドチャンスを与えます。そして、成功体験が得られるようサポートします。

 自分がいないと回らない組織を創るのではなく自分がいなくても回る組織をつくる。それこそが会社を発展させていける人です。

 いかがでしょうか?

 あなたの会社の後継者候補は、3つの条件を満たしていますか?満たしていたら大丈夫。

 満たしていなかったら、どうするべきか考えましょう。そして、いつかバトンを渡すその日のための第一歩を踏み出しましょう。