目次

  1. 女性トイレの行列が問題となる背景
  2. 女性トイレ問題改善へ 政府が関係省庁連絡会議
    1. トイレ設置数や設置エリアの工夫
    2. トイレの柔軟な一時転用
    3. 混雑緩和のための案内・情報提供
  3. 長期的に見た女性トイレの改善策

 女性用トイレの行列問題は、多くの女性が日常的に直面する不便・不満・不安の一つです。

 内閣官房の公式サイトによると、国土交通省の調査によると、駅や交通施設、大規模商業施設等のトイレで、女性の40~50%が「行列」に不満を感じていると報告しています。

トイレの利用状況と不満についてのアンケート
トイレの利用状況と不満についてのアンケート

 この行列問題の背景には、男女間のトイレ利用実態の違いがあります。女性は男性に比べ、トイレでの滞在時間が長い傾向にあります。空気調和・衛⽣⼯学会が1983年に設定した基準では、女性トイレの利用時間を平均90秒に設定しています。

 しかし、中日本高速道路のデータによれば、2007年に88秒だった女性トイレの利用時間が2018年には117秒を33%増加していることが明らかになりました。

女性の社会進出とトイレ利用の長時間化
女性の社会進出とトイレ利用の長時間化

 さらに、女性進出に伴い、20代女性の鉄道による1日あたりの移動回数が、休日に18%増、平日に11%増となっており、トイレの利用機会そのものも増加している可能性があります。

 こうした背景があるなか、イベント時に、トイレの長い行列が問題となっています。男女間で待ち時間の大きな差が生じることもしばしばです。トイレの長い行列は、単なる不便に留まらず、参加者が行列を心配して水分補給を控えてしまい、熱中症の危険性を高める恐れがあるという、健康上のリスクにもつながりかねないといいます。

 そこで、女性用トイレにおける行列問題の改善に向けた関係省庁連絡会議を立ち上げ、男女間の待ち時間の差ができるだけ少なくなるよう、連携して取り組むことを決めました。

 国土交通省は関係機関に対し、男女ともに安心して快適にイベントを満喫できるよう、トイレの利用環境整備について以下の点への配慮を改めて要請しています。

 イベントで仮設トイレを設置する際には、男女で混雑の程度に差が生じないよう、バランスの取れた設置数や設置エリアの工夫を依頼しています。これは、女性の利用特性や利用頻度を考慮し、男性用トイレとの比率を見直すことや、分散配置によって特定の場所への集中を避けることなどが含まれるでしょう。

 既存の施設や環境を最大限に活用するための柔軟な対応も提案されています。例えば、イベント会場周辺の近隣施設の管理者等と調整した上で、その施設のトイレを一時的に活用することや、常設の男性用トイレを女性用へと一時的に転用するといった対応も含まれています。

 物理的な設置に加え、情報提供による混雑緩和も重要な要素です 。会場内に複数のトイレがある場合、参加者が効率的に空いているトイレにアクセスできるよう、他のトイレの利用状況について適切に案内することも求めています。

 イベント開催のお知らせチラシやウェブサイトなどで、トイレの位置、規模、そして混雑予測などの様々な情報を事前に参加者に周知することも要請しています。デジタルサイネージやスマートフォンアプリなどを活用したリアルタイムの情報提供も、今後の課題として考えられるでしょう。

 一つの参考になる基準として、たとえば、国際的なスフィア基準があります。避難所における便器の男女比について、女性の個室を男性の個室と概ね1:3の比率とするよう計画することが推奨されています。これらの基準は、女性の利用時間の長さや追加的な行為を考慮し、女性用便器の数を増やすことで行列を緩和しようとするものです。

 加えて、長期的な目線での改善策として、技術的なアプローチも進んでいます。トイレの空き状況をライトで表示したり、建物内全体の空室状況を一覧で提供したりするシステムが導入されており、これにより利用者は空いているトイレを効率的に見つけられることにつながります。