目次

  1. 働きやすさ支えるわかりやすさ 古川紙工の組織づくり
  2. 日の出製作所は脱「ブラック」 優秀な女性社員が昇進
  3. まるだい運輸倉庫社長が目指すロールモデル
  4. 「職人は見て覚える」をやめた原田左官工業所
  5. 女性従業員は3.4倍に増えると佐藤建設に変化
古川紙工8代目の古川慎人さんは美濃和紙をカジュアルにした商品開発と社員の採用・育成を重視し、年商を10倍にしました

 岐阜県美濃市の古川紙工は、伝統の美濃和紙を使った雑貨などを製造しています。妻の家業に婿養子として入った8代目社長は、手紙やメモに使える「そえぶみ箋」という自社ブランド製品を開発。

 さらに、積極採用や細やかな時短勤務の導入、挑戦を促す機運の醸成で、10人程度だった従業員数も70人に増え、その8割が女性となっています。

 古川紙工の成長を支えているのは、人材採用と育成です。採用は全国規模で行い、全額負担のインターンシップも実施。23年は6人、24年は10人を新規採用しました。社員教育ではセミナーへの参加や幹部登用研修などを行っています。採用、教育ともに年間予算を1千万円ずつかけています。

 管理職の6割が女性で、リモート勤務はもちろん、半休だけでなく、子どもの送迎や通院などを想定した0.25休、0.125休などの短時間休暇も充実させています。こうしたなか、組織マネジメントで重視しているのが、可視化とわかりやすさです。社内ではルールブックを作り、基本的なルールを共有しています。

岩さんは製造業で女性が働きやすい環境の整備を進めました

 日の出製作所(川崎市川崎区)は、金属の製造加工を手がける町工場です。3代目社長は、リーマン・ショックのころから女性の働く環境を整え、管理職への登用や女性専用の更衣室の設置、新入社員主導の新商品開発、業務効率化による残業削減などを進めました。

 かつて社員から「ブラック企業」と言われた町工場グループは今、半数近くを女性社員が占め、工場長も担います。

神奈川県小田原市にある創業65年の老舗物流会社「まるだい運輸倉庫」4代目社長・秋元美里さん(写真中央)。女性の積極採用に取り組んでおり、社員260人のうち66人が女性。同時に男性にも働きやすい職場づくりも目指しており、男性の育児休業の取得実績がある(写真はいずれもまるだい運輸倉庫提供)

 神奈川県小田原市にある創業65年の老舗物流会社「まるだい運輸倉庫」の経営戦略のひとつが女性の積極採用です。現在、社員260人のうち66人が女性です。

 結婚や出産を経ても女性が働き続けられるよう、子どもの学校行事などの際に、有給を取りやすい環境づくりに取り組んでいます。また、女性管理職の登用を進めることで、男性上司には言いにくいことも相談できる組織づくりに努めています。

 管理職になる意識のない女性が多いことに疑問を感じた4代目社長・秋元美里さんは社内でヒアリングやアンケート調査をしたことがあります。そこで見えてきたのは、自信がない、目指すところが分からないという悩みでした。

 「女性社長として後ろ姿を見せることで、女性の活躍を後押ししたい。社員に挑戦する機会を与えることで、個々の眠っている才能を開花させることが、会社の成長にもつながると考えています」

社内講習会の様子(原田左官工業所提供)

 人手不足や職人の高齢化が深刻な課題となっている建設業界で、東京都文京区の原田左官工業所はスポーツ界で採り入れられている「モデリング」と呼ばれる人材育成システムや女性職人の活用、働きやすい環境づくりに取り組んだ結果、若手の離職がほぼゼロになりました。

 30年前から女性を採用しており、育児休業制度を整備しました。女性専用の休憩室を設けたり、産後ゆるやかに復帰できるよう配慮したりと、働きやすい環境を整えています。

営業職だけでなく、現場の工務担当にも女性が増えた(佐藤建設提供)

 1952年創業の佐藤建設(岡山県勝央町)は、公共工事や住宅建築、カフェ事業などを手がける建設会社です。住宅事業を拡大するにあたり、課題となったのが人手不足です。元々は、残業を含め不規則な勤務が多く、時間に制約のある既婚女性より男性が好まれてきました。

 しかし、男女問わず優秀な人を採用する方針に転換。労働時間に制約のある社員については、本人の希望を聞いた上で、顧客の都合に合わせることの多い営業職から、仕事の進行を自分で調整しやすい管理部門などに異動してもらうといった対応をしています。

 女性が増えたことで、会社に変化も生まれました。男女兼用だった社屋のトイレは男女を分け、建設現場のトイレは全て水洗に変更しました。「現場をきれいにしよう」という意識が高まり、整理整頓も進んだといいます。