目次

  1. ロット数とは メリット・デメリットも紹介
  2. 小ロットの強みを生かしている中小企業の事例
    1. 崩壊寸前の家業を救った「コロッケ社長」 2代目の小ロット商品
    2. 「多品種・小ロット・短納期」で取引先を拡大
    3. 鹿児島ケース3代目は生産管理で赤字解消
    4. 小ロット生かして珍味をクラフトパッケージ化 販路開拓へ
    5. デジタル化で広げたモナカの可能性 加賀種食品工業
    6. タオルは約100種類超 専門店化で利益率を1.5倍に
    7. レトロな編み機が生んだ柔らかな靴下 創喜
    8. 印刷会社から生まれたデジタル名刺 小ロット生かした研美社
    9. アクラム3代目はスポーツユニホームを柱に

 ロット数とは、1回あたりの製品の製造数量や出荷数量の最小単位です。ロット数を大きくした方が、品質が安定し、装置の取り換えや調整する回数が減らせるのでコストが下げられるという利点がある一方、大量の在庫を抱えたり、広い保管場所を必要としたりします。

 そのため、中小企業では、大企業と比べて小回りの利く「小ロット」(ロット数が少ないこと)を強みとしている企業が多くなります。

 小ロットは、アピール方法によっては、取引先から見て魅力に映る特徴です。そこで、小ロット生産を得意とする中小企業の強みの生かしている事例や、課題を解決している事例を紹介します。

 年間1200万個のコロッケを製造する合同食品(大阪府豊中市)は、小ロットのOEM(相手先ブランドによる生産)を引き受けています。

 2代目の和田友宏さんは「手間がかかるわりに利益が少ない小ロットのコロッケ製造は他の工場から拒否される場合が多く、豊作すぎたり規格外素材だったりする理由で廃棄せざるを得ない状況に困っていた生産者さんらが全国にたくさんいました。そこで『最少2千個から製造します』と大々的に掲げたのです。うちの工場規模だからこそ小ロットに対応できる。お客様に喜んでいただけるうえに、技術向上にもつながりました」

季節限定の「アスパラベーコンコロッケ」など新しい味を生み出しました(同社提供)

 銅加工を手掛けるハタメタルワークス(大阪府東大阪市)の3代目社長・畑敬三さんは、少ない取引先に依存していた経営状況に危機感を覚え、会社の方針を180度転換。「多品種・小ロット・短納期」を掲げ、取引先を大幅に増やしていきました。

新工場の作業場

 精密板金加工を得意とする鹿児島ケース(鹿児島県日置市)は生産管理の大切さを繰り返し伝え、社員の気づきを促していったところ、納期遵守率が次第に向上していきました。

 通常、小ロットで複雑な形状の部品をつくると価格が割高になりますが、高い技術と徹底した生産管理によって、小ロットでも比較的リーズナブルな価格で商品の提供を可能にしています。

鹿児島ケースの生産管理システム。1工程が完了するたびにバーコードを読み取ると、進捗表が緑色に変わる。未着手の工程は白色で表示される。柱の上部に取り付けられたディスプレイには工程の進捗度がパーセンテージで表され、残った作業にかかる時間も表示されている

 珍味の卸・小売業を営む「東北珍味」(山形市)は販路を拡大しつつも価格競争に陥らない新商品開発を模索していました。体によい珍味を女性にもお勧めしたいという思いを実現するなかで見いだしたのが、珍味の新開発ではなく、小ロットである強みを生かした「女性に寄り添った届け方」でした。

店舗に並べられたおつまみシリーズ「脱おじ」

 モナカの皮をはじめとした菓子種を製造販売する加賀種食品工業(金沢市)7代目は、最少100ロット、100種類のラインアップから、誰でもモナカ種が注文できるECサイト「たねらく」を立ち上げ、販路を飲食店や個人にも広げています。

日根野さんが立ち上げたECサイト「たねらく」

 1953年に創業した商店「衣料のかみしん」(新潟県十日町市)は、百貨店に負けないタオルの品ぞろえを誇る専門店の顔も持っています。3代目店長が取り扱う品数は約100種類を超え、メーカーとの直接取引の割合が多く、問屋が小ロット生産などの理由で扱わない商品も仕入れ、利益率も高まりました。

店内にはタオルがずらりと並んでいます

 創喜(奈良県広陵町)は、昭和時代のレトロな編み機が今も稼働する靴下メーカーです。5代目社長は古い機械の利点を生かし、下請けが中心だった家業で柔らかな靴下の自社ブランドを立ち上げました。

 「多様化の時代と呼ばれ、大量生産ではなく工芸品のように職人技が光る多品種小ロットの靴下が求められるようになりました。自社に工場があり、編み機があるからこそ時代の流れに対応できた。この利点を生かし、今後もさまざまな人の足に合うはき心地のよい靴下を生産したい」

約60年前に導入した古い編み機も稼働しています

 大阪市都島区の印刷会社・研美社(大阪市都島区)3代目が力を入れているのは、相手のスマホにかざすだけで自身の情報を送る、非接触型のデジタル名刺「nearby(ニアバイ)」の普及です。

 研美社はプラスチックカード印刷を主軸にしながら、ニアバイなど新規事業を育て、5年後の27年には売り上げ10億円を目指します。

 2019年5月期には売り上げ5億円を突破し、社員も20人を超えました。新型コロナウイルスで一時売り上げは下落したものの、翌年には回復しています。

 「当社は大量生産ではなく、小ロット対応を強みにしていたこと。またICチップや顔写真入りのカードなど、付加価値の高い商品印刷を取り扱ってきたという2点が、大きく崩れなかった要因だと思います」

ニアバイは登録したSNS情報や電話番号が瞬時に相手のスマホに反映します(研美社提供)

 バスケットBリーグやプロサッカークラブのユニホームにも採用されている「SQUADRA(スクアドラ)」は、アパレル会社アクラム(奈良県広陵町)が立ち上げたスポーツブランドです。

 スクアドラでは新規注文は5着から、追加注文は1着からオーダーが可能です。新入部員1人のために、名前や背番号もプリントできます。注文を受けてから最短3週間で届くため、リスクを負わずに、必要な分を必要な時期に発注できるようになっています

 3代目は「短納期、小ロットで在庫を持たなくていい。大手ブランドへの事前発注で売れ残りの心配をしなくてもいい。それが、小売店さんの大きなメリットになりました」と話しています

アクラムはスポーツブランドでさらなる成長を見据えます(アクラム提供)