入社早々直面する経営課題

 伝統的な紙すきの工法を応用して、注文に合わせて「何でもシートにする」技術を持つのが、和紙のまち、埼玉県小川町にある「セキネシール工業」です。断熱シート、遮熱シートなど様々な製品をつくっていますが、主力商品は、エンジンのなかで部品同士の隙間を埋めてオイルなどの液漏れを防ぐ「ガスケット」です。とくに合成ゴムや特殊耐熱繊維から作る「ソフトガスケット」を得意とします。

ガスケットとは

 たとえば、エンジンで、一部の場所だけオイルを流すとき、部品同士のわずかな隙間からでも漏れない工夫が必要です。そこで部品の間の密閉性を保つために使うのが、固定用シール材であるガスケットです。素材はゴムや金属など用途によって様々。ちなみに、往復運動、回転運動など動的な場所の密封に使うシール材は「パッキン」と呼びます。

ガスケットなど様々なシート状の製品をつくるセキネシール工業の工場

 しかし、近年は、エンジンの部品に、メタルガスケットなど別の素材の製品が使われることが多くなってきました。さらにガソリン車の国内市場の販売台数も伸び悩むなかで、セキネシール工業の売り上げも伸び悩みます。今後の売り上げにつながる市場開拓が必要な時期に来ていました。そんな会社に3代目の関根俊直さん(32)が戻ってきたのは2020年1月。会社の現状を把握するため、各部門を回りながら仕事をしていると様々な経営課題が見えてきました。

社員の平均年齢が50歳弱

 最初に見えてきたのが、社員の高齢化でした。長年蓄積してきた技術が強みとはいえ、平均年齢は50歳弱。そこで、力を入れることにしたのが中途採用でした。

 関根さんは「新型コロナの影響で、仕事を探している人がいる一方、企業からの求人数は減っています。そんな時だからこそ優秀な人材を採用できるチャンスです」と話します。採用の責任者に就くと、人材サービスを手がけるメガベンチャー「ビズリーチ」で勤めていた前職の経験を生かし、求人内容を大幅に改訂するところから始めました。

 求人募集の会社ページのトップ画像は社員旅行。募集ページの見出しは「【製造スタッフ】高い有給取得率/毎年ボーナス有/寮完備/高い有給取得率/社員旅行充実/高い正社員登用実績」として、福利厚生や待遇を丁寧に説明しました。

 こうした取り組みの結果、若手社員1人の採用につながりました。

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