キャンプ用品の新ブランド立ち上げに2年 後継ぎに求められた実績
新規事業を発案してから販売開始まで2年。1887年創業の老舗工具箱メーカーの後継ぎ唐金祐太さん(32)は社内で認められる実績をつくりながら、キャンプ用品の新規事業を始めました。長年、職人用の工具箱を製造してきたことで培った工夫を生かし、人気商品になっています。
新規事業を発案してから販売開始まで2年。1887年創業の老舗工具箱メーカーの後継ぎ唐金祐太さん(32)は社内で認められる実績をつくりながら、キャンプ用品の新規事業を始めました。長年、職人用の工具箱を製造してきたことで培った工夫を生かし、人気商品になっています。
老舗工具箱メーカーのリングスターは、130年以上工事現場や建築現場の職人の意見を取り入れて工具箱をつくり続けてきました。設計・開発からの一貫生産が強みで、現在は全国のホームセンターで販売されています。5代目となる現社長の長男で、マーケティング室長の唐金祐太さんは「狭い現場でも開けやすいよう両開きになっていたり、耐久性に優れていたりと、長年の工夫が箱の一つひとつに詰め込まれています」と話します。
唐金さんが2020年4月に社内で立ち上げたのが、キャンプ用品のブランド「Starke-R(スタークアール)」です。その一つが、持ち運びが便利で積み重ねができる丈夫なバスケットです。重い物を入れても取っ手が手が痛くなりにくいよう工夫されており、さらに取っ手を引き上げるとバタッと倒れずに固定されます。こうした機能が注目され、Makuakeでは、プロジェクト開始から40分後に目標額を達成しました。
商品づくりのきっかけは、キャンプに向かう知人の車の後部トランクが荷物でパンパンになっている光景を見たときでした。話を聞いてみると、SNSでは、キャンプの荷物をうまく積み込めた写真をアップする人もいるとのこと。「職人さんの車も工具箱でパンパン。うまく積み込める箱があればキャンプで使われるかもしれない」。新規事業のアイデアをひらめいたのが、2018年のことでした。
新規事業を考えていたのには理由がありました。中国製の安価な工具箱が輸入されるようになって、国内の工具箱メーカーは半減。さらに、国内では、価格競争力をつけるため工場の自動化が進んでいます。
そんな現状に危機感を持った唐金さんは、リングスターの技術を生かした「丈夫な箱」の新しい展開を模索していました。キャンプに行く車に出会ったのは、そんな時でした。
新規事業を提案しても、職人気質の父・吉弘社長は簡単には首を縦に振りません。先に求められたのが「実績」でした。
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そこで、朝6時半に出社して仕事の準備をし、まず本業をきちんこなすことにしました。工具箱の取り扱い店舗を増やすためにホームセンターへの営業にも力を入れました。
さらに、リングスターが1994年から手がけていた釣り用のフィッシングボックスについて、Instagramを通じて日米で活躍するプロアングラー伊豫部(いよべ)健さんに紹介してもらったり、2019年にはスターバックス コーヒー ジャパンとビームス創造研究所のコラボ企画のなかで「収納インテリア」として商品を紹介してもらったりと新しい取り組みで成果を出しました。
新規事業に説得力を持たせるため、唐金さんはキャンプも始めました。キャンプに持っていける道具には限りがあり、車に収納しやすい形の用具箱が必要であることも見えてきました。「シンプルで多機能、そして何より丈夫さが求められていました」
そんな経験から、ビニール袋をかぶせてごみ箱代わりに使ったり、洗い場で食器入れに使ったり、行き帰りの車のなかで積み重ねて収納ボックスに使ったりとキャンプの様々な場面で使えるバスケットを開発することしました。
社長と月1回飲みながら、市場ニーズや新規事業の狙いについて話し合いを続けるなかで、ようやくキャンプ用品ブランド「Starke-R」のGOサインが出ました。
Makuakeで2020年1月に始めた初回のプロジェクトで約860万円が集まり、唐金さんは「社内で見る目が変わった」と感じました。社員からは「(新しい分野を)切り開いてくれてありがとう」と声をかけてもらったといいます。10月からはバスケットのサイズの種類を増やして第二弾のプロジェクトを始めています。
唐金さんは「新しいブランドを立ち上げて、本当にめぐまれた環境にいることを実感しました。先人や先輩方が130年にわたって築き上げた実績があったからこそ、いま評価されているのだと思います」と話しています。
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