「技術的には可能です」の真意とは?エンジニアと行き違いを減らす方法
ECサイトの開設、業務改善システムの導入など中小企業のデジタル化が進むなか、経営層が社内外のエンジニアとコミュニケーションを取る機会も増えています。しかし、あいまいな指示では、コスト倍増、スケジュールは後ろ倒しという結末にもなりかねません。エンジニアのタイプ別に、経営層がどのようなコミュニケーションを取るべきか解説します。
ECサイトの開設、業務改善システムの導入など中小企業のデジタル化が進むなか、経営層が社内外のエンジニアとコミュニケーションを取る機会も増えています。しかし、あいまいな指示では、コスト倍増、スケジュールは後ろ倒しという結末にもなりかねません。エンジニアのタイプ別に、経営層がどのようなコミュニケーションを取るべきか解説します。
「技術的には可能です」というエンジニアの言葉の受け止め方について2020年7月、日本一残業の少ないIT企業を掲げる「アクシア」米村歩社長のツイートが広く拡散されました。
エンジニアから「技術的には可能です」と言われた時は、何か障壁があると思っていただいた方が良いです。
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) July 8, 2020
・技術的には可能(でもめっちゃお金かかるよ)
・技術的には可能(でもめっちゃ時間かかるよ)
・技術的には可能(でも作っても意味なくね?)
・技術的には可能(でも正直作りたくないです)
もちろん、エンジニア側から上記ツイートの(でも……)につながる部分を伝えることは大切ですが、「言いにくい雰囲気を自分が作ってしまっている可能性も考えるべき」だと米村さんはツイートしています。
「こういうのできますか?」
「できますよ」
「じゃあすぐやってください」
「(え?それに必要なお金は?時間は?)」
これで後になって「あの時できるって言いましたよね!?」みたいな詰め方していると、相手は自分を守るために「技術的には可能です」みたいな言い回しが出てくるようになります。
たとえば、ECサイトの構築を発注するなかで「○○の機能できますか?」と問い合わせて「できます」と答えが返ってきたので依頼したのに、いつまで経ってもできないし、コストも増えている……。
そんな経験ありませんか。クレームを入れるのは簡単ですが、その前に、エンジニアに対する質問を振り返ってみましょう。
エンジニアはプログラマチックに物事を考える傾向があります。「できる?できない?」という二元論のような質問をした時には「(お金はかかるけど)できる」「(時間はかかるけど)できる」というYES/NOで答える場合があります。
もし、自分の意図した答えを求めるときには、インプットを正確にして次のように尋ねてみましょう。
こうした質問方法はエンジニアだけに限りません。社員に仕事を頼むときにも手戻りを少なくすることに生かせます。
一言で「エンジニア」といっても、さまざまなバックボーンを持った技術者たちがいます。仕事をスムーズに進めるためには、相手のバックボーンを理解した上でのコミュニケーションが欠かせません。今回は、3つのパターンに分けて紹介しますが、完全に分かれているわけではなく、少しずつ混在していると考えて良いでしょう。
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プログラムを「どう作るか」「何を使って作るか」に興味を持っています。コストや期間よりも「より良いシステムを作るためにはどうしたらいいか」に関心が向きがちです。
そのため「できるだけ安く」とか「すぐに」と伝えるよりもまずは「どんな目的で」「どのような機能が欲しいか」「それらを最小限の機能から拡張して使っていきたい」というポイントを意識して情報を伝えてください。すると、やる気を持って爆速で最小機能を作り、それから順々に機能追加してくれることでしょう。いきなり「全機能を搭載して」というのはなるべく避けましょう。それは、彼らにとって「地獄へのロード」に感じられるからです。
継続的にIT周りの仕事が発生する場合は採用を検討する企業もあるかもしれません。プログラマーは職場環境として、自身がプログラムに集中できる環境を好みます。たとえば、ヘッドホン利用可、スーツ着用不要、社内カフェ利用無料、研修費用補助、スペックのいい開発用パソコン(Mac)貸与という項目は魅力的に映る可能性があります。
プログラマーとは異なり、予算と期間を気にします。比較的巨大な規模の案件を数年かけて作ることに長けています。自分で手を動かしてプログラムを書くよりも、出来上がったシステムをうまく運用したり、要件定義を詳細に記述したりする事務が仕事の大きな割合を占めます。
情シス担当は、システム開発にまつわる業務を引き受ける「SIer」やコンサルをうまくコントロールすることを得意とします。システムの発注と出来上がったシステムの規律を守り、大きなトラブルを起こすことなく運営していく術については随一です。
社内のIT秩序を守ることに注力しますので、申請書や手順を重んじます。それらは安定的にシステムを動かすためには最も必要なものです。
求めているのは「安定」です。ですので、もし採用を検討する場合は、福利厚生や安定した雇用などが魅力的に映るかもしれません。
組織内の誰がどのようなスキルを持ち、どんなプログラムやシステムが得意で、どのようなつくり方をすれば予算内、期間でものが作れるかを理解しています。
プログラマーからは「あいつはプログラムを知らないくせに口を出す」と言われてしまったり、情シス担当からは「私たちが進めている案件を複雑にする」と疎まれたりすることもありますが、コンサルが絡まないシステムは独りよがりになりがちですし、巨大システムは迷走することが少なくありません。知識量と人との協業において強みを発揮できる仕事です。ただし、クライアントとの板挟みになることも多く、ストレスなく指示できる場所を求めています。もし採用を検討される場合は、CTOやCIO、CKOなどの肩書についても検討してみてください。
それぞれの特徴の違いを理解し、社外に発注、または社内で採用することで社内のIT基盤は安定します。一番大切なことは、だれに頼むかではなく、それぞれの特徴を把握し、上手にその能力を引き出すことです。
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