スフェラーは、「spherical(球状)」と「solar(太陽の~)」を組み合わせた造語だ。創業者の中田仗祐(じょうすけ)会長(83)が名付けた。シリコンでできたひと粒の大きさはビーズほどで、直径2ミリに満たない。

 大手家電メーカーのエンジニアだった中田会長。40代で独立した後、太陽電池の研究に没頭した。だが大手メーカーもパネル型の太陽光発電に相次ぎ参入していた。同じことをしても勝ち目はない。ある時、ひらめいた。「いっそ球面にしてはどうか」

 平面だと、光を受ける方向が限られる。だが、球面なら太陽の向きを気にせず、全方位から光を取り込める。1日を通した発電量も増やせると考えた。

 だが、シリコンを球状に削る際、大きすぎると無駄が多くなる。試行錯誤を重ね、直径1.2~1.8ミリが最適とわかった。1996年に特許を取得し、2002年ごろ、ようやく実用化のめどがついた。

 極小の球体を自由に配置でき、デザイン性に富むのも大きな特徴だ。京都府伊根町の役場入り口前では2年前から、スフェラーを使ったスタイリッシュなサインボードが夜間照明の電源に使われている。蓄電池を定期的に換える必要はあるが、手入れはいらない。雪や汚れもつきにくいという。

 伊根町は63の自治体・地域が加盟する「日本で最も美しい村」連合に名を連ねる。「景観を大事にする自治体で採用されたことは、大きな励みになった」と井本聡一郎社長(55)は話す。

 また同社のペンライトは昨年、長野県軽井沢町で開かれた主要20カ国・地域(G20)のエネルギー・環境関係閣僚会合で、「環境に優しい商品」として各国代表に贈られた。スフェラーを織り込んだテキスタイルをテントの屋根に取り入れ、災害時の電源に活用する自治体もある。

 目下の課題は、量産化と大幅なコストダウンの実現だ。井本社長は「SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、スフェラーが求められる時代が来つつある」と、新市場の開拓に意気込んでいる。(2020年10月31日付け朝日新聞地域面に掲載)

スフェラーパワー

 京都セミコンダクター(京都市伏見区)を創業した中田仗祐氏が、同社で取り組んでいた球状の太陽電池の事業を受け継ぎ、2012年5月に設立した。従業員12人。昨年度の売上高は約4千万円。北海道恵庭市と上砂川町に自社工場がある。