副業(ダブルワーク)の正社員を雇用する時の注意点とは 活用方法も紹介
コロナ禍で副業(ダブルワーク)する正社員を活用する企業が増えています。この記事では発注者側(雇う側)に立ち、副業人材に業務を外注する上での契約の注意点と活用するポイント、役立つ副業マッチングサイト・サービスを社労士が紹介します。
コロナ禍で副業(ダブルワーク)する正社員を活用する企業が増えています。この記事では発注者側(雇う側)に立ち、副業人材に業務を外注する上での契約の注意点と活用するポイント、役立つ副業マッチングサイト・サービスを社労士が紹介します。
目次
労働や雇用を管轄している厚生労働省のサイトには、労働・雇用に関するガイドラインやリーフレット、モデル様式が多数あります。
2020年(令和2年)9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定され、11月にはそのガイドラインに沿った内容に「モデル就業規則」も改訂されました。働き方改革を踏まえて国が副業・兼業を促進している状況です。
5年ごとに総務省が行う就業構造基本調査は就業・不就業の状態を調査するもので、副業者数と追加就業希望者数についても結果が出ています。
最新調査年度は2017年(平成29年)で、108万人を対象に実施されました。有業者に占める副業者の比率は4.0%で、前回調査から0.4ポイント上昇しています。副業者の正規職員比率は2.0%、非正規職員比率は5.9%と、副業をしているのは非正規職員が多い状況です。
追加就業希望者比率は正規職員が5.4%、非正規職員で8.5%、総数で6.4%となっており、2017年(平成29年)時点で非正規として働いている方の1割近くが副業・兼業を希望していることがわかります。(出典:「平成29年就業構造基本調査 結果の概要」11ページ)
2020年(令和2年)末時点では、非正規の方は2割程度副業・兼業(アルバイト掛け持ちなどを含む)している印象があります。コロナ禍で時短営業や休業を余儀なくされたことがきっかけで副業・兼業を検討、開始された方が多いようです。
人材会社エン・ジャパンが運営する『エン転職』上で、ユーザーを対象に2020年(令和2年)に行ったアンケート結果では、副業希望者は49%と前年より8ポイントアップ、しかし就業先の容認度は27%にとどまっています。
副業を希望する理由は「収入を増やしたい」が圧倒的に高く88%、次は「知見・視野を広げたい」が26%です。副業をする上で不安に感じる点は「手続きや税金の処理が面倒」が52%と最も高くなっています。
国が副業・兼業を促進しているにもかかわらず、企業の容認度が30%以下にとどまっている理由として、副業人材の労働時間管理が困難であったり、社内制度の整備が進んでいなかったりという話を聞きます。
副業・兼業に関するガイドラインは改定されていますが、労働時間管理などの労働基準法自体は変わっていないので、その部分が次に解説する注意点のポイントになってきます。
自社でも副業人材を活用しよう!となった際に、まず確認が必要なのは契約の状態(雇用契約か、準委任・請負契約か)についてです。
個人事業主への外注という形なら問題はありませんが、雇用契約の場合は労働時間の通算を行うため、あまり確認をせずに副業人材を雇用すると思いがけない時間外手当(割増賃金)が発生することがあります。
1日の法定労働時間は8時間と定められており、8時間を超えた時間については割増賃金を支払わなければなりません。労働時間は事業主・事業所が別でも通算されます。
例として、「A社(1日6時間・週30時間)に雇用されていた方が後からB社(1日4時間・週24時間)に雇用された。A社で勤務後、自宅でB社の仕事を行っている」という方で考えるとA社の業務後B社の業務を行った日は10時間労働したことになり、8時間を超えた2時間分の割増賃金を、B社が支払う必要があります。
業務の順番がB社→A社の日でも、後から雇用したB社が割増賃金を支払います。
労災事故がどちらかの業務中に発生した場合、保険給付は2社の賃金をあわせた額で算定されます。
もし過労などによる発症があった場合には、まずそれぞれの会社ごとで負荷を判断し、それで労災認定出来ない場合はA社とB社の業務負荷が総合的に判断されます。労災保険料は2社とも、当該労働者に支払った賃金に労災保険料率を乗じた額を納めます。
雇用保険は原則1社でしか加入出来ず、主たる賃金の方で雇用保険資格を取得するのが原則です。雇用保険料は加入した1社が当該労働者に支払った賃金に雇用保険料率を乗じて納めるほか、毎月労働者の賃金から雇用保険料を徴収することとなります。
それぞれで社会保険加入の要件(週の所定労働時間が20時間以上あること、雇用期間が1年以上見込まれることなど)を満たしているか判断します。
上記例で2社とも社会保険に加入することとなった場合には、社会保険料は2社の報酬を合算した金額で算定され、社会保険料の事業主負担は報酬額により按分されます。
参考:厚生労働省「副業・兼業」
先ほどまで雇用契約の場合の注意点を述べてきました。ならば全て準委任・請負契約とすれば良いかという話かといえばそうではありません。
準委任・請負契約では、下記のいずれかの事項を行うと偽装請負となる可能性があります。
偽装請負となり実態は雇用であったとなると、労働基準法の最低賃金の適用・割増賃金の支払い、社会保険料・労働保険料の遡及支払い、所得税の源泉徴収を要求される場合があります。
では、どのようにすれば副業人材を活用出来るのか、ポイントを解説します。
次の方々は労働時間の通算がされない人材です。
ただし上記の人材についても、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいとされています。
副業人材を雇用する際は必ず本業の形態や、本業の会社で雇用されているとすれば、きちんと副業が許可されているか本人に確認することが大切です。
競業の労働者の場合、労働者側の競業避止義務違反としてトラブルにつながる可能性があるので、本業にかかわる事項は必ず聞いておき、双方納得のうえ雇用契約を結びましょう。
また、自社社員が副業・兼業をしたいといった場合のことを考えて、会社として許可する場合は届け出制にするのが労働時間過多を防ぐためにも望ましいです。
厚生労働省のモデル就業規則の第14章が副業・兼業に該当する部分なので、こちらを参考に就業規則を改定されると良いでしょう。
今、数多くある副業マッチングサイト・サービスを利用するのもひとつです。
副業マッチングサイトとは、副業・兼業を希望する労働者が受注側として、副業人材を探す企業・クライアントが発注側として登録し、互いのニーズと条件を見てマッチングし手数料を取る、仕事の受発注を行うサービスです。
もちろん仕事案件によりますが、多くが請負・準委任、成果報酬の形をとっており、「雇用」という形態ではないため副業人材を試しに取り入れてみたい、という場合にも適しています。
マッチングサイトによって地方企業に注力していたり、期間が長期(3カ月~)であったり、IT人材が豊富だったりと様々な特色があります。依頼したい業務内容や職種を定めてうえで、いくつかのマッチングサイトを見てみるのが良いでしょう。
ギグワークとは、多様なライフスタイルに合わせて短い時間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方を指します。単発(1日)から短期(1カ月)で終わる業務の取り扱いの多いサイトです。IT人材が関わる案件の場合、プロジェクト型で参画するものが多く、中には長期(3カ月超)にわたるものもあります。
次にあげるサイトはどちらも地方・地域に特化したものです。
JOINSは都市圏に住む受注者がリモートワークで出来る地方企業の案件が多いです。また、マッチングサイトでは珍しく、2次面談まで行った上で契約を結びますので発注者側も受注者をじっくり選べるでしょう。
ふるさと兼業は伝統産業や地域活性にかかわる案件が多いのが特色です。コロナ禍の影響を受ける若者支援プログラムやお試しプログラムがあったり、手数料が無料であったりと社会貢献性が高いように感じます。プロジェクトは基本的に3カ月超と他のサイト案件より長期ですので、スキマ時間であっても長期間安定して仕事をすることが出来るでしょう。
まずは副業人材に行ってほしい業務を決めましょう。
その業務の期間や内容に適したサイトを使うのが好ましいですが、迷ったときには複数のサイトに登録してみても良いと思います。マッチングサイトの多くは登録が無料で、仕事の受発注が発生した際に手数料を支払う形式です。
サイトによっても受注者の属性が変わってきますので複数のサイトに登録して、業務の種類によって使い分けるのも良いでしょう。
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