目次

  1. OKRとは
    1. 二つの構成要素
    2. 三つの特徴
  2. OKRは取り入れるべき?効果と失敗要因
    1. OKRが有効に機能する企業とは
    2. 導入効果
    3. 失敗要因
  3. OKRの導入ステップ
    1. ステップ①目標(Objective)の設定
    2. ステップ②主要な成果(Key Results)を設定する
    3. ステップ③個人の主要な成果(Key Results)を設定する
    4. ステップ④OKRの共有
    5. ステップ⑤測定・評価・適切なフィードバック
  4. まとめ

 OKRとは、Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略称で、目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)の二つで構成される目標管理フレームワークです。

 OKRは、一つの目標(Objectives)に対し複数の主要な結果(Key Results)が関連する構造となっています。

 OKRは、全社、部門、チーム、個人の順に設定され、それぞれの目標と主要な結果がひとつの延長線上に構成されています。

  • 目標(Objectives)

     達成したいものを文字にして定性的に表現したもので、シンプルで覚えやすいものが求められます。また、組織のモチベーションを高める魅力的なものであり、基本的に四半期で達成できるものとされています。

     例えば、株式会社メルカリでは、同社が掲げるバリューの一つである「All for One(全ては成功のために)」を実現する手段としてOKRが活用されています。

  • 主要な結果(Key Results)

     目標達成に向け進捗状況を測定・評価する指標です。数値で測定できる定量的な指標が求められ、一つの目標に3個くらい設定します。

     「ベストを尽くせば達成できる」水準のストレッチ目標が望ましく、設定された60%~70%の達成度で成功とみなされます。

     例えば、「お客様に信頼される企業になる」という目標に対し、①市場でのシェア②ロイヤルカスタマー比率③マスコミ媒体露出率などのKRを設定します。

 OKRの特徴は次の三つです。

  • 特徴① 目標を達成するための手法

     MBOなどの手法では、報酬を決定するなど人事評価の側面が強くなります。一方で、OKRは、会社から個人まで共有した目標を達成することに重きを置きます。

     そのため、OKR策定時のポイントは「高い目標を設定する」ことにあり、求める達成度は100%ではありません。個人の報酬など人事上の評価とはと切り離して考えます。

  • 特徴② 全社・組織・個人の目標がリンクする

     OKRは、全社の大きな目標を掲げ、その目標にひもづいて下位組織や個人の目標を設定します。

     OKRを通じて全社の目標と個人の目標とがリンクし、社員の行動を会社が目標とするものに向かって促すことにつなげることができます。

     また、全社から個人までの目標や主要な結果が共有されているため、具体的に取り組むべきタスクの優先順位を明確にできます。

  • 特徴③ 高い目標設定と短い評価スパン

     OKRが目標を達成することを目的としたフレームワークであることから、目標は高いレベルで設定されます。

     多くの手法では、目標は100%達成できるような指標が設定されます。それに対し、OKRでは60~70%の達成度となるような高いレベルで設定されます。

     また、目標に対する進捗管理は、他の手法と比べてレビュー頻度が多く、評価のスパンが短いことが特徴となっています。

 では、OKRはどんな会社が取り入れるべきでしょうか?導入の効果や失敗する理由を解説します。

 OKRは、会社の目標達成に向けた手法として有効であり、高い評価を得ています。

 しかし導入にあたっては、その導入効果と失敗要因を理解し、自社の現状を踏まえた選択が必要です。

 一般的には、スタートアップやIT企業など内外の経営環境の動きが速く、挑戦的な文化を持った企業に適しているといわれています。

 筆者は、勤務先の売り上げが急拡大した時期を経験したことがあります。急激な成長期には、取り組むべきことが多く、しかもスピーディーに答えを出すことが求められ、OKRに似た手法で進捗管理を行っていました。

  • 導入効果① 組織目標を達成できる可能性が高まる

     OKRでは、全社・組織・個人の目標・成果指標が一直線上に並んでいます。

     そのため、全社員が会社の目標を共有できるだけでなく、その目標を実現するための自分の役割を理解できます。

     会社の全階層で目標達成に向けたアクションをとることができ、結果として組織目標を達成する可能性を高めることになります。

     Googleなどが瞬く間に市場を席巻し、しかも高い成長を実現していることは、OKRの有効性の証しとも言えます。

  • 導入効果②社員のモチベーションが向上する

     OKRを導入すると全社で目標を共有することに加え、個人の目標が全社の目標とリンクしているため、自分の貢献度や達成度が実感しやすくなります。

     そのため会社や業務へのモチベーションが向上します。モチベーションの向上は、業務上の創意工夫など社員の資質向上につながり、目標を実現するための組織力の向上が期待できます。

     Googleでは、社長からスタッフまで「あなたのOKRはなんですか?」と問いかけることができる企業文化があり、一人一人の価値観を大切にしています。

  • 導入効果③ 短いスパンでの進捗管理ができる

     OKRを導入することで、目標達成に向けた進捗管理を短いスパンでできる効果があります。OKRは、他の手法と違い、時には週に1度の頻度で測定と評価を行うことで進捗状況の確認を行います。

     短いスパンでの進捗確認により、目標との距離や課題の洗い出しなどが行われ、目標実現に向けた取り組みを軌道修正し、加速させることができます。

     OKRを採用しているメルカリなどは、新興企業ですが、成長のスピードが圧倒的に早いことが特徴となっています。

 導入に失敗する要因として次のものがあります。

  • 失敗要因①目標(Objective)が不明確

     OKRでは、主要な結果(Key Results)を設定することに重点を置き、目標(Objective)が不明確なものであると失敗するケースがあります。

     目標(Objectives)は、達成したいものを定性的に表現し、組織のモチベーションを高めるものが求められます。

     社員とってわかりづらくゴールがあいまいな目標(Objective)であると、社員の達成意欲や貢献意欲がそがれることになります。

     例えば、売上高〇%アップなど定量的な目標は、価値観の多様化や社会貢献性が求められる現在の風潮の中では、社員や社会からつまらない目標とみなされかねません。

  • 失敗要因②主要な結果(Key Results)が高すぎる、低すぎる

     主要な結果(Key Results)の数値目標が高すぎること、または低すぎることも失敗の要因となります。

     一般的に、高い目標は、個人や組織のパフォーマンスを高くする傾向にあります。

     しかし、いくら背伸びして手が届きそうな「ストレッチ」な目標であっても、数値目標が実現不可能なものであれば、社員の意欲は最初からそがれてしまいます。逆に容易に達成できる数値目標は、個人や組織の成長を妨げる要因となります。

     OKRでは60%~70%の達成度で着地することを目標としており、一つのKRでも100%で達成できたとしたら、設定自体が誤っていたと評価されます。

  • 失敗要因③人事評価ツールとして利用する

     OKRは、組織目標の達成に重きを置いた業績評価ツールです。KRの達成度と、個人や組織の人事上の評価を連動させてしまうとその本質を失ってしまいます。例えば、人事評価ツールとして利用すると、数値目標の設定時に低めにするインセンティブが働いてしまいます。
     またトップダウンの高すぎる目標は、社員のやる気をそぎ、結果として個人や組織のパフォーマンスが悪化することになります。

 OKRは、一般的に次のステップで導入されます。「OKR管理シート」に沿って解説します。

 特に全社の目標は、組織から個人までリンクするOKRの肝となりますので、設定には十分な検討が必要です。

 目標は、わかりやすいこと、シンプルであること、エンゲージメントを高めることなどが求められます。下位の組織や個人の目標は、当然のことながら全社の目標に合ったものを設定します。

 「OKR管理シート」には、組織や個人の目標をそれぞれの目標欄に記入しましょう。

 主要な成果(Key Results)は、社員誰もが同じ認識ができる数値化した目標を設定します。一つの目標に、3~5個の主要な成果を設定し、組織や社員の具体的な行動に結び付くものとします。

 「OKR管理シート」には、組織・個人のKRをそれぞれのKR欄に記入します。

 個人の主要な成果(Key Results)を設定するときは、全社のKRと整合性を持つKRを設定することが必要です。

 難易度が高いほうがモチベーションを維持するのにも有効なため、達成度が60~70%見込みの目標にします。

 KRが全社から組織、個人へリンクすることにより、個人の目標達成で組織、全社の目標達成となることを目指します。

 KRは数値指標ですので、個人のKRは組織のKRを細分化したものとなります。例えば組織のKRが売上高の場合、個人のKRは、エリア別や商品別の売上高になります。

 OKRは、全社員がいつでも確認できる必要があります。メールやホームページなどで情報発信・共有し、OKRを常に意識できる環境を整えます。

 OKRは、定期的に目標達成状況を測定評価し、組織内にフィードバックすることが必要です。

 達成の可否、期限、達成を阻害する要因など組織内で共有することで目標達成率は向上します。

 また、週次ミーティングなどフィードバックの場は、社員の当事者意識を高め、目標達成に対するモチベーションを維持させることにも有効です。

 OKR管理シートでは、四半期を評価単位とし、各月の達成状況を評価し進捗管理を行います。数値ですので、%評価がOKRにはなじみやすいでしょう。

 OKRは、会社の目標達成に向けた管理システムとして有用な業績評価ツールです。

 特に全社の目標を明らかにすることで、社員のやる気を引き出し、主体的に考えて行動できるようにする側面もあります。

 事業承継を機にOKRを導入し、会社全体としてベクトルを合わせる取り組みに挑戦してみてはいかがでしょうか。