目次

  1. 目標管理とは
  2. 目標管理の目的
    1. 組織のあるべき姿と目標の共有
    2. メンバーの資質やモチベーションの向上
    3. 組織目標の達成
  3. 目標管理の活用例
    1. 経営戦略の策定・実行と評価
    2. 人事評価ツール
    3. 商談のQCD管理
  4. 目標管理の手法
    1. MBO
    2. OKR
    3. KGI(KPI)
    4. BSC
  5. まとめ

 目標管理とは、組織や個人の目標を設定し、その目標達成状況を確認・評価する管理手法です。目標管理の一つの手法であるMBOは、1950年代にアメリカ経営学者ピーター・ドラッカーが提唱したとされる組織管理手法です。ドラッカーは社員の自主性や主体性を尊重して、社員自ら目標を設定、実行、管理させる手法を唱えました。

 現在では、OKRやBSCなど様々な目標管理の手法が開発され、様々なシーンで活用されています。

 目標管理は、所属する組織の目標に合わせて、メンバー自ら目標の設定と目標達成のための主体的な行動をうながします。目標管理を活用する主な目的は次の通りです。

 目標管理では、組織の目標と個人の目標がリンクすることが大前提です。

 そのため、組織のメンバーと上位者のコミュニケーションは欠かせません。組織のメンバーは自分の目標を主体的に設定することを求められます。

 組織の目標とリンクさせるためには、上位者は、組織のあるべき姿・目標などを伝えメンバーの目標に反映させる必要があります。

 結果として、コミュニケーションを通じて、組織の上位から底辺まで組織のあるべき姿や目標を共有できます。

 多くの人が経験されていると思いますが、人は、明確な目標を持つことで、目標を達成するための計画を立て、主体的に行動をすることができるようになります。

 そのため、目標管理の導入は、自律的・主体的に動くことができるメンバーの資質向上につながります。

 また、自ら設定した目標を達成することでメンバーは満足感を得ることができます。

 さらに周囲からの称賛や給与などの処遇のアップなどにつながり、メンバーのモチベーションが向上します。

 目標管理の最終的な目的は、組織目標を達成することにあります。

 目標管理の導入により、組織目標の共有化を図り、個々のメンバーの資質やモチベーションが向上することで、目標達成の実現性が高くなります。

 目標管理は、企業やプロジェクトなどの組織で、色々なシーンで活用されています。

 目標管理が組織目標を実現することを目的としていることから、経営戦略の策定・実行とその進捗管理を行う業績評価ツールとして活用されています。

 目標管理により、経営戦略や目標を組織内に浸透させ、組織全体が経営目標の実現を目指して戦略的に行動することを促します。

 代表的な手法は、OKRやBSCです。

 日本では、目標管理といえば人事評価ツールの側面が一般的です。

 グローバル競争に勝ち抜くため、人材の育成と人件費の最適配分を目的として、成果主義の考え方とともに、目標管理は導入されました。

 1990年代に導入され、上場企業など大企業では人事評価ツールとしての目標管理は当たり前のものとなっています。

 手法としては、MBOが代表的です。

 建設業やソフトウェア事業者などでは、チームを組んでプロジェクト化して事業を進めます。

 お客と約束したQ(品質)やD(納期)を守り、商談の利益アップに向けたC(コスト)管理に目標管理の手法が活用されています。

 目標管理の代表的な手法は次の通りです。

 MBOとは「Management By Objectives」を省略したもので、「目標管理」と訳されます。

 MBOは、組織や社員一人一人の目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決めるフレームワークです。

 日本では、1990年代から人事評価ツールとして導入が急激に広がりました。

 それまでは、成果ではなく職務の遂行能力で評価する職能資格制度でしたが、バブル崩壊により、膨張し続ける人件費を抑えたいとの思惑が背景にありました。

 MBOの目標設定上のポイントは2つあります。

 一つ目は個人目標が組織目標とリンクしていること、二つ目は個人目標は従業員本人に決めてもらうことです。

 筆者は1990年代にMBOを導入した企業に勤務した経験があります。評価される立場と評価する立場でとらえ方が違い、それぞれの立場で問題点を感じていました。

 導入から約30年、MBOは、そのメリットやデメリットが指摘され、各企業で制度の見直しが行われ、今では各社の事情に合ったより洗練されたものとなっています。

 OKRとは「Objectives and Key Results」を省略したもので、「目標と成果指標」と訳されます。

 OKRでは、まず組織の目標(Objectives)を決め、その達成のために必要な要素を成果指標(Key Results)に分解し、指標の進捗状況を測定・評価します。

 組織のOKRを設定した後に個人のOKRを設定し、組織と個人のOKRをリンクさせます。そのため、社員一人一人の目標よりも組織の目標を達成することに重きを置いています。

 OKRの特徴は二つです。

 一つ目は、目標の設定自体は四半期〜半期ですが、頻繁に進捗度のレビューをすることが求められます。

 二つ目は、目標はアグレッシブなものを求められ、目標に対しての達成度は、60〜70%が望ましいとされています。MBOやKGI(KPI)が100%の達成度を求めている点と大きく異なっています。

 スタートアップなど少人数な組織で、取り組むべき課題が多く、しかも短いスパンで解決しなければいけない企業には有効なフレームワークです。

 OKRは、GoogleやIntelで導入されています。

 KGIとは「Key Goal Indicator」の省略で、「重要目標達成指標」と訳されます。

 一方、KPIとは「Key Performance Indicator」を省略したもので、「重要業績評価指標」と訳されます。

 KGIは、組織全体として達成に向け定めた最終目標であり、最終実現に向けて設定するより細かく具体的な業績目標がKPIとなります。

 KGIやKPIを設定する時は、指標をツリー状に分解し、体系的に比較できるように細分化するロジックツリーを使用するのが一般的です。

KGIやKPIを設定する際は、指標をツリー状に分解するロジックツリーを使用しましょう。その具体例です。

 上記のロジックツリーの例では、「売上を伸ばす」KGIに対して、KPI①で二つの方向性「受注件数を伸ばす」「受注単価を高める」を設定します。それぞれのKP1①に対して、より具体的にKPI②を設定します。KPI②を達成することでKPI①を達成し、KPI①を達成することでKGIを達成する構造となっています。

 BSCとは、Balanced Scorecardの省略形で、バランスト・スコアカード(またはバランススコアカード)と呼ばれます。BSCは、「財務」「顧客価値」「業務プロセス」「学習と成長」の視点で、経営戦略を立案・実行し、業績を評価する手法です。

 非常に優れたフレームワークですが、全社から個人まで作成・運用することは現実的には難しいです。

 そのため、ビジネスの不確実性が高まった背景から、会社全体ではなく、プロジェクト単位に多角的かつ具体的に戦略立案・実行・評価するフレームワークとして採用されています。

 また、人事評価ツールとして導入することも適切ではありません。

 BSC(バランスト・スコアカード)の一般的な策定プロセスは次の通りです。

  1. 経営ビジョンと戦略の設定
  2. KGI(重要目標達成指標)の設定
  3. 重要成功要因の設定
  4. KPI(業績評価指標)の設定
  5. アクションプランの設定
  6. 測定と評価

 今回、紹介した目標管理の手法の特徴は次の通りです。

目標管理の手法であるMBO・OKR・KGI・BSCの特徴をまとめました

 自社の実情に合わせた目標管理手法を積極的に活用し、経営目標の実現に取り組んでください。