目次

  1. 在留資格「特定技能」とは
    1. 在留資格「技能実習生」と「特定技能」の違い
  2. 特定技能外国人を受け入れる時の手順
  3. 特定技能外国人を雇用するときのポイント
    1. 特定技能外国人の探し方
    2. 技能試験と日本語能力試験
    3. 特定技能外国人受け入れの費用
    4. 登録支援期間について
  4. 帰国した技能実習生を特定技能外国人の候補に

 「特定技能」の在留資格は、対応している業種が技能実習制度とほぼ共通しています。その技能水準の位置づけから見ても、最長在留期間を超えた技能実習生が、同じ職種区分の仕事で引き続き日本で働くことができる道を開いたと見ることができます。

在留資格について(出入国在留管理庁・新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組から引用)

 「特定技能」の在留資格には、1号と2号があり、その違いは以下のように定義されています。

  • 1号:特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する
  • 2号:特定作業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する

 ただし、「特定技能2号」には、現時点では「建設」と「造船・船用工業」2つの産業分野のみが受け入れを認められています。

 「特定技能」の在留資格が対象とされている特定産業分野は以下の14分野です。

 介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

 「特定技能」と「技能実習生」ではいくつか異なる点があります。主な違いは以下の通りです。

「技能実習生」と「特定技能」の違い

 「特定技能」の場合、技能実習制度にある監理団体という存在がありません。

 そのため、「特定技能」の在留資格で外国人を受け入れようとする企業は、自社で直接採用活動を行うか、あっせん機関を通して採用することになります。

 また、技能実習生は、受け入れ企業を本人の自由意思で変更することは原則認められていません。

 一方、特定技能外国人の場合は、同一業務区分内や試験による技能水準の共通性が確認されている業務区分の範囲内であれば、自分の意志で転職することが認められています。

 もう一つの大きな違いは、「特定技能」で外国人を採用する場合、受け入れ企業は以下の内容を確実に実施する義務がある点です。

  1. 採用した外国人との雇用契約を確実に履行すること
  2. 採用した外国人への支援を適切に実施すること(登録支援機関に委託することも可能)
  3. 出入国在留管理庁への各種届け出を行うこと(登録支援機関に委託することも可能)
特定技能外国人を受け入れる時の手順

 特定技能外国人を受け入れる場合、以下のような手順で進めることができます。

  1. 自社の業種および募集したい職種が特定技能の特定産業分野に指定されている14業種に該当することを確認。
  2. 募集人数、募集ルート(直接・人材紹介等)を検討・決定。
  3. 募集方法、選考方法を検討・決定。
  4. 受け入れ候補者の募集を開始。
  5. 受け入れ候補者の選考を開始。
  6. 受け入れ候補者の絞り込みと決定。
  7. 採用決定した外国人と雇用契約を結び、事前ガイダンス等を実施。
  8. 外国人の支援義務を自社対応するか登録支援機関に委託するかを検討・決定。
  9. 支援計画を作成し、特定技能の在留資格申請手続きを進める。
  10. 在留資格の認定を受けて査証の申請・発給を経て外国人が入国。
  11. 社内に受け入れて就労を開始。
  12. 就労開始後、必要なタイミングで出入国在留管理庁へ各種届出を行う。

 特定技能外国人の採用手順を考える上では、採用対象を国内にいる外国人に限定するか、海外からの応募も想定するかの検討も重要なポイントになります。

 たとえば、以前技能実習1号や2号で在留していた経験があり良好に課程を修了し、母国に帰国した外国人がいたとします。

 その外国人を、「特定技能」の同じ業種および職種のカテゴリで選考対象とする、という可能性もあります。

 この場合、母国に帰国済みの技能実習生に応募を打診する方法として、技能実習制度の監理団体に協力を依頼するなども考えられます。

 監理団体によっては、特定技能の登録支援機関として登録している団体もあり、技能実習制度での監理団体の役割とは異なる立場で、特定技能外国人の支援を行っている場合もあります。

 「特定技能」の在留資格で外国人を雇用したいときは、どのような点に注意して採用活動を進めればよいのでしょうか。

 先ほどの比較表に示されているとおり、まず、受け入れようとする外国人が14業種の中で自社の事業が該当する業種の業務区分において、一定の技能水準を満たしていることを試験によって証明する必要があります。

 さらに、N4レベルの能力を持っていることを日本語能力試験によって証明してもらわなければなりません。

 したがって、企業としては、まず「特定技能」が対応する14業種の中のどれかに自社の業種が該当していることの確認が必要でしょう。

 その上で、その業種の中のどの業務区分の仕事をしてもらう外国人を採用したいのかを明確にし、該当する外国人の選考・採用を実施することになります。

 自社の採用候補となる特定技能外国人を見つけるためのルートには、下図をご覧いただくとおわかりになるように、主に4つのパターンがあると考えられます。

就労開始までの流れ(出入国在留管理庁・新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組から引用)
  1. 海外から来日する外国人で、過去に技能実習2号を良好に修了した者
  2. 海外から来日する外国人で、新規入国予定の外国人
  3. 国内の中長期在留資格を持つ外国人で、技能実習2号を良好に修了した者
  4. 留学生など国内にいる中長期在留資格を持つ外国人

 このうち、1.と3.の外国人は、対象の業種および職種の区分が同じであれば試験(技能・日本語)が免除される可能性があります。

 2.と4.の外国人は、国外または日本国内で技能および日本語の能力試験を受けて合格してもらう必要があります。

 つまり、海外で候補者を探す場合と、既に国内にいる外国人を探す場合の両方に可能性があります。

 また、それぞれ、「技能実習生」として日本に在留したことがあり「技能実習2号」を良好な状態で修了した者に絞って探す方法と、そうでない者を探す方法を検討できます。

 特定技能外国人を採用するには、14業種の特定産業分野の区分に対応した技能試験と、日本語能力試験のN4レベル以上に合格していることが必要になります。

 この要件について気を付けておく必要があるのは、各業種区分に対応する技能試験実施日程は、業種によって頻度や開催地域が別々に発表され、実施される点です。

 また、日本語能力試験も年2回しか実施されません。採用候補の外国人がいたら早めに受験してもらい、N4レベル以上に合格してもらっておく必要があります。

 この点も意外と見逃しがちであるため、選考上の注意が必要です。

 技能実習生の受け入れを行う場合にかかる費用としては、以下のような項目が挙げられます。

  • 採用にかかる費用(紹介、もしくは自社募集):20万~80万円
  • 特定技能外国人の支援費用(登録支援機関への委託):2万~4万円/月
  • 入国渡航費:10万円
  • ビザ書類作成及び申請手数料:2万~10万円
  • 保険料:1万~2万円
  • 雇用後の労務管理費用:一般従業員と同等

 特定技能外国人に対する支援は、受け入れ企業が自ら実施するのが原則ではありますが、実施が難しい場合に登録支援機関に委託することが可能です。

登録支援機関とは、出入国在留管理庁に登録されている機関であり、登録時にそれぞれの支援の種類や内容、支援可能な言語などの情報と共に登録されています。

どのような機関があるのかは、こちらの出入国在留管理庁・登録支援機関登録簿で見ることができます。

 前述したように、過去に技能実習2号を良好な状態で修了し、母国に帰国した技能実習生は、特定技能外国人として受け入れる際の、有力な候補となる可能性があります。

 私が以前お世話になった行政書士事務所の案件で、技能実習生として以前日本に在留していたモンゴル人を特定技能で採用するための面談をしたことがあります。

 面接では日本語能力レベルと日本で仕事をすることについての意欲を確認するという主旨で行いました。

 採用企業にとっては、言葉の面も含めて日本での生活習慣に慣れていることが見込めることは、大きなメリットと感じているようでした。

 中長期的な経営戦略を効果的に展開していく手段の一つとして技能実習制度との違いを踏まえた特定技能外国人の採用を検討してみてはいかがでしょうか。