ふるさと納税が前年の3倍超 定期便×トレンドから生まれた新名物
島根県の中山間地域に位置する、人口約1万人の邑南町(おおなんちょう)。「日本一の子育て村構想」「A級グルメのまち」など多くの挑戦を続けています。今回は、自治体に蓄積したデータやトレンドに「まちを応援したい」という思いを掛け合わせて生まれた邑南町の「ふるさと納税」の新名物をご紹介します。
島根県の中山間地域に位置する、人口約1万人の邑南町(おおなんちょう)。「日本一の子育て村構想」「A級グルメのまち」など多くの挑戦を続けています。今回は、自治体に蓄積したデータやトレンドに「まちを応援したい」という思いを掛け合わせて生まれた邑南町の「ふるさと納税」の新名物をご紹介します。
ふるさと納税とは、都道府県、市区町村への「寄附」のことです。今は都会に住んでいる人でも、自分の意思でふるさとに納税できる制度があっても良いのではないかという問題提起からこの制度が始まりました。
多くの自治体は、ふるさと納税の納税者に返礼品を贈っていますが、2019年6月から改正地方税法で、以下のように定められています。
ふるさと納税の返礼品は地場産品に限られているなか、多くの自治体では、地元の事業者から返礼品を募集しています。返礼品に選ばれるには、事業者や返礼品の要件をクリアする必要があります。こうした要件をクリアして人気の返礼品となれば、全国への販路拡大と売上の向上にもつながることが期待できます。
島根県邑南町では2019年当時、町のファンを増やすため「楽天ふるさと納税」など、掲載先を増やし、ボリュームゾーンとなる1万円台の様々な商品開発を進めていました。しかし、もう一歩、納税額を伸ばす突破口となるような手法が見つからず悩んでいました。
こうしたなか、役場の担当部署および、ふるさと納税の運営事務局に話をじっくり聞いたところ、邑南町では、2019年9月末時点で、お米の定期便がよく選ばれていることがわかりました。
そして、もう一つのヒントは、百貨店にありました。
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三越伊勢丹など、百貨店では高額納税者向けに、ふるさと納税のサービスを提供しています。そこで、高額納税者向けの返礼品でも見せ方によっては選ばれる可能性があると考えました。
「高額商品x定期便」という組み合わせで、新名物となりうる選択肢を考えたとき、「食べて健康になる豚」を目指している邑南町の石見ポークの存在を思いついたのです。
とはいえ、高所得者の興味を引き、かつ、便益があるものにする必要があります。それならばと、「豚一頭の定期便」としてアイデアを提供したところ、豚肉を提供している有限会社ディブロの服部功さんをはじめ、皆が一体となり返礼品の商品開発がとんとん拍子に進みました。
取り組みを始めたのは11月と終盤戦。それでも、駆け込み需要の時期である12月には間に合い、35万円以上の寄付が必要な「豚一頭の定期便」に18件の寄付の申し込みがありました。そして、ディブロが提供する返礼品の寄付額のうち、約半分が「定期便」の寄付額となりました。
打ち合わせの当初は、1万円程度の寄付額の返礼品を充実させよう、という町役場・事務局の方針ではありましたが、「流れを変える」新名物を開発したことが突破口になりました。
その結果、同年の邑南町ふるさと納税の寄付額は、 初の1億円越えを達成し、 最終的には前年比で3倍以上の約1億7千万円となりました。
本当のターゲットはどこにいるのか、全体のトレンドはどこに向かってるのか、自身・自社の強みは何なのか。これらをもう一度、目線を変えて考え直すことによって、人口1万人のまちでも、「その他大勢」に埋もれない、魅力的な返礼品を生み、町外からのファンを増やすことができます。
また、事業者にとっても、ふるさと納税返礼品への出品プロセスにおいて、自治体が持っているデータや、おおなんビズのような中小企業支援施設のアイデアなど、まちの力を最大限に活かした新商品開発を進めることができます。
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