目次

  1. 輸入小麦の政府売渡価格とは
  2. 日本政府が輸入している外国産小麦の5銘柄
  3. 輸入小麦の政府売渡価格の推移
  4. 輸入小麦の値上げはなぜ?3つの理由
  5. 家計への影響
  6. ロシアのウクライナ侵攻、今後の影響は?
  7. 農水省の相談窓口

 日本で消費されている小麦粉の約9割は海外から輸入されています。輸入小麦は日本政府が買い付け、国内の製粉会社などに売り渡すしくみです。製粉会社は小麦粉に加工したうえで、パン・麺・菓子などをつくる食品メーカーに卸します。こうして最終的に消費者のもとに届けられます。

小麦の流通経路(農水省の公式サイトから引用)

 輸入小麦の政府売渡価格とは、過去の一定期間の輸入価格の平均値に、いくらかのマージンを上乗せした価格のことです。このマージン分は、政府管理経費や国内産小麦の生産振興対策に充てられています。

 輸入小麦の売渡価格は以前、年間を通じて固定価格でしたが、2007年4月からは国際相場の変動の影響を緩和するため、年2回、価格を改定することにし、直近6カ月間の平均買付価格をベースに計算されるようになりました。

 日本政府が輸入している外国産小麦は、次の5銘柄です。

  1. カナダ産ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)……おもにパン用
  2. アメリカ産ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)……おもにパン・中華麺用
  3. アメリカ産ハード・レッド・ウィンター(HRW)……おもにパン・中華麺用
  4. オーストラリア産スタンダード・ホワイト(ASW)……おもに日本麺用
  5. アメリカ産ウェスタン・ホワイト(WW) ……おもに菓子用
小麦の種類と用途(農水省の公式サイトから引用)

 2022年4月期の政府売渡価格は、1トンあたり7万2530円で2021年10月期と比べて17.3%の値上げとなりました。この水準は、2008年以来の高水準です。

 輸入小麦が大幅に値上げされた理由について、農林水産省は次の3つの理由を説明しています。

  1. 2021年夏の高温・乾燥による米国、カナダ産小麦の不作の影響が大きく、9月以降も小麦の国際価格が高水準で推移した
  2. 米国、カナダ、豪州の日本向け産地における品質低下などにより、日本が求める高品質小麦の調達価格帯が上昇した
  3. ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢等の供給懸念も、小麦の国際価格の上昇につながったことから、前期に比べ上昇した

 農林水産省の試算では、2022年4月期の政府売渡価格の改定が食品の小売価格に与える影響は次の通りです。

  • 食パンは1.5%(1斤当たり2.6円程度)増
  • 中華そば(外食)は0.2%(1杯当たり1円程度)増
  • 小麦粉は4.4%(1kg当たり12.1円程度)増

 ロシアが2022年2月、ウクライナに侵攻したのをきっかけに、アメリカ・シカゴ商品取引所で小麦の先物価格が一時、2012年以来の高値を記録しました。2012年はアメリカでの高温・乾燥による不作が原因でした。

 ロシアとウクライナは、日本政府の輸入小麦の銘柄には入っていないものの、いずれも小麦の生産・輸出主要国のため、今後の市場価格に影響が続きそうです。

 この状況について、岸田首相は4月26日の記者会見で次のように話しました。「ウクライナ情勢で、国際価格は1割以上、足元で上昇していますが、9月までの間、政府の販売価格を急騰する前の水準に据え置きます。合わせて輸入小麦から国産の米や米粉、国産小麦への切り替えを支援いたします」

 国連食糧農業機関の2020年の統計データ「FAO STAT」によると、小麦の主要輸出国は次の通りです。

輸出国 輸出量
ロシア 3726万7014t
アメリカ 2613万1626t
カナダ 2611万509t
フランス 1979万2597t
ウクライナ 1805万5673t
オーストラリア 1040万418t
アルゼンチン 1019万6931t

 農水省は、専用の相談窓口を設置しました。次のようなことを相談できます。

  • 国際相場の動向や価格改定理由の説明、関連資料の提供
  • 小麦関連製品の小売価格に関する相談
  • 原料小麦の安定供給の確保に関する相談

 電話:03-6744-1253(直通)または、農水省のサイト内の問い合わせ窓口で受け付けています。