目次

  1. パーパスとは?
  2. パーパスが注目されている理由
    1. サステナビリティへの意識の高まり
    2. モノのコモディティ化
  3. パーパスを軸にした経営を行うときのポイント
    1. 自社のパーパスを明確にする
    2. パーパスステートメントを作る
    3. パーパスステートメントを実行する
  4. パーパスの事例
    1. パタゴニアという会社
    2. 全売上の1%を地球のために寄付
    3. 原材料も「地球にやさしいもの」を
    4. パーパスに共感する人が続々と合流
    5. パーパスは消費者へ訴求も
  5. プロフィットよりもパーパスによる経営を

 パーパス(Purpose)とは、オックスフォード英語辞書によると、「何かがなされるか創造される、または何かが存在するための理由」です。

 また、カリフォルニア大学バークレー校グレーター・グッド・サイエンス・センターは、パーパスを「意味があり、かつ世界にとってもポジティブな印(しるし)を残す長期的なゴールを達成するための永続的な意思」(参考:What Is Purpose?│Greater Good Science Center)であると定義しています。

 パーパスとは単なる存在理由(Reason)や活動の動機(Motive)ではなく、何らかの価値や意味を生み出すための個人や組織の意思であると言っていいでしょう。

 カリフォルニア大学バークレー校グレーター・グッド・サイエンス・センターは、パーパスについてさらに、「パーパスとは幸せと同様、最終目的ではありません。パーパスとは旅であり行動です。パーパスは年齢に関係なく、自分がなりたい自分になろうという強い意志です」(同上)と説明しています。

 パーパスは最近、ビジネスシーンでも注目されています。

 ビジネスにおけるパーパスは、ミッションとほぼ同じです。ビジョンやバリューを実現するためにパーパスやミッションがあり、そのための手段として戦略があります。

 換言すれば、企業が、主に社会の中で何らかの価値(バリュー)や何らかの姿(ビジョン)を実現するためには、意思(パーパス)を持つことが重要、とされてきているのです。

 欧米のビジネスシーンにおいては、Purpose based management(パーパスをベースにした経営)や、Purpose driven business(パーパスを原動力としたビジネス)などのタームで用いられています。

 また近年、日本でもパーパス経営と呼ばれる言葉が登場してきています。

 パーパス経営とは、一橋大学ビジネススクールの名和高司先生が発案したコンセプトで、企業の内部から生まれてくる強い思いや意思をベースにした経営手法のことです。

 これまでの企業経営に多く用いられてきたビジョンやミッションを外発的なものと位置づけ、より内発的なパーパスをドライバーとしたマネジメントスキームとなります。

 上述の、Purpose driven businessと似たコンセプトです。

 では、最近パーパスがビジネスシーンで注目されている理由は何でしょうか。

 それには、「サステナビリティへの意識の高まり」「モノのコモディティ化」という2つの社会変化が考えられます。

 今、地球温暖化や環境破壊などの問題意識が高まり、その反動としてサステナビリティへの意識が高まっています。これは、従来の大量生産大量消費を前提とした経済を否定するものでもあります。

 モノを単に安く作り、大量に販売するというビジネスモデルが、社会全体でこれ以上受け入れられなくなってきているのでしょう。

 そのため、サーキュラーエコノミー(循環型経済)実現のための要素として、企業にパーパスを求める機運が高じていると考えます。

 モノのコモディティ化とは、高付加価値製品が競争や類似製品の登場などにより一般化し、結果的にどの製品も似たようなものになってしまう現象のことです。

 今や多くのモノがコモディティ化し、差別化が困難になってきています。企業は製品のデザインや機能で差別化をしようとするものの、すぐに真似されて陳腐化してしまいます。

 そうした中、強固なパーパスを持った企業が抜きんでて、独自のポジションを得つつあります。

 経営面でパーパスが注目されているのも、特にこうした事情が関係しているのでしょう。

 パーパスは、何らかの価値を生み出す意思であり、従来のビジネスに対するセオリーが通用しなくなりつつある今の社会において、企業が生き抜くのに重要な考え方となってきています。

 パーパスを軸にした経営を行うときには、次のようなポイントに気をつける必要があります。

  1. 自社のパーパスを明確にする
  2. パーパスステートメントを作る
  3. パーパスステートメントを実行する 

 第一のポイントは自社のパーパスを明確にすることです。

 当然ながら、パーパスを明確にせずにパーパスを軸にした経営はできません。では、どうすればパーパスを明確にできるでしょうか。

 上に「パーパスとは単なる存在理由(Reason)や活動の動機(Motive)ではなく、何らかの価値や意味を生み出すための個人や組織の意思」であり、「企業が、主に社会の中で何らかの価値(バリュー)や何らかの姿(ビジョン)を実現するためには、意思(パーパス)を持つことが重要」と書きました。

 これに照らして考えると、はじめに問われるべき問いは「あなたの会社は、社会に対してどのような価値や意味を生み出そうとしているのか」になるでしょう。

 この問いに答えることが、すなわち自社のパーパスを明確にすることにつながります。

 例えば、大手民泊サイトのエアビーアンドビーは、自社のパーパスを「誰でもどこででも属すことが出来る世界を作り上げること」と定義しています。

 パーパスが明確になったら、パーパスステートメントを作ることも重要なポイントです。

 パーパスステートメントとは、パーパスを具体的な言葉にしてまとめたステートメント(声明)のことです。多くのアメリカの企業は、パーパスステートメントを「我々のパーパスは……」という書き出しで始めています。

 パーパスステートメントを作成する際は、わかりやすくシンプルなセンテンスにまとめましょう。どんなパーパスを持っているのかが一読で伝わるように、冗長なステートメントやわかりにくいステートメントにしないことが大切です。

 ところで、経営の現場ではミッションステートメントも多く使われていますが、ミッションステートメントとパーパスステートメントとは違うものなのでしょうか。

 筆者は、両者は明確に区分できるものではなく、ニアリーイコールの関係にあると考えています。

 アメリカでも、両者は往々にして混同されているように思われます。

 あえて言うと、ミッションステートメントが「何を行うのか」に主軸を置いている一方、パーパスステートメントは「何を目指しているのか」に主軸を置いているように感じています。

 そして、「何を目指しているのか」の方が、現代においてはより強く求められているような気がしています。

 出来上がったパーパスステートメントを実行することも重要なポイントです。

 それには、まず社長自身がパーパスステートメントの最高の信奉者となり、パーパスの実現のためには何をしなければならないかを常に熟考する必要があります。

 そのうえで、率先垂範してパーパスステートメントを実行することです。

 例えば、パーパスステートメントが「低所得世帯の小学生の子供たちに低価格のオンライン学習塾を提供し、子供たちの学力を向上させて格差社会の解消を目指す」であれば、そのための組織づくり、システム、人材の確保、資金調達等々、社長が率先して動く必要があります。

 さらに、評価制度や給与体系などをパーパスステートメントの実行程度や結果に合わせて整備するなども、社長の重要な仕事になるでしょう。

 パーパスステートメントの実行程度や結果を見るためには、あらかじめKPI(Key Performance Indicator)を設定しておく必要があります。

 上述の例においては、受講者数、受講者の学力、合格率、授業満足度などが考えられます。

 会社とパーパスステートメントに直接関係する領域でKPIを設定する必要があります。

 特に中小企業においては、社長がいかにパーパスステートメントの強固な実践者になれるかがパーパス実現にとって重要です。

 では、パーパスを軸にした経営を実践している会社として、アメリカのパタゴニアをご紹介します。

 パタゴニアは、1973年に著名ロッククライマーのイヴォン・シェイナード氏が設立したアパレル会社です。

 カリフォルニア州ベンチュラにオープンさせた一号店を皮切りに、今日までに海外を含む105の店舗を運営しています。取扱品の多くはアウトドア系・スポーツ系アパレルブランドで、バックパックやスリーピングバッグなどのアウトドアグッズなども販売しています。

 そのパタゴニアですが、パーパスは至ってシンプルで、「パタゴニアは、我が故郷地球を救うためにビジネスを行う」です。パタゴニアは、そのパーパス実現のために数々の活動を展開しています。

 パタゴニアが行っている活動の中で最も有名なのが売上からの寄付です。パタゴニアは、全売上の1%を地球のために寄付しています。

 寄付先はパタゴニア創業者イヴォン・シェイナード氏が設立した非営利環境保護団体の「地球のための1%」で、「地球のための1%」は集めた寄付金を世界中の「サステナビリティに特化したNPO」に再寄付しています。

 再寄付先は「気候変動」「環境教育」「食料問題」といった、現在の地球において最も重要な課題に合わせて選んでいます。

 パタゴニアはまた、ホリデーシーズンのセールの売上1000万ドル(約11億4000万円)や、特別減税で手にした税金還付金1000万ドルも、気候変動問題解決を目指す研究団体などへ寄付しています。

 パタゴニアはさらに、原材料も「地球にやさしいもの」を使っています。

 2005年にアメリカの動物保護団体にミュールシング(子羊の臀部の一部を切り取る行為。残酷を理由に動物保護団体などから非難されている)ウールを原材料に使っていると非難されると、直ちに行動を起こし、ノンミュールシングウールへと切り替えています。

 さらに、2016年には原材料となる動物の取扱い、土壌利用方法、サステナビリティ確保に関する基本原則を定め、実行しています。

 パタゴニアの強固なパーパスと、それを実現するための数々の活動に対し、共感する人が続々と合流しています。

 パタゴニアの取締役コーリー・ケンニャ氏によると、パタゴニアに応募してくるすべての求職者が「地球を救う」というパタゴニアのパーパスに共鳴しているそうです。

 そして、パタゴニアの社員全員が「パーパス実現のための一部であると感じており、パーパスが会社の方向性を示す北極星であると考えている」と説明しています。

 パタゴニアの社員の中には、地元を流れる川に生息する絶滅危惧種の魚を救うために、自ら市役所へ出向いて陳情する人すらいるそうです。

 パタゴニアの強固なパーパスはまた、消費者へも訴求しています。

 パタゴニアはリピート客が多いことで知られており、実際多くの「パタゴニア信者」が定期的にショッピングし、パタゴニアに売上をもたらしています。

 パタゴニアのパーパスは、経営者、従業員、消費者、生産者で構成される、ひとつのコミュニティを形成する共通の価値観となっているのです。

 大手監査法人PwCが行った調査によると、アメリカの経営者の79%が、企業のパーパスが成功のための中核的要素であると答えています(参考:Purpose-Driven Companies Evolve Faster Than Others│Forbes)。

 アメリカの経営者の多くが、消費者がプロフィット追求を目指す会社よりも、パーパスを軸にした会社の方を選ぶ時代になったと感じているのでしょう。

 このパラダイムシフトは、間違いなく日本へも押し寄せてくるでしょう。日本の会社も同様に、パーパスを軸にした経営を実践する必要がありそうです。