Amazon出店成功の秘訣 費用や審査、楽天市場との比較も紹介
「自社製品をAmazonに出店して販路を拡大したいが、どうすればうまく売り上げを伸ばせるのか?」「出店費用や手続きは?」中小企業がAmazon出店する時の疑問を解決し、ECでの売上を伸ばすコツについて「Amazon出店の王道」の著者・及川謙一さんに聞きました。
「自社製品をAmazonに出店して販路を拡大したいが、どうすればうまく売り上げを伸ばせるのか?」「出店費用や手続きは?」中小企業がAmazon出店する時の疑問を解決し、ECでの売上を伸ばすコツについて「Amazon出店の王道」の著者・及川謙一さんに聞きました。
目次
Amazonなどのオンラインショッピングサイトへの出店で、気になるのが出店料や販売手数料。費用をそれほどかけずとも、自社のオンラインショッピングサイトを作る事ができるShopifyなどのプラットフォームもある中、Amazonに出店するメリットは何でしょうか?
「中小企業がオンラインに販路を広げる手始めには、Amazonがおすすめ」と言う及川さん。その理由を次の様に説明します。
国内のオンラインショッピングサイトの中で集客力が上位3位のAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングを比較すると、ここ数年は、Amazonと楽天市場の2社が月間の視聴者数5000万人前後を推移しており、ほぼ同列でトップの集客力があります。
こうした集客力の高いサイトへ出店し、ユーザーに上手く自社の商品を知ってもらう事が出来れば、効率の良い集客が出来ます。
オンラインショッピングサイトに出店せずとも、「Shopify」などの手頃なサービスを利用して、自社のオンラインストアを開設する方法もありますが、その場合は集客を全て自社の力で行わなければなりません。
オンラインストアの存在を知ってもらうために、大きな広告予算とマーケティングの専門知識が必要となり、多くの中小企業にとってはハードルの高い選択肢と言えます。
↓ここから続き
いずれも集客力の高い楽天市場とAmazon。そのどちらに出店するかを検討する際に、参考にしたいのが費用です。
Amazonに出店する際、手始めに支払う必要がある費用は4900円(=大口出店の月額出店料)のみ。それに対し、楽天市場は最低でも出店当初に29万4000円(=初期費用6万円+月額出店料1万9500円の1年分一括払い)の支払いが発生します。
一方で販売手数料はAmazonが8〜15%、楽天市場が2〜7%。つまり売り上げが順調に伸びれば、販売手数料の低い楽天市場の方が、費用を安く抑えられる可能性があります。
及川さんは、売り上げの少ない最初のうちはまずAmazonを利用し、商品の知名度が上がれば、楽天市場の利用も検討する事を勧めています。
初期費用 | 出店料・利用料(月額) | 販売手数料 | 集客力(月間の視聴者) | |
---|---|---|---|---|
Amazon | 無料 | 大口出品:4900円 小口出品:無料 |
8〜15% ※Amazonデバイスアクセサリのみ45% ※小口出品の場合、販売手数料に追加で基本成約料1件100円 |
5120万人 |
楽天市場 | 6万円 | 1万9500円〜10万円※利用開始時に半年〜1年分の一括払 | 2~7% | 5370万人 |
Yahoo!ショッピング | 無料 | 無料 | 無料※成約ごとにポイント原資の設定や決済手数料などが別途必要 | 2557万人 |
※集客力(月間の視聴者)は、ニールセン デジタルのオンラインショッピングのサービス利用状況、2021年4月のMonthly Totalレポートの数字を引用。
楽天市場では商品ページに、自社で独自のバナーをデザインして貼り付ける必要があり、ある程度のデザイン技術が必要になります。
一方、Amazonの商品ページは一定のフォーマットに文章と写真を入れ込むスタイルで、自社にデザイナーがいない場合でも、デザインの質によって競合他社に見劣りする心配がありません。
Amazonと楽天市場はいずれも、「モール型ECサイト」と呼ばれています。その中でAmazonは「マーケットプレイス型」、楽天市場は「テナント型」に分類されます。
運営方法などに様々な違いがありますが、ここで注目したいのが、ユーザーがサイト内で商品を検索した際の、検索結果の見え方の違いです。
楽天市場(テナント型)では、キーワードを入れて検索した結果に、全く同じ一つの商品が同じページ内にずらりと並ぶ傾向があります。これは同一の商品について、A社が出品したもの、B社が出品したもの、C社が出品したもの…と言ったように、様々な企業による出品が全て表示されている状態です。
消費者は同じ商品に関して、それぞれの出品者が提示する価格や条件を把握し、その中から一番良いものを探し出す必要があります。
一方で、Amazon(マーケットプレイス型)の検索結果には、入力したキーワードに関連する多種多様の商品が並び、その中から欲しい商品をシンプルに探す事が出来ます。
これは、同一の商品に関してAmazonが、価格、出品者の信頼度、売れ行きなどの独自の基準で評価をし、一番評価の良い出品者の商品だけを表示する仕組みを取っているからです。Amazonは、消費者側から見て商品を探しやすいウェブサイトである一方、企業側からしても、商品を見つけてもらいやすいウェブサイトであると言えます。
出店前に考えておきたいのが、自社商品にAmazon内で売り上げを伸ばす事ができるポテンシャルがあるのかどうかという点。及川さんは、Amazonでの出品に向いている商品の特徴を次の3つで説明します。
数十万円もする高額なアート作品や伝統工芸品などは、実際に手にとって購入を決めたい人が多く、オンラインでは購入のハードルが高くなります。
同一品や類似品がすでにAmazonで販売されている場合は、必然的に価格競争となります。大企業の様に大量に仕入れをする事ができない中小企業には、適していません。
全国的に有名でなくても、その地域や業界では知名度のある商品は、Amazonに出店して多くの人の目に触れた途端、ヒットを飛ばす事ができる可能性を秘めています。例えば地元の銘菓や、地方の職人が作る刃物などが考えられます。
これから商品を開発する場合には、例えば自社工場で独自の技術を生かして作るインテリアの置物など、オリジナリティがありコアなファンがつきそうな商品を考案しましょう。
その他、Amazonには、ペットなどの出品が禁止されている商品、酒やタバコなどの出品に制限のある商品もあります。事前にAmazonの公式サイトの「制限対象商品」で確認しましょう。
契約プランは大口出品と小口出品の2種類あり、費用は以下の表の通りです。及川さんが中小企業にすすめているのは大口出店。小口出品では既にAmazonで販売されている商品と同一品でなければ販売できない上、月間の商品販売数や広告機能などに制限があるためです。
大口出品 | 小口出品 | |
---|---|---|
月額費用 | 4900円 | 0円 |
基本成約料 | 0円 | 1件100円 |
販売手数料 | 8~15% | 8~15% |
カテゴリー成約料 | 0~140円 | 0~140円 |
※カテゴリー成約料は、本やDVDなどの特定のカテゴリーで販売した場合にのみ発生
Amazonの大口出店の手続きは、簡単な4ステップで完了します。楽天市場では「商品の売り上げがある程度見込めるか」などの審査基準をクリアする必要があります。
一方、Amazonでは登録した情報に間違いや不正が無ければ、審査は比較的スムーズです。
登録するメールアドレスには、出店後の受注情報なども送られてくるため、ほかのメールに埋もれて見逃さないよう、Amazon出店専用のメールアドレスを作成して登録しましょう。Amazonの公式サイトの「Amazon出品用アカウント登録手順」から登録できます。
個人情報および企業情報を入力し、パスポートや運転免許証などの身分証明書、クレジットカードの利用明細書などの必要書類を提出しましょう。
審査は2営業日以内に完了します。例えば引っ越しで、身分証明書に記載された住所と現住所に相違がある場合などには、再審査となります。
審査が完了すれば、すぐに出品する事が出来ます。ただし、一部には出品許可が必要な商品があり、その場合には出品前に書類審査などが必要となります。詳しくは、Amazonの公式サイトを確認してください。
どんなに良い商品であっても、Amazonのサイト内でターゲットとなるユーザーにアピール出来なければ、売り上げは一向に伸びません。上手く自社の商品の魅力を伝え、売り上げを伸ばす方法を及川さんは次のように解説します。
消費者が欲しい商品をキーワードで検索した際に表示される「検索結果ページ」。その上位に自社の商品が表示されれば、消費者の目に止まる確率が上がり、売り上げが向上します。
そのためには、まず検索に使われるキーワードを正しく認識します。次にそれを商品登録時の検索キーワードとして設定する事はもちろん、商品ページに記載する文章の各所に入れ込む必要があります。これは基本でありながら見落としがちなポイントで、この点を見直すだけで、売り上げの伸びる企業は多いと言います。
メインキーワード:
基本的にはその商品のカテゴリー名がメインキーワードとなります。消費者は、自分の欲しい商品が完全に絞り込めていない場合が多く、商品のカテゴリー名を入力して商品を検索します。
例えば「スニーカー」を探している場合。キーワードとして、ブランド名や商品名を具体的に入力して検索する人よりも、「スニーカー」と商品のカテゴリー名を入力してどんな商品があるのかを見る人が大多数です。そのため、「スニーカー」というメインキーワードを、商品名などに入れておく事が非常に重要です。
サブキーワード:
商品を絞り込むために、メインキーワードと共に検索に使用する言葉がサブキーワードです。実際に消費者の立場に立って、検索欄にキーワードを入れてみましょう。
例えばメインキーワードとして「スニーカー」と入力すると、それと掛け合わせて検索されるであろう「メンズ」や「白」などのサブキーワードの候補が、下記のように表示されます。ここから自社の商品に該当するものを拾います。
それでは、「SteelSeries ゲーミングマウス 無線 ワイヤレス 2.4Ghz/Bluetooth USB-C高速充電対応 超軽量 IP54規格 防水 防塵 3ゾーンRGBイルミネーション Aerox 3 Wireless 62604」を例に、各項目でどのような情報を盛り込むべきかを図とともに紹介します。
商品名:
ブランド名の次に、商品カテゴリー名となるメインキーワードを入れましょう。加えて、消費者が商品の内容を把握しやすい様に、なるべく簡潔にスペック情報などを入れます。
商品仕様および商品説明:
メインキーワードとサブキーワードを全て入れると同時に、商品の内容が正確にイメージできる様な詳しいスペック情報や丁寧な説明文を心がけましょう。購入者が商品ページを見て持った印象と、実際に商品を受け取った際の印象に相違を感じる場合、「期待外れ」などと言った評価の低いカスタマーレビューに繋がりますので、注意が必要です。商品仕様と商品説明の内容は同じで構いません。
メーカーより:
画像をメインとしたデザインの仕様ですが、わずかながら文字を入力する箇所もあります。ここにもメインとサブのキーワードをしっかり入れ込みましょう。
Amazonの商品ページはフォーマットが統一されており、デザインの自由度が低い分、掲載する写真の質が重要です。メイン画像は白抜きのシンプルな画像と決められていますが、サブ画像には、実際に商品を使用しているところをイメージできる写真や、思わず食べたくなる美味しそうな写真など、ユーザーの目を引く画像を掲載しましょう。
及川さんが過去にコンサルティングを担当した、女性向けのハンドバックなどを販売するメーカーでは、商品ページの文章の改善とともに、商品のサブ画像をいわゆる“インスタ映え”するような着用イメージの画像へと一新。すると徐々に売り上げが上昇し、売れ筋ランキングで1位を獲得する商品も出てきたと言います。
同じ様な条件の商品の場合、消費者はより早く受け取れる方を選びます。受注即日から2営業日以内の発送を目指しましょう。
Amazonでは一部冷蔵が必要な商品などを除いて、Amazonの倉庫に発送を委託できるシステム「FBA(Fulfillment by Amazon)」があり、1商品につき290〜5625円(サイズや重さにより変動)で利用できます。及川さんは、価格、スピード、信頼性などを総合的に見て、利用する価値の高いサービスであると推奨しています。
ここまでの基本が出来て初めて、値引きキャンペーンや広告を検討しましょう。ただし、キャンペーン実施時には、既にある程度良いカスタマーレビューがついていることも、購買意欲を後押しする上で重要な要素です。カスタマーレビューに関しては、Amazon の選んだユーザーにレビューを書いてもらえるAmazon Vineというプログラムがありますので、利用を検討すると良いでしょう。
素晴らしい製品を開発しているにも関わらず、オンライン販売への取り組み方が分からず、二の足を踏んでしまう中小企業は数多くあります。及川さんは「Amazonを利用すれば、大きな初期投資をせずとも、小さく始めて徐々に育てていく事が出来ます。オンラインへの販路拡大の最初の一歩を踏み出すきっかけとなれば」と話しています。
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。