ビューゴールドプラスカードが異例の高還元率に JR東日本が刷新した背景は?
かつて“キャッシュレス後進国”と言われた日本。近年はクレジットカードや電子マネーの利用が進み、「どのカードがお得?」「ポイント還元率は?」といった会話も日常の風景になりました。業界を30年以上取材してきた岩田昭男さんが、“キャッシュレス狂騒曲”を冷静に見つめ、利点や問題点を分析します。
かつて“キャッシュレス後進国”と言われた日本。近年はクレジットカードや電子マネーの利用が進み、「どのカードがお得?」「ポイント還元率は?」といった会話も日常の風景になりました。業界を30年以上取材してきた岩田昭男さんが、“キャッシュレス狂騒曲”を冷静に見つめ、利点や問題点を分析します。
JR東日本系の「ビューゴールドプラスカード」が7月に大幅リニューアルを行い、各方面に衝撃を与えています。
みんなが驚いたのは、それまで1.5%だったポイント還元率が8%に引き上げられ、別の条件を満たすと付与される2%と合わせ、最大10%の還元を得られるようになった点です(JR東日本の共通ポイントであるJRE POINTがたまります)。
今どき8〜10%のポイントを付与するカード会社は珍しく、注目を集めたのです。
JRE POINTはSuicaにチャージして使えるので使い勝手も良いです。
ただ、全ての買い物が高還元になるわけではなく、以下2つのいずれかに該当する必要があります。
さらに、どちらの場合も鉄道利用で2%のJRE POINTが上乗せされ、合計で最大10%となるわけです。
このほかにモバイルSuicaでの定期券購入で4%、オートチャージやチャージで1.5%付きます。
いずれも鉄道利用で2%が上乗せされると、それぞれ合計6%と3.5%になります。
条件面が少し厳しいとはいえ、1.5%しかたまらなかったものが最大10%、少なくとも3.5%たまるようになります。
このカードで「ポイ活」をするなら、大変役立つでしょう。
ビューゴールドプラスカードは、入会キャンペーンやボーナスポイントも多彩です。
うまく利用すれば、切符購入やオートチャージでたまるポイントと合わせ、1万1000円の年会費分はすぐに元が取れるでしょう。
まず、毎年5000ポイントをもらえるチャンスがあります。
具体的には、新規入会時は初年度の年会費を払うと、2年目以降は年間100万円以上カードを利用すると5000ポイントもらえます。
これに加え、年間利用額に応じたボーナスポイントをもらえます。
年間70万円利用で1500ポイント、100万円利用で3500ポイントなどとなっています。
つまり、毎年100万円以上利用する人なら基本の5000ポイントに3500ポイントが上乗せされ、合計8500ポイントもらえます。
これだけで年会費の3分の2以上をカバーできます。
それにしても、JR東日本はなぜ今リニューアルを行ったのでしょうか。
おそらく、コロナ禍で旅客鉄道の収入が大幅に落ち込み、この苦境を打開するためサービス改善を図ったのでしょう。
その際、目標にしたのがNTTドコモの「dカード GOLD」だったと私は見ています。
ドコモとJR東日本はどちらももともと国策会社(電電公社と国鉄)で、発行するカードも似たものになりがちです。
ところが、ドコモのdカード GOLDは大成功する一方、ビューゴールドプラスカードはいま一つパッとしません。
そこで何とか追いつこうとしたのではないでしょうか。
dカード GOLDは2015年に誕生しました。
ドコモユーザーがスマホ料金を支払うと10%の高還元が得られるため、人気が出ました。
ドコモの発表資料によると、毎年100万人単位で会員が増え、2021年4月には800万人を突破していますから、おばけのようなカードです。
年会費1万円のカードが毎年100万枚ずつ増えると、年会費収入だけでも年100億円です。
それが毎年積み上がっていくわけですから、ドコモにとってはまさにドル箱です。
ドコモとしては、主力事業である携帯電話の料金支払いを10%という高還元で優遇したわけです。
これなら誰だって利用したくなります。
うまいスキームを考えたものです。
そして今度はJR東日本が、主力事業である切符販売で8%の高還元を提供するサービスを始めたわけです。
グリーン券販売でもモバイルSuica利用者に8%のインセンティブをつけました。
利用者の多い鉄道サービスでビューゴールドプラスカードの会員を増やし、クレジットカード事業の収益増を図ろうとしているようです。
ただし、「えきねっと、もしくはモバイルSuicaでの購入」という条件が弱みにならないか、少し心配です。
えきねっとは難しそうと感じる人もいそうですし、モバイルSuicaも誰もが持っているわけではありません。
この条件が人々に受け入れられるかどうかがポイントでしょう。
以上が今回のリニューアルの概要です。
個人的にいいなと思うのは、モバイルSuicaへのチャージで3.5%還元される点です。
私もSuicaをオートチャージ設定で使っています。
例えば残高が1000円を下回ると3000円チャージされるという設定にしていると、どんどんポイントがたまります。
付与ポイントは従来の1.5%から3.5%に上がりますから見逃せません。
多くの人が関心を寄せれば、このリニューアルは盛り上がり、成功するでしょう。
それを期待したいと思います。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年7月29日に公開した記事を転載しました)
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