道徳でも精神論でもない。1年の締めくくりに「周りの人にお礼を言う」べき理由
「在宅勤務だと怠けてしまう」「新しく配属されたチームで、同僚とうまくやるにはどうすればいいの」「やるべきことを先延ばしする癖を直したい」――。そんな悩みを抱える若手ビジネスパーソンに向けて、行動習慣コンサルタントの冨山真由さんが、仕事と人間関係に役立つ習慣づくりのコツをお伝えします。
「在宅勤務だと怠けてしまう」「新しく配属されたチームで、同僚とうまくやるにはどうすればいいの」「やるべきことを先延ばしする癖を直したい」――。そんな悩みを抱える若手ビジネスパーソンに向けて、行動習慣コンサルタントの冨山真由さんが、仕事と人間関係に役立つ習慣づくりのコツをお伝えします。
こんにちは。
行動習慣コンサルタントの冨山です。
もうすぐ新しい年が始まりますね。
前回の記事で「今年1年間のあなたの行動を振り返り、それが成果につながるものだったか検証しましょう」というお話をしました。
あなたはもう、2021年の振り返りを実践されましたか?
「行動の振り返り」という習慣、来年はぜひ身につけていただきたいと思います!
そして、振り返りの際に、もう1つ実践していただきたいことがあります。
それは「今年1年間、自分に関わった人へ感謝する」ということ。
「突然、道徳的、精神論的な話になった?」なんて思われるかもしれませんが、実はこれもセルフマネジメントのスキルの1つです。
脳科学の世界では、人間は“自分のため”より“大切な人のため”に動く時の方が大きな力を発揮する、と考えられています。
そして、周りの人へ感謝することで「その人々は自分にとって大切な人である」という思いが強化されるわけです。
つまり、周りの人への感謝は、あなたの能力を最大限に引き出す装置になります。
例えば「日曜の夜は明日からの仕事を考えて憂鬱(ゆううつ)になる」なんて話はよく聞きますよね。
そんな時は、先週1週間の自分を振り返り、一緒に仕事をした仲間、サポートしてくれた家族や友人に対して感謝の気持ちを持つようにするのです。
すると「周りの人を(自分の力によって)喜ばせたい」という思いが強まり、月曜からの仕事に対するモチベーションも自然と高まります。
年末に今年1年を振り返り、周りの人に感謝すること――。
それはあなたの背中を押し、あなたが来年活躍するための大きな糧になります。
周りの人への感謝は、あなたの行動するモチベーションを高めるだけでなく、他にも良いことがあります。
それは「周りに感謝することで、あなた自身が周りから感謝される」ということです。
「返報性の法則」という心理学用語を聞いたことがあるでしょうか?
簡単に言えば、人間は相手から何かをしてもらったら、それに対して“お返し”をしたくなる、という心理のことです。
相手が自分に親切にしてくれたら自分もその人に親切にしたくなる、悪口を言われたら嫌いになる、といった感じですね。
人と人の関係は、まさに返報性の法則で成り立っていると言ってもいいでしょう。
同じように、感謝の気持ちも、お返ししたくなるものです。
あなたが人に感謝することで、相手もあなたへ感謝の気持ちを抱くようになります。
もちろん「心の中で感謝しているだけ」ではうまくいきません。
感謝は行動として示さなければ、相手に届きませんからね。
行動として示すことは難しくありません。
「私はあなたに感謝しています」を示す極めて簡単な行動、それは「お礼を言う」ということです。
「ありがとうございます!」「助かりました!」「〇〇さんのおかげだよ!」といった簡単な一言を相手に対して発する。
とてもシンプルですよね。
でも、そんなシンプルな行動も、日常の中ではないがしろにされがちです。
「別に言葉にしなくても感謝しているから」「言わなくても相手は分かっているだろう」「小さなことでいちいちお礼を言うのは面倒」なんて思っていませんか?
繰り返しになりますが、ここで言いたいのは道徳的なことや精神論的なことではありません。
あなたが周りから感謝される人になるためのセルフマネジメントのスキルとして、「お礼を言う」をぜひ実践していただきたいのです。
私の専門分野である行動科学マネジメントでは、人が与えることのできる「報酬」には、金銭的報酬と非金銭的報酬の2種類があるとされています。
金銭的報酬とは、文字通り、お金にまつわるもの。
給与やボーナス、高価な物品などといった報酬ですね。
非金銭的報酬とは、自分が目標を達成したことで得る達成感、自己効力感などを指し、人を動かす報酬になり得ます。
「ありがとう」などの感謝の言葉をもらうことも、大きな非金銭的報酬の1つです(言語報酬といいます)。
「あなたに感謝している」という思いが相手に伝わると、相手の「人に認められたいという欲求」、つまり承認欲求を満たします。
これが大きな報酬となるわけですね。
感謝の言葉だけでなく、例えば名前を呼ばれるだけでも、人は承認欲求が満たされます。
承認欲求には「結果承認欲求」「行動承認欲求」「存在承認欲求」の3種類があります。
結果承認欲求とは、自分の成果(例えば業績や成績)などを認められたいというもの。
行動承認欲求とは、自分がとった行動を認められたいというもの。
そして存在承認欲求とは、自分の存在そのものを認められたいというもの。
「〇〇君、おはよう」と、相手が自分の名前を呼んでくれた――。
実はそんなささいなことさえ「報酬」となるんです。
感謝の気持ちを言葉にして伝えることでギフトになり、それが返ってきます。
来年は「ありがとう」の習慣もぜひ身につけていただきたいですね。
周りの人に感謝して1年を締めくくる際にもう1つ、忘れてはならないことがあります。
それは「自分自身にも感謝する」ことです。
コロナ禍でビジネスや生活のスタイルが大きく変わった世の中で、1年がんばった自分の心と体を「よくやったね!」とねぎらいましょう。
そして自分に「ありがとう!」の言葉をかけてあげる、つまり自分への報酬、ごほうびを与えて、背中を押すんです。
この時のポイントは、それがたとえ自分自身への言葉であっても、実際に声に出す、ということ。
これは専門的には「言語プロンプト」という手法です。
実際に出した声を耳で聞くことで、自分の脳がそのことをより認識する効果があります。
1年を振り返ると、反省点がいくつも見つかるかもしれません。
もちろん私だってそうです。
でも、最後はあなた自身に、そして周りの人に「1年間ありがとう」を!
2022年、新しい時代を生きていくあなたが、より大きな達成感や自己効力感に満たされますように!
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で年12月28日に公開した記事を転載しました)
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