2021年10月、EVバンの試験走行を始めた。積める荷物は約1トンで、1回の充電で300キロ走れる。物流の末端拠点から自宅などの届け先までの「ラストワンマイル」での配達に使う商用車として設計した。電池の持ちや、坂の走行などのデータを取っている。最高執行責任者(COO)の中尾源さん(19)は「宅配需要増の波に乗り、EVバンを伸ばしていく」と話す。

フォロフライのEV商用車

 2022年度からは、このEVバンが荷物を載せて走り始める。宅配も手がける物流会社のSBSホールディングス(HD、東京都墨田区)と契約。同社は約2千台の配達車を、今後5年でEVに置き換える計画だ。他の物流会社からも引き合いがあり、中尾さんは「将来は年数千台を売る会社にしたい」と語る。

 フォロフライは8月にできたばかり。創業したのは、国内初のスポーツEV量産化に成功した京大発ベンチャー「GLM」でEVスポーツカーを作ったことで知られる小間裕康さん(44)だ。今は最高経営責任者(CEO)を務める。

 なぜ商用車なのか。「もともと宅配への需要が増えていたところに、新型コロナウイルスの感染拡大で加速した。短距離の宅配車へのニーズは高い」と中尾さんは話す。EVのバンやトラックといった商用車は、日本の自動車大手もあまり開発していない。

 自前の工場を持たない「ファブレス」の「自動車メーカー」は珍しい。中国大手、東風汽車集団のEVバンをベースに、日本の安全基準に基づき設計を一部変更し自社EVを製造。開発コストを抑えた。EVの生産台数が急増する中国では、EV価格を押し上げる電池が安いこともあり、1台380万円と、ガソリン車並みの価格にした。

EV商用車の車内

 すでに2トントラックなど他の商用車も開発中だ。大学1年生の中尾さんは「日本を代表するファブレスメーカーにしたい」と、学業と経営の両立に奔走している。(2021年12月18日朝日新聞地域面掲載)

フォロフライ

本社は京都市左京区の京都大国際科学イノベーション棟に置く。完全国外生産で安全基準を満たし、宅配用電気自動車としてナンバーを取得した。劣化した充電池を交換する設備を中国メーカーと開発し、充電池を交換しやすい車体の開発も計画する。