LTVとは 意味・計算方法・向上させる方法5つ 成功事例も紹介
LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値のことであり、企業が顧客と何度も取引して得られる収益の総額を示す言葉です。既存顧客からの安定的に収益を確保するための指標として、重要視されています。LTVの意味と具体的に向上する方法、成功事例を紹介します。
LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値のことであり、企業が顧客と何度も取引して得られる収益の総額を示す言葉です。既存顧客からの安定的に収益を確保するための指標として、重要視されています。LTVの意味と具体的に向上する方法、成功事例を紹介します。
目次
LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)とは、顧客の生涯価値を意味する言葉で、企業が顧客と1回だけの取引ではなく、何度も取引接点を持つことで得られる収益の総額です。
LTVが高いことは、今取り組んでいる「既存顧客との信頼関係を構築するための活動」が有効であり、多くの既存顧客から「持続的な企業活動に必要な信用」を獲得できている状態といえます。
昨今は新規顧客獲得が難しくなっているため、1人の顧客と長く取引を継続することが重要視されています。一方で、顧客が容易に他社と比較できる状況にもなっています。
そのため、顧客から信頼や信用を得る活動を行うときは計画を立てて進め、常に施策の方向性があっているか、効率的かを定量的に評価する必要があります。
その指標のひとつが、顧客との良い関係を数値で示すLTVです。
LTVが注目されている理由には、主に次の3つがあげられます。
昨今、企業のマーケティング活動は、顧客のニーズや取り巻く環境の変化が激しいために複雑化しています。それに伴い、新規顧客の獲得にかかる費用も高まりつつあり、1人の新規顧客獲得にかかる費用は、既存顧客のリピートにかかる費用の5倍と言われています。
また、BtoC、BtoBのビジネスモデルも目まぐるしく変化しています。
例えば、技術革新によって以前よりも新たな商品・サービスをリリースするまでに要する時間が短縮されたことで、生活者により良い商品・サービスが次々に提供できるようになりました。
新商品・サービスが登場すれば、その度に新規顧客獲得に向けた活動も活発になります。既存の自社商品・サービスの競合なら、当然ながら新規顧客の獲得が難しくなるでしょう。
加えて新規参入の障壁が高い・低いに関わらず、他業界もしくは他国から多くの企業が参入してくるケースも珍しくありません。
こうした新規顧客獲得の難しさから既存顧客獲得が重要視され、その鍵となる指標であるLTVが注目されているのです。
今は比較サイトの登場などによって、新しい商品・サービスを探す際に、「まずは、何が良いのか比較しよう」というのが一般的になりつつあります。
その影響からか、一度利用したサイトや店舗でも、「前はここで買ったけど、他の方がよいのでは?」と思い、選び直すことも増えています。
他社と簡単に比較検討される状況下で、ユーザーにリピートし続けてもらうには、何をどのように提供し続ければよいのか、常に考えていかなければいけません。その施策が有効であるかどうかを測る指標として、LTVが役立ちます。
前項の通り、比較は簡単になっているのですが、一方で購入を考える度に、常に数多くの商品・サービスの中から比較し、決定するという行動に心的な負担を感じるユーザーも少なからずいます。
その負担を取り除いたモデルが、昨今の“サブスクリプション”に代表される定期的に商品・サービスを提供する方法です。
しかし、この定期モデルにおいても、顧客の利便性や続けることの納得性がなければ成立しないため、試行し続けていくことが求められます。そこで、数字に基づいて正しく評価できる指標であるLTVが重要視されています。
LTVの計算方法は、いくつかの方法があります。一人ひとりのLTVを求めるのが理想的ですが、業界特性などにより困難な場合があるため、概算するのが一般的です。代表的な計算式を2つご紹介します。
顧客個々の購入金額や回数が異なる場合に、単価や回数をいかに伸ばすかという視点で構成された計算式です。小売(EC・通販など)やBtoC向けメーカー、サービス業がLTVを求めたいときに適しています。
顧客が毎月支払う費用がある程度決まっている場合に、いかに継続できるかという視点で構成された計算式です。BtoC向け通信、保険関連やサブスクなどの月額課金事業、BtoB事業に適している計算方法となります。
業態によってLTVを伸ばすアプローチはさまざまですが、やみくもに取り組む前に、まず顧客の利用意向を確認することが大切です。
確認は、以下の2つのタイミングで行います。メールなどを使ってアンケート形式で、定期的に実施すると良いでしょう。
タイミング | 具体的に確認すること |
---|---|
顧客が商品を購入する前 | ・選んだ理由 ・選んだときに比較したモノ ・利用目的 ・期待していること |
顧客が商品を利用している/利用した後 | ・満足度 ・利用したときに感じた問題点 ・リピートの可能性(リピートしない場合はその理由も) |
確認の結果を得るごとに、満足度の変化から改善点を洗い出し、それに応じた具体的に策を講じればリピート率は高まっていきます。
ここでは汎用的にLTVを向上させる方法を5つ、ご紹介します。
LTVの計算式で見たように、LTVは購入回数や購入金額を伸ばすことで高められます。その有効な方法が、レコメンドの活用です。
レコメンドには、顧客が商品を購入したときに、その商品の関連商品や付帯商品をサイト内に表示する方法や、購入後の状況に応じて関連商品や追加の購入などをメールやLINEで促す方法があります。
レコメンドでより成果を出すためには、商品ひとつひとつに対して、その商品の次に購入した商品の特徴を、取引日から経過した日数ごとに分けながら、事前に集計しておくとよいでしょう。
それによって、A商品を購入した3日後にはBという特徴を持つ商品が購入されやすい、といった細かい情報が得られ、より高い成果が期待できます。
購入金額を伸ばす方法として、お得な情報に対して積極的に検討してもらうタイミングである購入直後に、アップセルを促す、というものもあります。
サイト内で商品やサービスを購入することが可能な場合は、レコメンドだけでなく、購入後の完了ページで「まとめ売り」もしくは「年間コース」といったアップセルを促してみましょう。「今だけの特典」という案内をするのも効果的です。
長期継続の特典は、継続年数を伸ばしたいときに有効な方法です。
経過月数や更新回数に応じたメリットがあると、顧客の企業に対するロイヤリティ(信頼度)を高めることができ、LTV向上につながります。
また、ある期間で満了するサービスの場合、何か月も前から次の更新のメリットを提示しておくと良いでしょう。意思が固まる前に確実にメリットを顧客に伝えることが重要です。
顧客が商品・サービスに満足してもらえている状況がわかれば、積極的にリファラルを促進することもLTV向上につながります。具体的には、「友達紹介をしたら◯◯円割引」「友達と一緒に購入すれば◯◯をプレゼント」といった方法です。
リファラル促進には、単価アップのほか、それによって獲得できた顧客が他の新規顧客を呼び込むことも期待できるメリットがあります。
特に現代はSNSを使った情報発信・情報収集が定着していて、1ユーザーの発信の影響度は増す一方です。既存顧客と良好な関係が築けると、その顧客が「あそこは良い企業だ」という情報をSNSを通して自然に発信してくれることもあります。それによって、今まで名も知られていなかった企業が、大勢の人の目に留まるようになったケースは少なくありません。
スタンプラリーも、購入回数や継続年数を伸ばすのに役立つ方法としてあげられます。
スタンプラリーは、ゴールに向かって若干前進したと感じると、ゴールに向かっていくモチベーションが高まり、続けたくなる、という人間の心理的効果(エンダウド・プログレス効果といいます)を活用した手法です。あらかじめスタンプが1つ押されていて、初回購入で2つ目が押されるというのは、この効果のギミックといえるでしょう。
スタンプラリーは、LINEなどで手軽に作れるので、ECだけでなく店舗ビジネスでも簡単に導入できます。
最後に、実際に企業が取り組み、LTVを向上させた事例を2つ、ご紹介します。
商品リピートすることで効果の実感を得られる商品を提供している企業A社では、一定の回数まで定期継続が続かないという課題を抱えていました。
そこで、顧客がシニアということもあり比較的、電話比率が高かったため、電話での話法を変えました。
具体的には、注文の電話を受けた際に、購入動機や理由を丁寧にヒアリングして、どういう自分でありたいかというイメージを顧客に語ってもらうようにしました。商品の価値を一方的に伝えるのではなく、顧客が目指す目標に対して、その商品がいかに役立つかという顧客目線での話法に変更したのです。
結果として、既存顧客から納得感が得られ、一定の回数まで利用してもらう確率が75%から80%を超え、LTV向上に成功しました。
企業B社では、サービスに付随する商品の購入率を上げることへの課題に対して、自社ポイントを活用しました。
商品購入するとポイントが付与されるというのは一般的な手法ですが、B社では特定の顧客にだけ自社ポイントをプレゼントしました。
このポイントを商品購入時に使えるようにしたところ、これまで特定の既存顧客からの購入率はほぼ0%でしたが約10%まで上がり、LTV向上につながりました。
一般的なクーポンの場合はいくら以上でクーポンが利用できるという制約がありますが、ポイントの特性上、そういった制約がないため、顧客にとって価値あるものと受け止められたと推測されます。
顧客にとっての価値を最大限に考えた結果、企業の抱える課題をクリアするに至りましたが、企業目線で考えていると辿り着きにくい発想だったのではないでしょうか。
LTVを伸ばす方法はいくつかご紹介しましたが、顧客の持続的な満足は一朝一夕で得られるものではありません。
そのため、顧客一人ひとりの「購買データ」「行動データ」など、顧客を徹底的に知るためにデータを常に収集し、顧客理解を深めることが必要不可欠です。
個々の顧客に対するマーケティング活動をサポートするツールも充実しているので、そちらの利用も検討してみると良いでしょう。
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