目次

  1. 一の湯は正月に行くところ
  2. サイゼリヤでの充実した日々
  3. 父に「戻ってこい」と言われ
  4. 12冊分のマニュアルを作成
  5. 経営理念を作り直す
  6. 承継直後に見舞われた苦難
  7. コロナ禍でも雇用を守る
  8. 経費削減と働き方改革を推進
  9. 宿泊業界の常識を壊したい

 一の湯は1630年に創業。年商は約14億円で従業員219人(2022年5月現在)を抱えます。

 幼少期の小川さんにとって一の湯は「正月に行くところ」。一家で毎年大みそかに箱根に泊まっていました。しかし、普段は東京で暮らしており、家業を継ぐ意識も箱根への愛着もそれほどなかったといいます。

 「おやじから『君が継ぐんですよ』と言われたことは一度もありません。『自由にやりなさい』という教えでした」

 中高は野球部で汗を流し、同志社大学では馬術部に入部。競馬の厩務員になる夢もありましたが、定年まで力仕事を続ける難しさも考え、就職活動を始めます。

創業の地に今も建つ塔ノ沢一の湯本館

 15代目の父・晴也さんは旅館にチェーンストア理論を採り入れ、1泊2食付きで1万円以下から宿泊可能という低価格路線にかじを切りました。

 就活中の小川さんは将来を意識し「家業を継ぐ時に生かせる仕事」という軸で就職先選びを進めます。中でも心を動かされたのは外食チェーンのサイゼリヤでした。

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