目次

  1. 住民票の発行手数料に用いる勘定科目
  2. 住民票の発行手数料の仕訳方法 主なパターンを紹介
    1. 住民票の発行手数料を会社の現金で支払った場合
    2. 住民票を複数発行した場合
    3. 従業員が住民票の発行手数料を立て替えた場合
    4. 住民票を従業員がオンライン申請した場合
  3. 住民票の発行手数料を仕訳するときに注意すべきこと
    1. 発行手数料が経費計上できない場合がある
    2. 住民票の発行手数料は非課税として区分する
    3. 勘定科目を一度決めたら安易に変えてはいけない
    4. 摘要欄に取得したものを記載しておくと管理が楽になる
  4. 個人事業主が住民票の発行手数料の仕訳をするときは
    1. 勘定科目
    2. 仕訳例
    3. 注意点
  5. 住民票の発行手数料は細かな点を気をつけよう

 住民票を発行する際に使用する勘定科目は、租税公課が一般的です。

 租税公課とは、国や地方公共団体が徴収する手数料、税金、罰金や公共団体に納める会費等を含めた総称のことをいいます。

 住民票の発行に関する手数料は、地方公共団体に支払うものであり公課の範囲となることから、勘定科目は租税公課を使うことが一般的です。

 なお、企業によっては、これまで支払手数料や雑費としていたかもしれませんが、それも間違いではありません。むしろ一度決めた勘定科目を簡単に変更してはいけないというルールがあるため、この記事を読んで慌てて租税公課に切り替えることのないようにしましょう。

住民票の勘定科目と仕訳例
住民票の勘定科目と仕訳例(デザイン:吉田咲雪)

 ここでは、住民票の発行手数料の仕訳方法を主なパターンに分けて解説します。

 従業員が会社の小口現金を使用して住民票を発行した場合は、現金の勘定科目を用いて仕訳を行います。

【例】住民票の写しを窓口で発行してもらい、発行手数料300円を会社の現金で支払った。

借方 貸方
租税公課 300円 現金 300円

 住民票を複数枚取得した場合、使わなかった分は、厳密には取得時に費用処理せずに、使用した時点で費用にするという考え方もあります。

 しかし、住民票利用の多くの場合は、有効期限が発行から3ヶ月以内などと設けられています。そのため、取得時に全額費用で処理をしても構わないでしょう。

 一方で、利用する見込みもないのに、大量に取得して費用処理をするのは認められない可能性があります。基本的には必要な分だけ取得するようにしましょう。

【例】従業員の住民票の写しを窓口で予備も含めて2枚発行してもらい、発行手数料600円を会社の現金で支払った。

借方 貸方
租税公課 600円 現金 600円

 住民票を発行するのは、従業員本人が実施します。小口現金がない場合などは、従業員が立替払いをすることもあるでしょう。

 その場合は、会社の立替経費を起票する際の負債科目を使用します。よく使われている勘定科目は未払金です。

【例】従業員が自身の住民票を立替払いで取得し、後日精算。発行手数料は300円。

借方 貸方
租税公課 300 未払金 30

 住民票は市役所などの窓口に行かなくても、オンライン申請をして、自宅に郵送できるようになってきています。その場合、住民票の発行手数料に郵送料も追加で請求されることが一般的です。

 郵送料は切手代であることがほとんどでしょう。この場合、発行手数料と郵送料は別々の勘定科目で計上したほうがよいです。なぜなら消費税の取り扱いが異なるからです。郵送料に該当する部分は消費税が発生します。

【例】住民票をオンラインで申請し、発行手数料300円、郵送料84円を従業員のクレジットカードで支払った。

借方 貸方
租税公課 300 未払金 384
通信費 77
仮払消費税 7

 住民票の発行手数料の仕訳は一見単純に見えますが、注意すべきこともあります。この章では4つのポイントを解説します。

 住民票の発行手数料は、事業に必要な場合にのみ、経費計上できます。

 そのため、事業に関係がないのに役員や従業員が発行した住民票は経費にできません。よくあるのは、社長が個人的な理由で住民票を発行し、その費用を会社負担とするような場合です。

 また、会社によっては、経費にできない住民票の発行手数料を役員報酬や従業員の給与に認定し、源泉徴収することもあります。その場合は、年末調整の際に源泉徴収分も合わせて計算を行うなど、適切な事務処理が必要です。

 一般的に、会社で従業員の住民票が必要になるのは、入社時などです。必ず事業上、必要なものかどうかを確認しましょう。

 住民票発行手数料の消費税の課税区分は、非課税です。消費税法基本通達6−5−1にて定められています。非課税の理由は、消費税とは事業者を通じて消費者に提供されるサービスに課する税であり、住民票発行などの行政手続きは課税になじまないものだからです。

 そのため、仕訳する時に、消費税区分を間違えずに記入する必要があります。

 通常の会計ソフトであれば、租税公課は非課税取引として自動的に判別してくれることが一般的です。しかし、非課税と自動判別されない場合は、自身で非課税区分を選ぶ必要があります。

 また、住民票の発行手数料は租税公課以外に、支払手数料や雑費を用いる会社もあります。これらの勘定科目を使用している場合は、課税仕入となっていることが多いです。必ず勘定科目を選択した後は、非課税取引に修正して仕訳処理を行いましょう。

 もし、課税取引のまま仕訳すると、消費税の申告計算を誤り、消費税を過少に納めることになるため、追徴課税となってしまいます。

 住民票の発行手数料を計上する勘定科目を租税公課と決めたら、使い続ける必要があります。これは年度を跨いでも同様です。

 会計には継続性の原則というものがあり、一度決めた会計処理は合理的な理由がない限り変更してはいけないからです。

 使用する勘定科目を変更してしまうと、過去との正しい比較ができず、分析するのが難しくなります。

 勘定科目を変更してもよい場合とは、はじめは毎年の住民票の発行手数料が少額であり、雑費としていたのが、金額が増加し内容も重要になったため、租税公課に変更するようなときです。

 租税公課の勘定科目は住民票の取得以外にも、事業税など各種税金の支払いや登記簿の取得など、さまざまな用途で使われます。そのため、摘要欄に「住民票の発行手数料」などと記載した方が、後から用途別の費用を抽出しやすくなります。これは支払手数料など、別の勘定科目を採用する場合も同様です。

 摘要欄に用途を記載することで、管理を楽にしましょう。

 住民票は個人事業主の方が融資を受ける際やオフィスを借りる際に求められることがあります。

 個人事業主であっても使用する勘定科目や注意すべき点は法人と大きく変わりません。

 個人事業主も利用する勘定科目は、租税公課が一般的です。また、雑費にしても問題はありません。

 個人事業主の場合は、決算書で勘定科目がある程度決まっているため、その中から選択するとよいでしょう。租税公課や雑費は決まっている勘定科目に含まれており、支払手数料はその中にはありません。自由に設定できる勘定科目にすることは可能ですが、住民票の発行以外に支払手数料がほとんどない場合は、独自に設定する必要はないといえるでしょう。

 また、貸方の勘定科目は、現金を小口などで管理している場合は現金の勘定科目を採用し、設定していない場合は、事業主借を採用するとよいでしょう。

【例】個人事業主で住民票発行手数料300円を支払った。お金はプライベートの財布から支払った。

借方 貸方
租税公課 300 事業主借 300

 個人事業主の場合、経費にできるのは事業と直接関係があるもののみです。住民票はプライベートでも使用することが多いですが、事業を行う上での許認可申請など、必ず事業に関係のある場合のみ経費計上しましょう。 

 住民票の発行手数料に関する会計仕訳自体はそこまで難しいものではありません。しかし、消費税は非課税になるなど、細かな部分は注意が必要です。また、どの勘定科目を使うかは最初に決めておいたほうがよいです。そのため、事前準備をしっかりし、ミスを防ぎましょう。