目次

  1. 半年間練り上げたアイデアを披露
  2. 木材を使ったプロダクト開発
  3. 充実の「生前サービス」に支持

 アイデアソンは茨城県北部6市町の事業者を対象に、雇用創出性のあるビジネスを生み出し、地域振興の芽につなげるために企画されました。参加した10事業者は和菓子店、鉄工所、工務店、農園、一般社団法人などで、ファミリービジネス企業の参加も目立ちました。

 各事業者が学生や企業関係者、公務員らとチームを組み、22年7月から月1回のペースで、新しい事業アイデアを生むための話し合いを積み重ねました。最終報告会を東京都心で企画したのは、東京に向けてビジネスを成立させるという狙いを込めたといいます。

 最終報告会では10事業者の代表が、半年間の議論で練り上げたアイデアをプレゼンテーションし、5人の審査員が独創性、市場性、雇用創出性などを基準に採点しました。

 茨城県知事賞を獲得した八千代商事は1957年創業で、木材と住宅資材の卸売業を手がけています。しかし「卸業だけでは未来が見えない」と、木材を使った新しいプロダクトを考えるため、アイデアソンへの参加を決めました。

 3代目社長・福地秀太郎さんの妻で取締役の福地美喜さん(46)がリーダーとなり、インフラ系企業や木材業者らによる8人のチームをさらに三つに分け、多彩なアイデアを考えました。

 成果報告会で発表したアイデアの一つが、キャンプ場などで手軽にたき火が楽しめる「スウェーデントーチ」の開発です。間伐材を利用し、「ネンリントーチ」という商品名でイベントなどを企画して販売します。

成果報告会でプレゼンテーションをする福地さん(右から4人目)

 「森と親しむ体験パーク」の計画も披露しました。県内の森で県産材を使ったフォトフレームの作成、自然を感じられる写真スタジオ、サバイバルゲーム体験などを事業化する方向です。

 また、八千代商事が県産材を調達・加工し、パートナー企業と連携しながら、国産材の家具「カーボンストックファーニチャー」(2022年ウッドデザイン賞受賞)を、県内企業などに販売する事業も発表しました。

 福地さんは県知事賞の受賞に「4人の子どもがいて、一番下の子は4歳まで成長しました。何かやりたいと思い、ずっと悩んでいたのですが、人生の第2章と思い、アイデアソンに参加しました。私一人の力でできることには限界がありますが、チームのおかげで受賞できました。すべての皆さんに感謝したいです」と話しました。

 報告会で、オンライン視聴者も含む参加者から最も投票を集めた「オーディエンス賞」に選ばれたのは、日立市の葬儀会社・いばそう企画でした。

オーディエンス賞を受賞した、いばそう企画代表取締役の林三弘さん(左)

 アイデアソンでは「生前を謳歌して欲しい」という理念を掲げ、同社の会員向けサービスのアイデアを披露しました。未来の自分にメッセージを送る「NEXT LIFE シート」や、葬儀に使う骨つぼを生前から購入して写真や動画、手紙といった思い出の品を入れるサービス、健康寿命を伸ばすための軽運動スクールといったユニークな発想が評価を受けました。

 1997年に創業した家業の2代目を担う林三弘さん(55)は「賞をもらえると思っていなかったのでありがたい。生前からのサービスを充実させ、おくられる方もおくる方も満足できるようにしたいです」と話しました。

アイデアソン参加者らによる記念撮影

 成果報告会の審査員の1人で、小野写真館(茨城県ひたちなか市)2代目社長の小野哲人さんは倒産寸前だった家業を再建し、旅館のM&Aなどで事業拡大を続ける気鋭の後継ぎです。

 「(県南の)ひたちなか市出身ですが、県北の皆さんの熱気と行動力に感銘を受けました。行動することがすべてなので、ぜひ発表したアイデアを実現させてほしい」とエールを送りました。