目次

  1. 遺伝子組み換え表示とは
  2. 変更のポイント:「任意表示」が厳格化 「義務表示」は変更なし
    1. 現行の「義務表示」:「不分別」の表示は丁寧な説明を推奨
    2. 現行の「義務表示」の表示方法
    3. 現行の「任意表示」:意図せざる混入5%以下なら「遺伝子組み換えでない」が表示可能
    4. 変更後の「任意表示」:混入がない場合のみ「遺伝子組み換えでない」が表示可能
  3. 新たな任意表示制度の注意点
    1. 現行制度に基づく表示がされた在庫の販売は可能
    2. 「遺伝子組み換えでない」の表示には証明が必要

 遺伝子組み換え表示とは、消費者が食品を購入する際、別の生物の細胞から取り出した遺伝子を組み込んで開発された作物が使われているか否かがわかるようする表示のことです。この表示制度は食品表示法に基づき、2001年4月に始まりました。

 その後、海外での遺伝子組み換え農産物の作付面積が増えたことや、消費者の意識の変化を踏まえ、消費者庁は2017年4月に「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を立ち上げました。

 ここで、遺伝子組み換え表示のあり方について見直しの検討が進められ、2018年3月に報告書がまとめられました。事業者の準備期間を経て、2023年4月から新たな表示ルールが始まる予定になっています。

消費者庁の公式サイト「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」(2018年3月、PDF方式)から

 なお、国内で流通している遺伝子組み換え食品の安全性について、消費者庁は「厚生労働省の安全性審査を受けており、審査を受けていない遺伝子組換え農産物や、これを原材料に用いた食品等の製造・輸入・販売は、食品衛生法(昭和 22 年法律第 233 号)の規定により禁止されている」としています。

 そのため検討会がまとめた報告書では、今回の制度変更の目的について「消費者の自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保を実現するため」としています。

 遺伝子組み換え表示制度は「義務表示」と「任意表示」の二つに分かれています。今回の制度変更では、義務表示は変わらず、任意表示が厳格化されます。

 現行制度の内容と変更点を確認していきます。

 義務表示となっているのは、9の農産物と、それを原材料とした33の加工食品群です。

遺伝子組み換え表示制度で「義務表示」となっている農作物など。消費者庁パンフレット「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」から(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genetically_modified/assets/food_labeling_cms202_220329_01.pdf)

大豆(枝豆及び大豆もやしを含む)

①豆腐・油揚げ類
②凍り豆腐、おから及びゆば
③納豆
④豆乳類
⑤みそ
⑥大豆煮豆
⑦大豆缶詰及び大豆瓶詰
⑧きなこ
⑨大豆いり豆
⑩①から⑨までに掲げるものを主な原材料とするもの
⑪調理用の大豆を主な原材料とするもの
⑫大豆粉を主な原材料とするもの
⑬大豆たんぱくを主な原材料とするもの
⑭枝豆を主な原材料とするもの
⑮大豆もやしを主な原材料とするもの

とうもろこし

①コーンスナック菓子
②コーンスターチ
③ポップコーン
④冷凍とうもろこし
⑤とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰
⑥コーンフラワーを主な原材料とするもの
⑦コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く)
⑧調理用のとうもろこしを主な原材料とするもの
⑨①から⑤までに掲げるものを主な原材料とするもの

ばれいしょ

①ポテトスナック菓子
②乾燥ばれいしょ
③冷凍ばれいしょ
④ばれいしょでん粉
⑤調理用のばれいしょを主な原材料とするもの
⑥①から④までに掲げるものを主な原材料とするもの

なたね

綿実

アルファルファ

アルファルファを主な原材料とするもの

てん菜

調理用のてん菜を主な原材料とするもの

パパイヤ

パパイヤを主な原材料とするもの

からしな

 上記の農作物・加工食品群について、以下の三つにあてはまる場合、それぞれ決められた方法で表示しなければなりません。

遺伝子組み換え表示制度の「義務表示」の表示方法。消費者庁パンフレット「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」から(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genetically_modified/assets/food_labeling_cms202_220329_01.pdf)

 遺伝子組み換え農産物と非遺伝子組み換え農産物の区別は「分別生産流通管理(IPハンドリング)」という手法が用いられています。

 IPハンドリングとは、生産(農場)、流通(トラック、サイロ、コンテナ船等)、加工(食品加工業者等)の各段階で、非遺伝子組換え農作物に遺伝子組換え農作物が混入しないよう管理し、管理されていることが書類等により証明されていることを指します。

分別生産流通管理の概要。「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」の資料から引用(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/review_meeting_010/pdf/review_meeting_010_180419_0002.pdf)

 なお、「不分別」という文言についてはわかりにくさが指摘されており、消費者庁は事業者に対し、「遺伝子組み換え不分別」の意味について説明文をパッケージに付けることを勧めています。

 現行の任意表示では、分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品の場合、次のような表示ができます。

  • 「遺伝子組み換えでないものを分別」
  • 「遺伝子組み換えでない」

 現行の制度では、分別生産流通管理が適切に行われている場合には、遺伝子組み換え農産物の5%以下の意図せざる混入を認め、「遺伝子組み換えでない」といった表示が可能だとされていました。

 2023年4月1日に変更される制度では、この点が厳格化され、次のような表示方法が求められるようになります。

分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品

→適切に分別生産流通管理された旨の表示が可能
 表示例)「原材料に使用しているとうもろこしは、遺伝子組み換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています」「大豆(分別生産流通管理済み)」

分別生産流通管理をして、遺伝子組み換えの混入がないと認められる大豆及びとうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品

 →「遺伝子組み換えでない」「非遺伝子組み換え」などの表示が可能

 大豆、とうもろこし以外の対象農産物については、混入率の定めはありません。それらの食品で「遺伝子組み換えでない」と表示する場合は、遺伝子組み換え農産物の混入が認められないことが条件になります。

 新たな任意表示制度に関する注意点は次の通りです。

 消費者庁は、現行制度に基づいた表示がされた在庫商品について、新制度が始まってからも販売は可能だとしています。

 ただし、古い基準に則った表示がされた商品が流通することで消費者の正しい選択を誤らせるおそれがあるとして、できる限り新制度施行前の切り替えを呼び掛けています。

 新制度では「遺伝子組み換えでない」と表示できるケースが厳格化されます。遺伝子組み換え農産物の混入がないことの確認方法として、消費者庁は第三者分析機関などによる分析や、次のような証明書類を備えておくことを求めています。

  • 生産地で遺伝子組み換えの混入がないことを確認した農産物を専用コンテナ等に詰めて輸送し、製造者の下で初めて開封していること
  • 国産品(現在、日本では食品用遺伝子組み換え作物の商業栽培はされていない)又は遺伝子組み換え農産物の非商業栽培国で栽培されたものであり、生産、流通過程で、遺伝子組み換え農産物の栽培国からの輸入品と混ざらないことを確認していること
  • 生産、流通過程で、各事業者において遺伝子組み換え農産物が含まれていないことが証明されており、その旨が記載された分別生産流通管理証明書を用いて取引を行っている場合

 なお、行政による検証において、原材料に遺伝子組み換え農産物が含まれていることが確認された場合には、不適正な表示として扱われます。