ストライクが根拠不十分なDM 親族内承継の発展性をM&Aより低評価
M&Aをすると会社の発展性は「◎」なのに比べ、親族内承継の場合は「△~○」と低評価を付けたダイレクトメール(DM)をM&A仲介・M&Aアドバイザリーの「ストライク」が企業向けに送付していました。ツギノジダイ編集部が取材したところ、DMには十分な根拠がありませんでした。ストライク広報部も「十分な根拠があったとは言えない」と認め、このDMの発送を停止しました。
M&Aをすると会社の発展性は「◎」なのに比べ、親族内承継の場合は「△~○」と低評価を付けたダイレクトメール(DM)をM&A仲介・M&Aアドバイザリーの「ストライク」が企業向けに送付していました。ツギノジダイ編集部が取材したところ、DMには十分な根拠がありませんでした。ストライク広報部も「十分な根拠があったとは言えない」と認め、このDMの発送を停止しました。
ある中小企業が受け取ったのは、ストライクから送られてきたM&Aの案内で、そのなかに「事業承継の選択肢」として比較表が載っていました。
比較表は、M&Aをした場合の企業の発展性は「◎」と評価する一方で、親族内承継の場合は「△~○」と書いていました。M&Aのメリットに「優秀な後継者を選択可能」と説明していますが、親族内承継には「経営経験に乏しい」といったデメリットが記載されていました。
政府の中小企業白書でも、親族内承継よりもM&Aの方が発展性があるという根拠は書かれていません。親族内承継は「経営経験に乏しい」と一般化して記載するだけの根拠も見当たりません。そこで、ストライクに対し、DMの根拠について取材しました。
ツギノジダイ編集部の取材に対し、ストライク広報部は次のようにコメントしています。
中小企業白書2021年版第2節 コラム2-3-4:M&A実施有無別のパフォーマンス比較」にあります通り、M&Aを実施した企業が実施しない企業に比べ成長率が高い事。また、大手企業がM&Aを通じて急速な成長を図っている事例があることから、M&Aの欄に「◎」の記載をしております。
当社には親族内承継を否定する意図はなく、親族内承継の発展性を△~〇という低い評価にしたことについて、十分な根拠があったとは言えないと考えております。
親族内承継のデメリットとして「経営経験に乏しい」と書かれた理由についても確認したところ、次のような回答がありました。
経営経験につきましては、M&Aにより外部の経営人材が加わることで大きな成長を得る事例があることから、記載させていただきました。ただ、親族内承継の対象者(後継者)の方の経営経験が乏しい、という表記についての根拠は十分ではありませんでした。
ストライクが親族内承継の発展性は「△~○」と記載したDMの作成履歴を確認したところ、少なくとも2021年春にはすでに利用されていたといいます。
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最初に使用したとみられる社員はすでに退職しており、詳しい経緯は確認できませんでしたが、この比較表は複数の社員がダイレクトメールで使用していたといいます。
ストライクは、2023年3月31日付で「事業承継の選択肢」の比較表の使用を禁止するとともに、比較表の入ったDMの発送を停止しました。
このうえで、次のようにコメントしています。
ダイレクトメールの文言、図表は各営業担当者が制作。デザイン担当者や、上長の内容確認を経て発送されます。今後は複数部門によるチェック体制など、内容確認の過程を強化するとともに、ダイレクトメールを受け取った方が疑問、違和感を抱く表現に細心の注意を払って参りたいと存じます。
M&Aの有用性をアピールするために、比較対象として、親族内承継を低く評価していたのはストライクに限りません。以前には、日本M&Aセンターでも根拠不十分なDMが発送されていたことがツギノジダイ編集部の取材で明らかになっています。
帝国データバンクの調査では、2022年は、同族承継(親族内承継)がトップの34.0%でしたが、年々その割合は低下しています。代わりに伸びているのが、「親族以外」の従業員に承継させる「内部昇格(従業員承継)」で、33.9%と増加しています。M&Aなどの割合も20.3%となり、調査開始以降で初めて20%を超えました。
このようにM&Aのビジネスチャンスが広がる一方で、今回のような行き過ぎた営業活動を問題視する声が、中小企業経営者のSNSなどで上がっています。
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