後継者不在率、初の60%割れ 帝国データバンク「脱ファミリー化が加速」
帝国データバンクは2022年の全国・全業種約27万社の後継者不在率は57.2%で、調査開始の2011年以来、初めて60%を下回ったと発表しました。後継者候補は、親族内承継の割合が最も高い状態が続いてきましたが、今回、初めて「非同族」が首位となり、帝国データバンクは「ファミリー企業でも脱ファミリー化へ舵を切る動きが強まっている」と解説しています。
帝国データバンクは2022年の全国・全業種約27万社の後継者不在率は57.2%で、調査開始の2011年以来、初めて60%を下回ったと発表しました。後継者候補は、親族内承継の割合が最も高い状態が続いてきましたが、今回、初めて「非同族」が首位となり、帝国データバンクは「ファミリー企業でも脱ファミリー化へ舵を切る動きが強まっている」と解説しています。
今回の調査でいう後継者不在率は、帝国データバンクが自社データベースをもとに事業承継の実態について分析可能な約27万社(全国・全業種)における後継者不在企業の割合を分析した調査結果です。
中小企業庁の公式サイトによると、中小企業の経営者の高齢化が進むなか、後継者がいないことを理由にした廃業が3割を占めており、中小企業の後継者不足問題は国も政策課題の一つに挙げています。
2011年から毎年調査している帝国データバンクは、2022年の後継者不在率を57.2%と公表しました。調査開始以来最も低く、初めて60%を切りました。その理由について次のように分析しています。
コロナ禍という未曽有の危機のなかで、コロナ関連融資の借り入れも含め、自社事業の将来性に改めて向き合った中小企業は多いとされる。こうしたなか、地域金融機関をはじめ事業承継の相談窓口が全国に普及したほか、第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継など、プル・プッシュ型を問わず事業承継メニューが全国的に整ったことも、後継者問題解決・改善の前進に大きく寄与した。
帝国データバンク:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)
一方で、コロナ禍の影響か、前年まで後継者がいたにも関わらず、2022年に後継者不在となった「計画中止・取りやめ」が約1600社(0.6%)と拡大している傾向も見えてきたといいます。
調査結果によると、2022年の後継者不在率が最も低かったのは三重県で29.4%でした。その理由について、帝国データバンクは「地域金融機関などが密着して支援を行っていることに加え、経営や商圏が比較的安定している企業も多いなどの理由から、子息など親族が経営を引き継ぎやすい環境が整っていることも背景にある」と分析しています。
島根県(75.1%)、鳥取県(71.5%)は不在率が全国トップクラス。一方、2011~2020年に不在率トップだった沖縄県は改善傾向が続いており、67.7%と全国5番目まで下がってきました。
調査では、どんなタイプの事業承継が増えているのかについても注目しています。中小企業庁によると、事業承継は、引き継ぐ先によって、親族内承継、従業員承継、M&Aに分類されます。
2022年の事業承継は、同族承継(親族内承継)がトップの34.0%でしたが、年々その割合は低下しています。長い準備期間確保がしやすい、相続などによる財産・株式の後継者移転が可能といった背景から所有と経営の一体的な承継が期待できる一方、子どもがいない、子どもが継ぎたがらないといった課題も別の調査から見えてきています。
代わりに伸びているのが、「親族以外」の従業員に承継させる「内部昇格(従業員承継)」が33.9%と増加しています。M&Aなどの割合も20.3%となり、調査開始以降で初めて20%を超えました。
中小企業の後継者不足問題は、改善の兆しが見えているとはいえ、目先では後継者難倒産が高水準で推移しています。帝国データバンクによると、2022年1~10月で408件起きており、通年で過去最多を更新する勢いです。
代表者が自分の代で事業を畳む決断を下す「あきらめ」だけでなく、後継者の経営手腕・資質を現社長が認めない、先代からの従業員や取引先との意思疎通が円滑に引き継がれないといった理由で、承継後早期に経営が行き詰まった企業も散見されたといいます。
そのため、「今後の事業承継支援は外部人材の登用といった幅広い選択肢の訴求や使いやすさの向上に加え、後継者候補のリサーチや育成、経営幹部人材の紹介・マッチングなど、それぞれの承継ステージや課題感に合った支援メニューの拡充により注力していく必要がある」と結論づけています。
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