運送ドライバーの自動点呼、2023年1月開始 国土交通省が実証実験
運送業界で働くドライバーの乗務後の点呼を条件付きで自動化するための制度が、2023年1月に始まります。国土交通省が専門家による検討会で議論し、実証実験も踏まえ、方針を決めました。国交省が公表している要件や制度変更の背景について、わかりやすく整理しました。
運送業界で働くドライバーの乗務後の点呼を条件付きで自動化するための制度が、2023年1月に始まります。国土交通省が専門家による検討会で議論し、実証実験も踏まえ、方針を決めました。国交省が公表している要件や制度変更の背景について、わかりやすく整理しました。
目次
自動点呼とは、運送業の安全確保のため、原則対面での実施が義務付けられているドライバーの点呼に、ロボットなどの点呼支援機器を活用することです。
道路運送法と貨物自動車運送事業法では、旅客や貨物を輸送する運送事業者に対し、国家資格を持った運行管理者を営業所ごとに一定数以上選任しなければならないと定めています。
運行管理者は、乗務前後のドライバーに対し、酒気・疾病・疲労の確認や必要な指示をするための点呼を対面で実施しなければなりません。
近年、運送業界では、労働環境の改善や人手不足の解消に向けた対策が必要になってきており、その手段としてICT機器の活用が注目されていました。
そこで国交省が2021年3月、専門家による「運行管理高度化検討会」を立ち上げ、原則対面だったドライバーの点呼の自動化について検討してきました。
検討会で、機器に求められる性能を議論したり、実証実験を重ねたりした結果、条件付きでの自動化を認める方針を決めました。
国交省は2022年12月20日、乗務後自動点呼実施要領(PDF方式)を公表しました。実施要領の概要は次の通りです。
事業者は、国交省の公式サイトで公表された認定機器のうち、有効期間内のものを用いることで乗務後自動点呼ができます。
乗務後自動点呼要領に基づき、自動点呼を始める予定日の10日前までに運輸支局長などへ事前届出を出す必要があります。届け出用紙は国交省の公式サイトでWORD,PDF方式により公表されています。
国交省は乗務後自動点呼のベースとなる点呼機器の認証制度創設に向けた準備を進めており、2022年中に制度を構築し、2023年1月から運用を始める計画を、運行管理高度化委員会の中で示しました。
乗務後の運転者に対する点呼の実施要領を公表し、点呼機器の認定が始まりました。自動車運送事業者は、認定された機器を用いることで、乗務後自動点呼を実施できることになりました。
今回の制度改正では、これまで原則対面だった点呼の自動化が全面的に認められるようになるわけではありません。一定の要件を満たした状況でのみ、認められるようになります。
これについて国交省は「点呼は輸送の安全を担う運行管理の要であって、その確実性が損なわれるものであってはならない」と指摘しています。(2022年3月23日、国交省「運行管理高度化検討会」での資料「乗務後自動点呼の制度化に向けた最終とりまとめ」<PDF方式>から)
自動化はまず「乗務後」の点呼でのみ認められるようになります。「乗務前」の点呼はまだ認められず、これまで通り運行管理者が対面で実施しなければなりません。
国交省は「運行の可否について総合的な判断が必要となる乗務前点呼と比較し、実施項目が少なく実現が容易な乗務後点呼から自動点呼の導入を進めることとする」としています。(2022年3月23日、国交省「運行管理高度化検討会」の資料「乗務後自動点呼の制度化に向けた最終とりまとめ」<PDF方式>から)
また、国交省は今回認める自動点呼を「条件付き点呼自動化」と位置付けています。点呼で必要な内容はすべて機器が確認・指示するものの、非常時には運行管理者が対応できるような体制を整えることが求められています。
その上で国交省は、自動点呼の確実性を確保するための3つの条件を設定しました。
各条件の主な内容は次の通りです。
自動点呼に使う機器・システムには、内容の記録やなりすましの防止対策、非常時の通知ができる機能を備えなければならないとされています。
自動点呼の実施場所については、不正な点呼がなされないような環境を整える必要があるとされています。
事業者や運行管理者には、必要な情報を運転者に周知したり、適切な点呼ができる体制を整えておいたりすることが求められています。
国交省は自動点呼の導入にあたって、使用する機器の性能要件を見極める目的から実証実験を実施しました。
実証実験には、ナブアシスト社の「Tenko de Unibo」(ユニボ)というロボットを活用しました。ユニボは、免許証リーダーやアルコール検知器といった他の機器と連携させることにより、本人確認や酒気帯び状態のチェック、予め設定した指示事項の表示ができる装置です。
実験には全国各地のバス、タクシー、トラックの19事業者が参加し、2021年9~11月にかけて実施されました。国交省は、参加した各事業者へのヒアリング結果として次のような意見を公表しています。
以上の実験結果を踏まえ、国交省は「条件付き点呼自動化」を認める方針を決めました。
国交省は今後、「乗務前」の点呼でも自動化を進める方針で検討を始めています。
2022年12月の第3回 「運行管理高度化検討会」で示された計画は次の通りです。
実証実験の結果を受けて、導入に向けた準備が進んでいくと見込まれます。
全日本トラック協会の公式サイトによると、会員企業が自動点呼機器を導入する場合、導入費用の一部を助成するといいます。
助成するのは、自動点呼機器の導入費用(周辺機器、セットアップ費用及び契約期間中のサービス利用料を含む)で上限は10万円です。年度内の申請台数は、各協会1事業者あたり1台が上限です。
ただし、所属する協会の域内に安全性優良事業所(Gマーク事業所)を有する場合は2台分まで助成を受けられます。
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