21年前の2001年11月18日、JR東日本がIC乗車券Suica(スイカ)を導入しました。

 

Suicaは非接触型ICカードで、自動改札機に軽く触れるだけで改札を通過でき、財布に入れたままでも反応する仕組みです。

それまでは定期券をケースから出し、自動改札機の投入口に入れる必要がありましたが、その手間が省けました。

定期区間の外に出た際には自動精算されるなど、当時としては画期的なサービスでした。

Suicaが実用化段階に入ったことを報じる2001年5月21日付朝日新聞夕刊(東京本社版)

「スイスイ行けるICカード」という意味を込めてSuicaと名付けられました。

導入当初は東京周辺の9都県424駅で利用可能でしたが、私鉄や地下鉄との併用はまだできませんでした。

 

2003年5月22日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、導入後19日で利用者は100万人を突破。

JR東日本が目標としていた400万人を半年余りで達成し、導入1年半で640万人を超えました。

 

Suicaの使い道は電車だけにとどまりません。

電子マネーとしても普及していきました。

電子マネーのサービス開始を記念したセレモニーでSuicaを掲げる(右から)西原亜希さん、大睦毅・JR東日本社長(当時)、高橋恵子さん=2004年3月、東京駅、朝日新聞社

2004年3月から、駅の売店や飲食店での支払いにSuicaが利用できるようになりました。

2005年8月4日付朝日新聞朝刊(東京本社版)は、決済方法として電子マネーが「急速に普及している」と報じています。

消費生活ジャーナリストの岩田昭男さんは記事中で「多くの人が使う交通機関で、便利さを体感しているのが大きい」と分析しています。

 

さらに2006年1月には、携帯電話にSuica機能を搭載した「モバイルSuica」のサービスが始まりました。

かざすだけで自動改札機を通れる従来の機能に加え、携帯電話の通信機能を使って、定期券の更新や電子マネーの入金ができるようになりました。

「モバイルSuica」のサービス開始を報じる2006年1月28日付朝日新聞夕刊(東京本社版)

同業他社もSuicaの後に続きました。

JR西日本は2003年11月にICOCA(イコカ)を実用化。

近畿2府4県の235駅で利用が可能になりました。

JR東海はTOICA(トイカ)、首都圏の私鉄・地下鉄・バス各社はPASMO(パスモ)を導入。

他にも西日本の私鉄・バスで使えるPiTaPa(ピタパ)、JR九州のSUGOCA(スゴカ)などICカード乗車券が全国に広がったのです。

 

いずれも基本的な仕様は同じで、ソニーが開発した非接触ICチップ「Felica(フェリカ)」をベースとしています。

相互利用化も徐々に進み、2008年にはJR3社のSuica、TOICA、ICOCAの相互利用が実現しました。

 

Suicaは、駅の景色を一変させました。

2011年11月18日付朝日新聞夕刊(東京本社版)によると、首都圏の駅では券売機の数が4割も減りました。

切符代わりにとどまらず、買い物の支払いや会社のタイムカード、学校の学生証など、用途も拡大していきました。

 

そんな中、Suicaの人気を象徴するできごとが2014年に起こります。

「東京駅開業100周年記念Suica」の購入希望者が殺到し、途中で販売中止となったことを伝える2014年12月21日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

JR東日本は2014年12月、東京駅開業100周年を記念した限定品のSuicaを発売。

想定の倍近くの購入希望者が殺到し、販売中止とする騒ぎとなりました。

2014年12月21日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、1枚2000円で販売されたカードが、インターネットオークションで10〜20万円で売られるケースも相次いだそうです。

 

この20年で急速に身近になったSuicaですが、まだまだ歩みを止めていません。

JR東日本は2021年4月、Suicaの利用範囲を青森、岩手、秋田の東北3県に広げると発表。

2023年春以降、新幹線を除くJR東日本管内の全都県でSuicaの利用が可能となる予定です。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年11月18日に公開した記事を転載しました)