イスラエルとハマスの軍事衝突 日本企業は中東全体の安全保障に注視を
パレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を発端した武力衝突が2023年10月7日に突如始まりました。地政学リスクのコンサルタントである和田大樹さんのもとにも日本企業から問い合わせが寄せられています。中東全体の安全保障に影響を与える潜在的リスクを内在しており、今後拡大する恐れがある前提で考えておくべきだと助言しています。
パレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を発端した武力衝突が2023年10月7日に突如始まりました。地政学リスクのコンサルタントである和田大樹さんのもとにも日本企業から問い合わせが寄せられています。中東全体の安全保障に影響を与える潜在的リスクを内在しており、今後拡大する恐れがある前提で考えておくべきだと助言しています。
地中海に面し、エジプトにも近いパレスチナ・ガザ地区を実行支配するイスラム原理主義組織ハマスが10月7日朝、イスラエル領内へ大量のロケット弾を発射し、ハマスの戦闘員らが市民を無差別に殺害し、一部の市民は拉致されパレスチナ領内に連行されています。
軍事力で圧倒的に優勢に立つイスラエルも反撃し、パレスチナ領内へ厳しい空爆を続けています。外務省の海外安全ホームページでは今後、イスラエル軍はより本格的な軍事作戦を実行することが見込まれているとして注意を呼び掛けるなど、事態は非常に流動的です。
11日時点で、これまでに兵士や市民含め双方で2100人以上が犠牲になったとされ、米国人や英国人、フランス人やウクライナ人、ネパール人やタイ人など多くの外国人も巻き込まれています。
2022年の外務省による海外進出日系企業拠点数調査によれば、イスラエルに進出している日系企業の拠点数は87。商社やメーカー、IT企業などを含んでいます。
中国や台湾、ASEANなどに比べれば、イスラエルに進出する日本企業の数は多くありませんが、現在の状況はすでに、イスラエルから国外退避するレベルにあると判断できます。筆者にも駐在員や出張者の対応について問い合わせがいくつかありましたが、上述のような回答をしました。
西村康稔経済産業相は10月10日の閣議後会見で、イスラエルに進出している企業について「邦人被害はないとの報告を受けている」ことを明らかにしました。また、30社弱の会社で働く現地駐在の日本人もほぼ退避したといいます。
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イスラエルはシェルターの先進国ですので、身の安全を守ることはできるでしょうが、情勢は流動的に変化しますので、もし国外退避が可能であれば、いきなり日本へ帰国させることが難しくても近隣国に一時的にでも退避することが望まれます。退避できることに越したことはありません。
筆者は以前からいくつかの企業向けに、社員のイスラエル出張について地政学リスクの観点からアドバイスを行っています。
その際、イスラエルが常態的に抱えるリスクとしてパレスチナ武装勢力との断続的な軍事衝突を挙げ、これまでの衝突は発生しても規模や影響は限定的で、一定期間が経過すれば収まる傾向にあるが、場合によって大規模な衝突に発展するリスクもあることから、それを前提にした危機管理対策を講じる必要があると伝えました。
まさに今起こっていることは、“大規模な衝突”に該当すると言えます。
今回の武力衝突について、サウジアラビア国営通信社(SPA)によれば、「サウジアラビア王国は、双方間のエスカレーションの即時停止、民間人の保護、自制を求める」と報じています。
また、アラブ首長国連邦(UAE)外務省は「民間人の保護を呼びかけるとともに、当面の優先事項は暴力の終結と民間人の保護だ」との声明を発表しています。
しかし、イスラエルに攻撃を続けているハマスは、長年イランから支援を受けています。
長年イスラエルとイランは犬猿の仲であり、仮にですが、イスラエルが地上侵攻し、イランの関与も徐々に明らかになってくるようなシナリオになれば、イスラエルとイランとの間で軍事的緊張が高まることは避けられないでしょう。
また、中東各国には、ハマスと同様にイスラエル領内へ攻撃を繰り返すレバノンのヒズボラなど、イラクやシリア、イエメンやバーレーンなどには親イランの武装組織が点在しており、両国の間で緊張が高まれば、こういった組織が各地に点在するイスラエルやユダヤの関連施設を攻撃する可能性が十分にあり、紛争が拡大、飛び火することが懸念されます。
現在イスラエルとパレスチナで起こっている軍事衝突は、場合によっては中東全体の安全保障に影響を与える潜在的リスクを内在しており、中東各国の進出する日本企業にとっても決して対岸の火事ではありません。
現時点でサウジアラビアやUAE、カタールなどに進出する日本企業が社員の退避を進めるタイミングではありませんが、リスクが拡大する恐れがある前提で物事を考えるべきでしょう。
サウジアラビアやUAE、カタールなどに紛争が拡大することはないでしょうが、各国にあるイスラエルやユダヤ教に関連する施設、具体的にはイスラエル大使館やイスラエル企業、シナゴークなどを狙ったテロの可能性も現実的に考えられます。
ですので、そういった場所には近づかない、長居しないという心構えが必要です。
そして、日本は石油の9割を中東に依存しています。中東で軍事的緊張が高まれば、それだけ石油に関わるあらゆる問題は厳しくなっていきます。紛争の激化、長期化が石油の値段にどう影響を与えるかについても注視が必要です。
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