事業承継、血縁によらない「内部昇格」が初の首位 同族承継と逆転
事業承継の実態について全国・全業種の後継者の決定状況と事業承継について帝国データバンクが分析したところ、2023年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが35.5%に達し、これまで最多だった身内の登用など「同族承継」(33.1%)を上回って、事業承継の手法として初めてトップとなりました。
事業承継の実態について全国・全業種の後継者の決定状況と事業承継について帝国データバンクが分析したところ、2023年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが35.5%に達し、これまで最多だった身内の登用など「同族承継」(33.1%)を上回って、事業承継の手法として初めてトップとなりました。
中小企業庁の公式サイトによると、中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、経営者年齢のピークはこの20年間で50代から60~70代へと大きく上昇しています。また、後継者の不在状況は深刻であり、近年増加する中小企業の廃業の大きな要因の一つとなっていると指摘しています。
帝国データバンクは例年、事業承継の実態について2011年から調査し、今回で10回目の調査となります。帝国データバンクのデータベースをもとに、2021年10月~2023年10月、事業承継の実態について分析可能な約27万社について調べました。
調査結果によると、後継者が「いない」「未定」の企業は14.6万社で、後継者不在率は53.9%となり、6年連続で前年水準を下回りました。
5年前の2018年時点と23年の後継者策定状況を比較できる14万社を分析したところ、31.0%にあたる約4.3万社が新たに後継者を決定していたといいます。
その一方で、2018年時点では後継者候補がいたにも関わらず、2023年に後継者不在となった「計画中止・とりやめ」が1.5%にありました。
理由は、経営環境の急激な変化により事業承継を中断、現経営者による後継者選びの見直し、後継者候補だった人物の辞退や退社など様々でした。また、後継者不在を理由とする倒産も増加傾向にあることにも注視が必要です。
帝国データバンクは「今後は事業承継中のアクシデントやトラブルの発生によるあきらめ防止に向けた取り組みも重要になるとみられ、後継者決定後のフォロー・サポート体制の充実も求められる」と指摘しています。
後継者不在率は都道府県でも業種でも差が開いています。都道府県のうち、後継者不在率の上位5県と低い県は以下の通りです。
鳥取県…71.5%
秋田県…70.0%
島根県…69.2%
北海道…66.5%
沖縄県…66.4%
鹿児島県…43.8%
佐賀県…43.1%
和歌山県…43.0%
茨城県…42.1%
三重県…30.2%
都道府県のうち、後継者不在率の上位5業種と低い業種は以下の通りです。
自動車・自転車小売…66.4%
医療業(病院・診療所等)…65.3%
職別工事業…64.6%
専門サービス…63.4%
郵便・電気通信…61.9%
飲食料品製造…43.4%
窯業・土木製品製造…42.1%
パルプ・紙製品製造…39.0%
金融・保険…38.0%
化学工業・石油製品等製造…37.6%
2023年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」が35.5%に達し、初のトップとなりました。このほか、買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.3%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.2%)なども上昇しています。
一方で、唯一減少したのが、これまで最も多かった「同族承継」で、33.1%となりました。帝国データバンクは「親族間承継の急激な低下を背景に、脱ファミリーの動きが加速している」と指摘しています。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。