目次

  1. BCPとしてのエンディングノート
  2. 作成のメリット
  3. 作成する際の注意点
  4. 必要項目と書き方
    1. 自身と自社の基本情報
    2. 配偶者・子・社員へ伝えたい想い
    3. 財産・資産
    4. 家族・親族
    5. 医療・介護
    6. 葬儀・お墓
    7. 相続・遺言書
    8. 思い出の写真
    9. 遺影
  5. ノートに書かれていることを共有

 「もしこの後、経営者のあなたが帰宅途中に亡くなったら、家族や会社の従業員はそれを受け入れて、どのように行動すべきか決めていますか」

 筆者は先日、事業承継を行ったばかりの製造業の若手経営者(40代前半)と話をする機会があり、失礼とは思いながらも尋ねてみました。

 その経営者は様々な事業を立ち上げ、意欲的な経営を進めています。「今までそんなことは一切考えたことはないし、まだまだ大丈夫ですよ」。そう答えながらも、少し考えたのちに「それって、ある意味BCP(事業継続計画)の一環ですね」と話しました。

 中小企業庁はBCPについて、次のように説明しています(原文ママ)。

 BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

 緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことができ無ければ、特に中小企業は、経営基盤の脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます。

 緊急時に倒産や事業縮小を余儀なくされないためには、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることが重要となります。こうした企業は、顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることとなり、株主にとって企業価値の維持・向上につながるのです。

中小企業庁ホームページ

 これから解説する「経営者のためのエンディングノート」は、まさにBCPの一環として作成するものです。ただ、一般の方のエンディングノートとは違い、事業継続や承継に関することが含まれるのが特徴です。ノートの作成は、従業員や取引先を安心させるだけでなく、株主にとっての企業価値の向上にもつながる重要なツールと言えるでしょう。

 連載1回目(後継ぎを襲う危機に備える「ポジティブ終活」 経営リスクを減らす方法)でも、「経営者の死」によって社内にどのような混乱が予想されるのか、そして信用を落とさず会社を存続させて(状況によっては廃業や売却も)、家族や社員が路頭に迷わないための道筋をつけておくことが、後継ぎ世代の使命となるという点を説明しました。

 今回は、経営者や後継者(候補も含む)である読者の皆様が、「経営者のためのエンディングノート」の作成を通じて、過去を振り返りながら、今後の経営者人生を計画するための道標として活用して頂ければ幸いです。次章から具体的な作成方法、作成によるメリットなどを詳しく解説します。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。