目次

  1. リフレーミングとは
  2. リフレーミングを意識する四つのメリット
    1. 問題解決の選択肢が広がる
    2. 目の前の問題を自力で対処できるようになる
    3. 悩みを克服できる
    4. 従業員のモチベーションアップにつながる
  3. リフレーミングの種類と具体例
    1. 状況のリフレーミング
    2. 内容のリフレーミング
  4. リフレーミングの方法一覧と具体例
    1. 言葉のリフレーミング|言い換え
    2. 時間軸のリフレーミング|あのときからすると
    3. 仮定のリフレーミング|もし〜ならば
    4. 解体のリフレーミング|分解して考える
    5. Wantのリフレーミング|自分はどうしたいのか?
  5. リフレーミングを活用する際に意識したい三つのポイント
    1. 失敗を反省し学びを得る
    2. 共感を大事にする
    3. 継続して活用する
  6. リフレーミングで悩みをなくそう

 リフレーミングとは、欠点やネガティブなことをいつもとは違った枠組みや視点で、長所やポジティブなものとして捉える見方のことです。リフレーミングを直訳すると「フレームを付け替える」であり、フレームとは物事の枠組み・見え方のことを指します。

 例えば「暗い」という性格をリフレーミングすると「物静か」「落ち着きがある」「冷静」という見方ができます。このように自分の思い込みを見直すことで、人間関係や物事の捉え方をよりよいものに変えられます。

 リフレーミングを意識し、物事の捉え方をネガティブなものからポジティブなものに変換することにより、仕事上でもさまざまなメリットが得られます。ここでは主なメリットを四つ紹介します。

 問題解決を考えるときに、一つの手法だけにこだわってしまうと視野が狭くなり、うまく解決できなくなります。リフレーミングを意識することで「一つのやり方=フレーム」へのこだわりがなくなり、選択肢を広げられます。

 例えば、以下のように今置かれている状況の枠組みを変えてみましょう。

  • もしこれがお客さまの立場だったら
  • これが取引先だったらどうするか
  • 仮に無限の時間があれば何をするか

 枠組みを変えて捉えてみることで、選択肢を広げるアイデアが生まれやすくなります。

 私たちは、自分では解決できないような問題に対処しようと、つい力を入れすぎることがあります。しかし、変えられない環境や過去に起きた出来事といった「他責」に原因を求めても問題は解決できません。リフレーミングによって自分で変えられるものである「自責」に原因を求めることで、解決の糸口が見つかるものです。

 例えばコロナでお店の売り上げが下がったとしても、「コロナのせいで客が少なくなっているんだから仕方ない」と環境のせいにしてはいけません。リフレーミングを使い、コロナ禍でも「テイクアウトできる商品を増やしてみよう」など、自分の努力で改善できるところに目を向けると、解決策はいくつも見つかるものです。

 人にはさまざまな悩みがあります。その悩みのなかには「こうするべきだ」「こうでなくてはならない」といった、周りからの圧力によるものも多いでしょう。ここで、リフレーミングを使って「べき」という思い込みを変えてみましょう。

言い換え前 言い換え後
「この仕事はこうやってやるべきだ」 「この仕事のやり方は他にもあるのではないか?」
「この役職だとこう振る舞わなければならない」 「今までとは違う振る舞い方もあっていいのでは?」

 このように考えることで、周りの「べき」という思い込みが解かれます。新しいやり方を見つけやすくなり、悩みを克服できるようになります。

 従業員の欠点やネガティブな行動をリフレーミングすることで、自分では気づいていない性格や才能を引き出し、モチベーションアップにつなげられます。例えば、以下のように言い換えて伝えてみるとよいでしょう。

言い換え前 言い換え後
「あなた私は仕事を進めるのが遅い」 「あなたはいつも慎重に仕事を進めてくれるから間違いが少なくて助かるよ」
「仕事がちょっと雑だよね」 「あなたの仕事は柔軟性があって、いつも素早い対応をしてくれるよね」

 このように、自分ではネガティブに捉えていることも、リフレーミングして伝えることで承認された気持ちが高まるのです。

 リフレーミングには大きく「状況のリフレーミング」と「内容のリフレーミング」の2種類があります。

リフレーミングの種類 言い換え前 言い換え後
状況のリフレーミング

「こいつは新人だからまだ仕事が任せられない」

状況:まだ仕事を覚えていない

「これから伸びしろがある」
内容のリフレーミング

「この人は騒がしい」

内容:よく喋る人

「にぎやかで明るい人」

 それぞれの種類について詳しく解説します。

 状況のリフレーミングは、問題を捉える状況を別の視点から見ることで、その価値を変えるやり方です。

 例えば「こいつは新人だからまだ仕事が任せられない」という場合を考えてみます。「新人」という状況を「まだ仕事を覚えていない」という視点から「これから伸びしろがある」という視点に置き換えてみましょう。すると「新人だから経験をたくさん積ませたほうがよい」という考え方もできます。

 ほかにも「ここは人の通りが少なくて繁盛しない」という場合、「静かなところ」という状況に置き換えて、「隠れ家的なお店にしてお客さまを限定してみる」という考え方もできます。

 状況のリフレーミングでは「人」「時間」「空間」「目的」の四つの視点を意識してみるといいでしょう。

 内容のリフレーミングは、ネガティブだと思える事柄に対して、ポジティブな意味を見出してみるやり方です。これは言葉のリフレーミングでよく使われる方法です。

 例えば「この人は騒がしい」という言葉には「よく喋る人」という意味が含まれるでしょう。そこをポジティブなものに言い換えると「にぎやかな明るい人」という捉え方ができます。

 ほかにも、悲観的な出来事のなかに明るく捉える意味を見出すこともできます。例えば「この実験は失敗だ」という内容も、「このやり方がダメだということがわかった。ほかのやり方を考えてみよう」のように捉えることで、前向きな行動へと移せるでしょう。

 リフレーミングには大きく五つの方法が存在します。

リフレーミングの方法 言い換え前 言い換え後
言葉のリフレーミング 暗い
騒がしい
飽きっぽい
物静か・落ち着いている
にぎやか・明るい
興味旺盛・多趣味である
時間軸のリフレーミング 今、どう行動すればいい?
今、どうしてこんなことになったの?
10年後の自分から見たらどうなる?
今、経験しておいてよかった
仮定のリフレーミング 販売員としての考えとしては
自分だったらこうしてしまう
もしお客さまの立場だったら?
もしあの人だったどう考える?
解体のリフレーミング 仕事がうまくいかない どの分野?どの場面?どの人に対して?
Wantのリフレーミング 仕事が嫌で辞めたい 自分はどのような仕事がしたい?

 それぞれの方法について詳しく解説します。

 言葉のリフレーミングは、人の性格や特徴に対しての意味付けを変える場合によく使われます。私たちは偏見や思い込みで「この人は◯◯だ」と相手のイメージを決めてしまいがちです。こうしたネガティブなイメージをポジティブに言い換えるときに言葉のリフレーミングが使われます。

 人の性格や特徴をポジティブに捉えることにより、モチベーションを向上させられます。

 時間軸のリフレーミングは、物事の捉え方の時間軸を変化させて捉える手法です。例えば、今起きている困難な出来事に対して、すでに解決し成長している自分から見たらどう感じるだろうといった視点で物事を捉えてみましょう。

 また、先に起こるかもしれない重大なアクシデントなどに対して、今経験しておくことで軽く済んだという考え方も持てます。一見するとネガティブな要素でも、経験する時間軸を変えて見つめてみることでポジティブに捉えられます。

 状況や立場を仮定して「もし〜ならばどうする?」という視点で物事を考えてみましょう。こうした視点を持つことにより、ネガティブにしか考えられなかった発想を逆転させやすくなります。仮定を設定する際には、物事をネガティブに考えないことがコツです。

 解体のリフレーミングは、物事を大きく捉えるのではなく、細かく分解して考える方法です。これにより課題が整理でき、困難に思えた課題も簡単に見えてきます。

 細分化した課題を一つひとつ確認していくことで、発想も広がりやすくなります。

 Wantのリフレーミングは、悩みに対して理想の自分の姿へと視点を変える方法です。「そもそも自分がどうしたいのか」を問いかけることで解決に対しての道筋を見出しやすくします。

 特に「現状を避けたい」「嫌なことから抜け出したい」というネガティブなものに対して「何をしたいのか?」を問いかけましょう。この問いかけによって、今できるポジティブな行動が見つけ出せるようになります。

 リフレーミングは一見すると、単純に物事をポジティブに考えればよいと思いがちです。しかし、このように考えるだけでは仕事や日常生活において十分な効果が得られません。リフレーミングを仕事や生活のなかで生かすには、次に紹介する三つのポイントを意識してみましょう。

 失敗をしたときには、そこから学びを得るように心がけましょう。単に失敗してもよいと捉えるだけでなく、何が悪かったのかをしっかりと反省しなければなりません。

 こうした意識がけで、本当の意味で前向きに捉えられ、成長できるようになります。

 リフレーミングにより、相手のネガティブな要素をポジティブに言い換えられます。しかし、それを無理強いして相手に押し付けても、相手は前向きにはなりません。

 まずは相手の感情に対して共感することが大切です。そのうえで「あなたにはこんな良いところがあるよ」とリフレーミングした言葉をかけてあげましょう。

 リフレーミングを身につけるには、繰り返し継続して活用することが大切です。こうした意識がけにより、はじめはネガティブに捉えても、すぐにポジティブな思考へとリフレーミングできるようになります。

 日常会話から練習をすることで、思考も徐々に癖がついていき、リフレーミングの言葉がすぐに思い浮かびます。リフレーミングの言葉が自然と思い浮かぶようになるまでしっかりと継続して活用しましょう。

 リフレーミングは上手に活用することで、さまざまな問題を解決するための糸口を見つけられます。

 「ピンチのなかにチャンスあり」の言葉のとおり、リフレーミングでピンチの状況や内容をポジティブに捉え直すことで、チャンスを見つけられるものです。今まで悩んでいたことが嘘のように解決することもあります。

 リフレーミングを上手に活用して、ビジネスや生活のチャンスをどんどん見つけられる人材を目指しましょう。

【参考文献】
堀公俊 著『悩まない!技術 人生を変えるリフレーミング思考』朝日新聞出版