「ドライバーが荷主を選ぶ」時代に はくばくがパレットで進める効率化
輸送力の不足が懸念される「物流の2024年問題」で、省力化の手段として注目される「パレット輸送」。雑穀などを製造するはくばく(山梨県中央市)は、2014年ごろからパレット輸送の導入にとりくみ、現在は出荷する商品の9割ほどで使用しているといいます。荷積みの時間は手作業と比べて4分の1になるなど、着実に効率化が進んでいます。「ドライバーが荷主を選ぶ時代が来ている」と話す担当者に、導入の経緯や使い方の工夫を聞きました。
輸送力の不足が懸念される「物流の2024年問題」で、省力化の手段として注目される「パレット輸送」。雑穀などを製造するはくばく(山梨県中央市)は、2014年ごろからパレット輸送の導入にとりくみ、現在は出荷する商品の9割ほどで使用しているといいます。荷積みの時間は手作業と比べて4分の1になるなど、着実に効率化が進んでいます。「ドライバーが荷主を選ぶ時代が来ている」と話す担当者に、導入の経緯や使い方の工夫を聞きました。
はくばくの設立は1941年。戦後の食糧難が続く時代に、比較的流通が安定していた大麦の販売事業に取り組み、大麦を米と交ぜて炊いても違和感なく食べられるようにして売り上げを伸ばしました。現在の主力商品は、独自技術で生み出した「白米好きのためのもち麦」やロングセラーの「十六穀ごはん」。従業員数は約420人で、2022年の天皇杯を制したJ2ヴァンフオーレ甲府の胸スポンサーとしても知られています。2003年からは、3代目の長澤重俊さんが社長を務めています。
はくばくでは、県内にある三つの工場に倉庫が併設されており、ここから全国の物流施設や小売店に向けて、年間約5万4千トンの商品を出荷しています。 輸送手段の9割を占めるのがトラックとフェリー 。「現在、このルートで運ぶ商品は、基本的にパレットに乗せて出荷されています」と、物流部部長の小野健志さん(51)は話します。
パレット輸送は、四角い台(パレット)の上に荷物を載せることで、フォークリフトを使ってトラックの荷物を積み下ろしできるようにする方法です。手作業の積み下ろしに比べて作業者の負担も減り、大幅に作業時間を短縮できるため、輸送力不足が懸念される「物流の2024年問題」への対策の一つとして注目されてきました。
はくばくは主に、標準的な規格である1.1メートル四方のパレットを、レンタルして使っています。食料品は小口の注文もあるため、店頭などで荷物を卸す段階では、パレットごとではなくより細かい単位に分けて商品をバラ降ろしするケースもあります。それでも、倉庫から出荷する段階ではパレット使用を定着させることができました。現在は生産と同時に、商品がパレットに積まれる仕組みとなっています。倉庫での荷積み時間は、手積みの際はトラック1台あたり約2時間だったところ、パレットの導入で約30分に短縮されたそうです。
はくばくは2014年ごろからパレット輸送を導入しはじめ、2018年ごろから使用を本格化しました。 パレットの導入前は、荷積みに時間がかかって作業時間にばらつきがあることから、トラックの運行ダイヤをきちんと組めておらず、倉庫の敷地内にトラックの待機列ができてしまっていたそうです。
「トラックが敷地内にあふれてしまうのは安全上もよくありませんし、『なんとか改善してほしい』といった意見を運送会社さんからもらっていました」と小野さん。はくばくは地元の運送会社との付き合いが長く、関係性も密だったため、当時から定期的な意見交換を行っていたと言います。 こうして運送会社からの要望が、パレット輸送のきっかけとなりました。
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パレット輸送は荷積み時間の短縮につながる一方、1.1メートル四方サイズのパレットの中にうまく荷物を納める必要があるため、トラックの荷台にくまなく荷物を載せることがでるたバラ積みと比べて、積載効率が落ちてしまうというデメリットもあります。はくばくではこのデメリットを改善しようと、工夫を続けてきました。まず注目したのが「底面使用率」です。
「『底面使用率』は 、1.1メートル四方サイズのパレット面積に対して、荷物を載せている面積が何割くらいになるかを示すものです。積み方の効率が悪いと、底面使用率が80%ほどになり、荷物を積めていない部分が2割もあることになる。この底面使用率を上げていくことが大事だと考えました」
パレットの底面使用率をあげるため、雑穀商品を入れている段ボールの大きさを見直しました。タテとヨコをそれぞれ1センチほど切り詰めることで、パレットによりきっちり段ボールが積めるようになり、底面使用率は82%から94%へとアップしたそうです。
別の商品でも段ボールのサイズを見直しました。麦茶パックの商品をいれた段ボールでは、パレットを使うとトラックに1段しか積めず、上の部分に空きスペースができてしまっていました。そこで段ボール内の商品の向きをタテからヨコに変え、段ボールのサイズを変えることで、トラック内に2段のパレットで詰めるようにしました。トラックあたりの積載量は、約1.7倍に増えたそうです。
「いずれも、商品パッケージを変えるような大それたことはしていません。『ここ、まだ隙間があるんじゃない?』『ちょっと縮められんじゃない?』といった、ちょっとした気づきで、思った以上に積載効率をあげることができました。まだまだ改善の余地はあるので、これからも続けていきたい取り組みです」
パレット輸送は荷主側にとっても、出荷係の作業時間が減る、荷物の破損リスクが下がるといったメリットがあります。しかしそれ以外の面でも、荷主企業がパレット輸送を導入する必要性は増してきているといいます。
「私たちの商品も一部では、荷下ろしの際にパレットごとではないバラ降ろしの手作業が残っています。そうした仕事を頼むと、『うちはバラ降ろしの仕事はちょっと受けていないんですよね』とお断りされることが増えました」と小野さん。2024年問題が近づき、運送会社側でも効率化の必要性が高まる中、「パレット輸送でないと仕事は受けない」という傾向がこの1年ほどで急速に強まっているといいます。
「昔とちがって、ドライバーさん側が荷主を選ぶ時代が来たんだな、という気がします。我々も、日々の食事に使っていただくものを提供するメーカーとして、商品を安定的に届けるため、2024年問題への対応を続けていきたいと思います」
はくばくでは、商品の注文から到着までのリードタイムを1日のばしてもらうよう取引先に働きかけ、少しずつ了解を得ているといいます。出発時間の前倒しによって混雑を回避したり、休憩時間を確保しやすくなったりと、ドライバーの負担軽減につながることが期待されています。
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