目次

  1. 払うべき税金一覧と年間スケジュール
    1. 法人税
    2. 地方法人税
    3. 法人住民税
    4. 法人事業税
    5. 消費税
    6. 固定資産税および償却資産税
    7. 源泉徴収した所得税
    8. 源泉徴収した住民税
    9. 事業所税
    10. 印紙税
    11. 自動車税
  2. 中小企業経営者が把握しておくべき税金3つ
    1. 登録免許税
    2. 不動産取得税
    3. 相続税・贈与税
  3. 中小企業が活用すべき節税対策
    1. 赤字の繰り越し
    2. 減価償却に関する特例
    3. 事業承継税制
  4. 払うべき税金を把握して適切な節税策を立てよう

 法人が払うべき税金と支払い時期は以下の通りです。

税金の名前 特徴 支払時期
法人税 ・利益に対して課される
・税率は23.2%、中小法人等は年間所得800万円以下の部分に15%が適用される(2025年4月1日以降の事業開始より19%)
・決算終了後2カ月以内
・前年度の法人税額が20万円を超えると翌年度は中間納付が必要
・中間納付の期限は事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内に
地方法人税 ・利益に対して課される
・税率は基準法人税額に対して10.3%
・決算終了後2カ月以内
・前年度の法人税額が20万円を超えると翌年度は中間納付が必要
・中間納付の期限は事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内
法人住民税 ・事業を行う地域に対し納付する
・法人税割と均等割額から構成されている
・決算終了後2カ月以内
・前年度の法人税額が20万円を超えると翌年度は中間納付が必要
・中間納付の期限は事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内
法人事業税 ・事業を行う地域に対し納付する
・外形標準課税が適用されるか否かで項目や税率が変わる
・決算終了後2カ月以内
・前年度の法人税額が20万円を超える場合または外形標準適用法人の場合は中間納付が必要
・中間納付の期限は、事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内
消費税 ・預かった消費税から支払った消費税を引いて計算する
・一定規模以下の事業者には簡易的な計算方法が用意されている
・納税義務がある法人が納付する
・決算終了後2カ月以内
・課税期間の短縮が可能で、その場合も課税期間の最終日から2カ月以内に納付
・前年度の納付額が48万円を超えると中間申告が発生
・中間申告の回数は金額に応じて決定(年に1回・3回・11回)
固定資産税
および
償却資産税
・保有する固定資産に対して課される
・免税点を超えた場合、評価額に対して1.4%課される
・5月末、7月末、12月25日、2月末に分割して納付
源泉徴収した
所得税
・従業員に支払った給与(社会保険料控除等を加味後)に対して概算で計算し、控除する ・給与支払日の翌月10日
・常時雇用する人数が10人以下の場合に7月と1月の年2回に分割可能
源泉徴収した住民税 ・従業員の居住地から届く通知金額を基に控除する ・給与支払日の翌月10日
・常時雇用する人数が10人以下の場合に7月と1月の年2回に分割可能納付
事業所税 ・人口30万人以上の指定都市にある事業所が該当する
・資本割と従業者割にて計算する
・決算終了後2カ月以内
印紙税 ・契約書や領収書などの課税文書に対して課される
・文書の種類や記載金額によって金額が変動する
・消印(割印)を押して納税を示す
・文書を交付する時に貼付し、消印(割印)を押して納付
自動車税 ・4月1日に保有する車両に対して課される
・営業車や自家用車などの区別・排気量で税額が変わる
・毎年5月31日までに納税通知書の記載額を納付

 法人税は、法人の所得に対して課される税金です。損益計算書で計算した利益に対して、税務上の調整を加えて算出する所得に、以下の表に税率を乗じて計算します。

区分 法人の所得税 税率
・中小法人
・一般社団法人等
・人格のない社団等
年800万以下 15%
適用除外法人で年800万以下 19%
年800万超 23.2%
・中小法人以外の普通法人 所得税の影響なし 23.2%
・一般社団法人等以外の公益法人等
・協同組合等及び特定の医療法人
年800万以下 15%
年800万超 19%

 法人税の申告書は、2カ月以内に提出します。

 なお、年800万以下の所得に対して課される15%の税率は、本来19%です。しかし、租税特別措置法42条の3の2(表:第1欄の1号)により、2025年3月31日開始の事業年度までの時限立法として特例が定められています。

 時限立法とはいえ、過去からこの租税特別措置法は延長されているため、2024年末の税制改正大綱等で延長が盛り込まれる可能性は高いでしょう。

 納税期限は事業年度終了後2カ月以内です。また、前年度に20万円以上の法人税を支払っている場合は、事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内の中間納付が必要となります(参照:租税特別措置法第42条の3の2|e-Gov法令検索)。

 地方法人税とは、法人税同様に法人の所得に対して課される税金です。

 以下の計算方式にて計算します。

地方法人税=基準法人税額 × 10.3%

 法人税の申告書の中で同時に計算・申告します。納付書は法人税と別に用意してください。

 地方法人税は名前から地方税だと思われがちですが、国税に分類されます。

 納付期限は事業年度終了後2カ月以内です。また、法人税の中間納付を行っている場合は、地方法人税も併せて納付が必要です。

 法人住民税は、法人が事業を行っている都道府県及び市町村に支払います。

 計算式は、以下から構成されています。

項目 税額計算方法
法人税割額 課税標準 × 道府県民税率及び市町村民税率
均等割 資本金、従業員数によって金額が変動

 法人住民税は、事業を行う場所にて発生するのがポイントです。本社をはじめ、支店や営業所、工場なども含まれるため、税額から按分してそれぞれの地域に支払います。

 申告書は、事業年度終了後2カ月以内に提出します。また、納付期限も事業年度終了後2カ月以内です。法人税の中間納付を行う法人は、事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内に中間納付が必要となります。

 一般的な株式会社の法人事業税は、所得割を用いて計算されます。

区分 税額計算方法
所得割 法人税の課税標準となる所得金額から一定の調整を加えた額 × 税率
資本割 資本金の額と資本準備金の額の合計額 × 税率
付加価値割 (報酬給与額 + 純支払利子 + 純支払賃借料 ± 単年度損益)× 税率

 法人事業税の計算式は煩雑で、法人の種類によって1〜4号まで区分分けされています(参照:法人事業税の税率表|東京都主税局)。また、普通法人は資本金額が1億円を超える場合、外形標準課税適用法人とみなされます。(ただし2025年以降、資本金を減資しても一定の場合は対象となる基準が追加される予定)

 外形標準課税適用法人の場合は、所得割に加えて資本割・付加価値割の計算も必要となり、税率も普通法人とは異なる点に注意しましょう。

 法人事業税は、事業年度終了後2カ月以内に法人住民税と同時に申告し、納付します。また、法人税の中間納付を行う法人は、事業年度開始6カ月が経過した日から2カ月以内の中間納付が必要です。外形標準適用法人の場合は、法人税の中間納付が必要ない場合でも中間納付が必要となります。

 消費税は、物やサービスの販売に対して課される税です。計算式は以下の通りです。

消費税額 = 課税売上げに係る消費税額 - 課税仕入等に係る消費税額

 消費税額は10%または8%で計算されます。また、2023年10月1日以降は、適格請求書(インボイス)発行事業者以外から課税仕入を行う場合、仕入税額控除が一定の割合で減額されます。

 なお、この計算は非常に煩雑です。そのため、事業者の状況に応じて以下の制度と措置が用意されました。

・「簡易課税制度」……課税期間の売上が5,000万円以下の事業者が納付する消費税の計算を簡略化
・「適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置」……課税対象ではない事業者がインボイス発行者となった場合に適用

 消費税の支払時期は、課税期間終了後2カ月以内です。通常は企業の決算日と一致しますが、企業の決算日とは別に課税期間を1カ月または3カ月に短縮することができます。その場合も課税期間終了2カ月以内に申告と納付をします。前年度の納税額が48万円を超える場合は中間申告が必要です。回数は年に1回・3回・11回と金額によって異なります。

 固定資産税とは、法人が所有している固定資産に対して課される税金です。土地と家屋に対しては固定資産税が課され、それ以外の車両を除く有形固定資産については、償却資産税が課されます。

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%(土地30万円、家屋20万円の免税点あり)
償却資産税 = 課税標準額 × 1.4%(150万円の免税点あり)

 固定資産税は、市町村から課税通知書が届いたら納付します。

 償却資産税は1月31日までに市町村に対して申告書を提出し、後日、納付書が送付されます。支払期限は原則として5月末、7月末、12月25日、2月末です。

 従業員から源泉徴収した所得税は期日までの納付が必要です。

所得税の算出方法 給与から社会保険料等を控除した額(課税対象)を基に、給与所得の源泉徴収税額表を用いて算出

 源泉所得税は、従業員が家族を扶養している人数により変動します。あらかじめ提出されている、「給与所得者の扶養控除等申告書」を基に、源泉徴収表の甲欄を確認します。上記の書類を未提出または扶養家族がいない場合は、乙欄に記載されている額の納付が必要です(参照:給与所得の源泉徴収税額表|国税庁)。

 また上記以外にも、士業などに業務を委託した際に報酬から源泉徴収をして、納税することもあります。

 いずれの場合も納付期限は、支払った月の翌月10日までに「所得税源泉徴収高計算書」での申告とともに納付します。

 なお、給与の支給人員が常時10人未満の場合、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、給料及び報酬の納付期限を年に2回にすることが可能です。1月から6月分を7月10日までに、7月から12月分を1月20日までに申告及び納付します。

 所得税と同様、従業員の住民税も源泉徴収します。

項目 税額計算方法
源泉徴収する住民税 給与から社会保険料等を控除した額(課税対象)× 所得割 - 税額控除 + 均等割
所得割 市区町村民税6%、都道府県民税4%
税額控除 住宅借入金等特別税額控除、配当控除、外国税額控除 など
均等割 市区町村民税3,500円、都道府県民税1,500円
森林環境税(国税) 年額1,000円

 住民税は、各従業員の前年の所得金額を基に市町村が住民税を計算します。あらかじめ市区町村から通知を受け取るため、それに記載されている額を源泉徴収します。また、企業が源泉徴収するのは、従業員が特別徴収を選択した場合です。普通徴収を選択している場合や、そもそも住民税が非課税の場合は源泉徴収しません。

 納付期限は給与を支払った月の翌月10日までです。住民税も所得税と同様に、給与の支給人員が常時10人未満の場合は、それぞれの地方公共団体に対して「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出することで、年に2回にすることができます。この場合、6月から11月分を12月10日に、12月から5月分を6月10日までに支払います。

 事業所税は、人口30万人以上の指定都市に事業所を構える場合に発生する税金です。

 計算式は以下の通りです。

事業所税 = 資産割 (使用事業所の床面積 × 600円)+ 従業者割(従業者給与総額 × 0.25 ÷ 100)

 なお、資産割は事業所の合計床面積1,000㎡以下、従業者割は従業者数100人以下で免税となります。

 事業所税の申告は、事業年度終了の日から2カ月以内に市区町村に提出します。併せて、この期限までに納付することも必要です。

 印紙税とは、企業が発行する文書に対して課される税金です。以下のように税金額が決まります。

印紙税 = 課税文書の号数(1〜20号)及び記載された金額によって算出された金額

 対象となる印紙の金額は、国税庁の「印紙税額表」を確認しましょう。

 納付方法は、対象となる金額の印紙を購入し、課税文書に貼付・消印(割印)を押すことです。納付時期は課税文書の交付時となるため、忘れないようにしましょう。

 自動車税は、4月1日に保有する車両に対して課される税金です。

 税額については用途区分(乗用車か貨客兼用車かトラックなど)、総排気量、営業用などの要素から決められます。

 毎年5月上旬頃に納税通知書が届くため、5月31日までに納付しましょう。

 ここでは、中小企業で必ず発生するわけではないものの、納付する可能性がある、または社長個人に発生する可能性のある税金について紹介します。

  登録免許税は、会社設立時や不動産購入の際に必要となる税金です。登記の際は収入印紙を購入し、貼付することで納付します。

 以下は、登録免許税の計算式の一部です(参照:登録免許の税額表|国税庁)。

内容 課税標準 税率
株式会社設立 資本金の額 1,000分の7
(15万円に満たない時は1件につき15万円)
合同会社 資本金の額 1,000分の7
(6万円に満たない時は1件につき6万円)
不動産売買 不動産の価額 1,000分の20
(ただし、2026年3月31日までの間に登記を受ける場合、1,000分の15)

 納税額は、登記内容や会社、不動産の規模によって異なります。納税時期は登記申請のタイミングとなりますが、登記を司法書士に依頼している場合は、申請や納付をまとめてサポートしてもらえるでしょう。

 不動産取得税とは、土地や家屋などを取得した際に課される税金です。相続により不動産を取得した場合は、課税されないケースもあります。

 主な計算式は以下の通りです。

区分 計算方法
土地 固定資産税評価額 × 1/2 × 3%
(ただし、固定資産税評価額が10万円以下の場合は免税)
家屋 固定資産税評価額 × 4%
(ただし、固定資産税評価額が下記に該当する場合は免税
・新築・増築・改築23万
・承継など12万)

 申告方法については、不動産を取得してから一定期間内に登記をした場合、申告が不要になることがあります。不動産を取得した地域の自治体から案内を確認しましょう。

 納付については、支払い時期が近づくと、地方自治体から納付書が送付されます。

 相続税・贈与税は個人に課される税金であるため、法人に対して課されることはありません。しかし、経営者やそれに近い人が株式を保有している場合、相続や贈与を行うタイミングでこれらの税が課せられることはあります。

 相続税・贈与税のおおまかな計算方法は以下の通りです。

相続税の計算方法 (課税遺産総額 × 法定相続分)× 税率 - 控除
贈与税の計算方法 (受け取った財産 - 110万円)× 税率 - 控除

 相続税・贈与税についても正しく理解しておき、いざというときに節税できるよう対策しておきましょう。

 中小企業が払うべき税金は多岐にわたるものの、節税できる方法もあります。ここでは、活用しやすい節税対策を3つ紹介します。

 青色申告で赤字決算となった場合は、次年度以降の決算において「欠損金の繰越控除」が受けられます。なお繰越期間は10年で、その間の決算で黒字になっても赤字分と相殺できるため、節税につながるでしょう。

 この繰越控除は、法人税、地方法人税、法人事業税などの税金に対して効果があります。

 少額の固定資産を購入した場合、早めに費用とすることで、その期の法人税などを減額できます。

 減価償却に関する特例で主なものは、以下2つがあります。

主な特例 概要 対象となる固定資産
一括償却資産 ・取得した固定資産を3年間で減価償却する 20万円未満の固定資産
少額減価償却資産 ・取得した固定資産をその事業年度で損金算入する
・年間300万円までの限度あり
・適用には、従業員の人数などの要件あり
30万円未満

 事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場会社の株主兼経営者から、後継者へ代表取締役の交代や自社株式等の贈与などを実施した際に、相続税・贈与税の納税を猶予・免除できる制度です。

 贈与税の猶予を受けるには、都道府県知事の認定を受ける・一定程度の雇用を維持するなど、多くの要件があることに留意しましょう。

 また、猶予中に贈与者が亡くなった場合、贈与税は全額免除されます。相続する後継者には相続税が発生しますが、これも都道府県知事に認定を受けることで100%または80%が猶予されます。さらに、一定期間後に後継者が亡くなる等、要件を満たす場合は相続税の免除が可能です。

 ただし要件が複雑かつ長期になるため、税制の利用を検討する場合は、専門家から適切なコンサルティングを受けましょう。

 中小企業には、さまざまな払うべき税金があります。これらは納付する時期もそれぞれ異なるため、計画的に資金繰りしないといけません。

 とはいえ、中小企業でも活用できる節税対策があります。資金を残しつつ事業を拡大していけるよう、適切な節税対策を行いましょう。