目次

  1. 不採用の連絡が企業イメージを左右する?
  2. 不採用通知を電話で行うメリット
  3. 不採用通知を電話で行うときのポイント
    1. 本人か必ずはじめに確認する
    2. あらかじめ伝える内容を整理しておく
    3. 適切な連絡のタイミングを選ぶ
    4. 応募書類の取り扱いについて伝える
  4. 【そのまま使える】不採用の電話連絡例文
    1. 【書類選考】どこから応募してきたかお伝えする
    2. 【1次・2次面接選考】伝えたい内容をしっかり精査する
    3. 【最終面接選考】可能な限り早く連絡を
  5. 電話で不採用通知 イレギュラーな場面の対処法
    1. 不採用の理由を聞かれたら?
    2. 留守電で連絡できなかったときは?
    3. 連絡がつかないまま長期休みに入ってしまいそうなときは?
  6. 企業イメージを損なわない不採用通知の方法
    1. 結果を通知する期限をあらかじめ伝える
    2. 合格者のみの連絡は避ける
    3. 応募者全員に感謝の気持ちをもつ
  7. 不採用通知の電話は目的に応じて活用しよう

 「企業の不採用時の対応がSNSにUPされ炎上」このようなニュースを目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。現代では、SNSと採用業務は切っても切れない関係になってきました。特に若年層を対象とする場合、SNSに一切触れないという応募者はごく少数です。

 「不採用の通知が問題で炎上するなら、手間もかからないし合格者のみに連絡をすればよいのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、連絡をしないことで不採用を消極的に通知する行為は「サイレントお祈り」と呼ばれており、“企業として誠実さに欠ける”という印象がついてしまうリスクがあります。

 新卒採用のタイミングで企業イメージが悪くなった場合、例えば数年後の中途採用でも検討候補から外す、取引先に入社して印象が悪いままでいるといった影響も考えられます。

 合格・採用の連絡よりも、一層注意を払うべきは不採用の連絡なのです。

 不採用通知をメールや郵送書類ではなく電話で行う企業にとってのメリットは、大きく3つです。

不採用通知を電話で行うメリット
・本人に確実に不採用を伝えることができる
・場合によっては異なる条件での交渉ができる余地を作れる
・再度募集の可能性があるなど個別に事情を伝えられる

 メールや封書での不採用通知の場合、確実に本人に通知が届いているか確認することは難しくなりますが、電話の場合確実に本人と確認して通知できます。メールが迷惑メールに配信されていたために通知に気づかず「連絡がこない」とクレームになる、といった事故が起こりません。

 また「応募職種では採用定員を満たしてしまったため不採用だが、別の部署でまだ募集がありそちらを案内したい」といったのケースでは本人に直接詳細を説明できる電話連絡が向いています。

 さらに、十分採用基準を満たす職歴であるが、急遽採用が停止になってしまったときなど、会社都合の不合格の場合は、その旨を伝えて真摯に謝罪をすることで、次回の募集再開に可能性を残すことができるかもしれません。

 以上のようなケースがあてはまる場合、不採用通知を電話で行うメリットを生かすことができます。一方、すべての場合で不採用通知を電話ですることが必ずしも良い印象に繋がるとは限りません。メールよりもかえって連絡が遅くなったり、直接不採用を告げられることを苦手と感じる応募者もいたりするからです。

 電話での不採用通知を行う際は、応募者の立場にたって電話連絡の必要があるかしっかり見極めましょう。そのうえで、電話での不採用通知を行う際のポイントを紹介します。

不採用通知を電話で行うときのポイント
・本人か必ずはじめに確認する
・あらかじめる伝える内容を整理しておく
・適切な連絡のタイミングを選ぶ
・応募書類の取り扱いについて伝える

 合否の連絡は、本人が連絡先として記載した携帯電話番号にする場合がほとんどです。そのため、本人と思い込んで話を進めてしまうことがあります。

 しかし、間違い電話をしてしまったり、就業時間中は私物の携帯は自宅に置いていて家人が出たりする可能性もあります。携帯電話番号でも、必ず最初に本人か確認しましょう。

 新卒採用で不採用通知が電話で行われるケースは少ないため、応募者は電話連絡=合格通知とイメージしてしまいがちです。挨拶や面接での印象など回りくどい会話が長引くと、相手をぬか喜びさせてしまうかもしれません。

 スムーズに不合格であることを伝えられるよう、伝える内容について準備しておきましょう。また、その内容は社内で共有しましょう。内容はもちろん、表現が不適切な表現になっていないか、複数の目で確認することが大切です。

 合格にせよ不合格にせよ、結果の連絡はできる限り速やかに行うのが望ましいことは言うまでもありません。大切なことは、あらかじめいつまでに連絡をするか期限を伝え、それよりも早く連絡をすることです。

 さらに、電話の場合適切なタイミングを選ぶ必要もあります。職務経歴書で現職中の方の勤務時間中、就業時間外でも早朝や深夜など一般常識の範囲外の時間帯に電話をすることがないように注意してください。

 応募書類がある場合、その後の取り扱いについて通知しましょう。データであれば保有するか消去するかを伝える、郵送書類があれば廃棄か返送か選ぶなど、相手に選択肢を提示することで良い印象につながります。

 いくつかのパターンで「電話での不採用通知の例文」を作成しました。内容を適宜組み合わせて活用してください。

 書類選考の段階では、応募者が複数の会社に一斉に応募していて社名だけではどの会社かとっさに判断できないことも考えられます。しっかり社名を伝えること、どのルートで応募してきたかを併せて伝えることで誤解を防ぎましょう。

……例文……

株式会社ツギノジダイで採用を担当しております鈴木と申します。

田中イチロウ様のお電話に間違いはないでしょうか。

ただ今、少しお時間頂いてもよろしいでしょうか?……ありがとうございます。

先日、弊社ホームページの応募フォームより関東支店営業職にご応募の職務経歴書を送信いただきましたが、残念ながら今回は見送りとなりました。

ご応募頂きましたデータは責任をもって削除いたしますのでご安心ください。

今回は田中さまの貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。それでは失礼いたします。

 一次面接・二次面接でより詳しい経歴について聞き取りをした結果、別部署や別支店での候補者として検討したい、というケースが発生するのは面接後であることが多いのではないでしょうか。

 急ぎの内容は電話で、詳細はメールでと組み合わせて連絡するという方法もおすすめです。

……例文……

株式会社ツギノジダイで採用を担当しております鈴木と申します。

田中イチロウ様のお電話に間違いはないでしょうか。

ただ今、少しお時間頂いてもよろしいでしょうか?……ありがとうございます。

〇月〇日の面接にお時間を頂いたのですが、残念ながら今回はご応募頂きました関東支店の営業職では採用を見送らせていただくこととなりました。

そこでひとつご相談なのですが、田中様のご経歴から、同じ関東支店の技術営業職にご興味はおありではないでしょうか?今ご判断いただくことは難しいかと思いますので、またこの件に関して詳細をメールでお送りしたいと思いますが、よろしいでしょうか?

……それではぜひご検討ください。失礼いたします。

 最終面接まで進むと、応募者の期待も相応に高くなり、不採用の通知に落胆する度合いも深くなる方が少なくないでしょう。特に転職は短期決戦で行う方も多く、より転職先として真剣度が高まっている最終面接の合否は、可能な限り早く連絡をすることが誠実さを伝える最も大切なポイントです。

……例文……

株式会社ツギノジダイで採用を担当しております鈴木と申します。

田中イチロウ様のお電話に間違いはないでしょうか。

ただ今、少しお時間頂いてもよろしいでしょうか?……ありがとうございます。

昨日の最終面接に弊社までご足労を頂いたのですが、残念ながら社内で慎重に検討した結果、今回はご希望に添えない結果となりました。大変申し訳ございません。

田中様にご提出いただきました書類につきましては、弊社で適切に処分させていただく、もしくはご返送対応もいたしますが、どちらの方がご都合よろしいでしょうか。……はい、それでは弊社で責任をもって処分いたします。

それでは田中様、この度はご応募頂きありがとうございました。失礼いたします。

 電話で不採用通知をした場合、応募者からイレギュラーな反応にあったり、想定していなかった状況に陥ったりすることがあります。その場合の対処法について紹介します。

 電話連絡の場合、応募者から「今後のため、不採用の理由を教えて下さい」と尋ねられることがあります。不採用の理由をこたえる義務はありませんが、応募者の心証を損ねることのない返答を心がけましょう。

こたえられないことを伝える場合
大変申し訳ございません。当社規定により、採用選考基準は社外秘となっております。お伝えすることができず、大変申し訳ございません
その方の職務経歴書や面接に大きな問題点はないと伝えたい場合
田中様のご経歴や面接での印象には、大変魅力的な点が多くございました。実は今回、多数の応募を頂戴しておりまして、ご経歴や勤務地までの通勤時間などを加味した相対的評価で他の方へお願いすることになった次第です。大変申し訳ございません。

 連絡先として携帯電話が職務経歴書に記載されているが、非通知着信や連絡先に登録されていない番号は着信拒否設定をしている、常に留守番電話になっていて基本的に音声通話には出ない、というケースも少なくありません。

 基本的に留守電に不採用であることを直接録音することは避け、社名を名乗って改めて連絡をする旨を残しましょう。目安として、日付や時間を変えて2回連絡が取れない場合は、メールや書類など代替の手段で結果について送る旨を録音するという方法もあります。

 メールや封書ではなく、直接電話でやり取りする必要があるにもかかわらず、連絡がつかないまま長期休みに入ってしまいそうなときは、折り返しの連絡を依頼してみましょう。

 優先順位としてはメールアドレス、次に携帯電話番号へのSMS(ショートメッセージサービス)がおすすめです。連絡する担当者名と電話応対しやすい時間を記載しておくとスムーズです。

 最後に、電話に限らず、不採用を通知する際に企業イメージを損なうリスクを最小限にするための方法について紹介します。どのような通知方法であれ、これらの基本的な考え方を優先することで、大きなトラブルが起こる可能性を最小限に留められるでしょう。

 面接の「締めの言葉」として「それでは結果は後日お知らせいたします」など、特に期限を切らずに伝えることがありませんか?

 多数の応募者があり、全員の選考が終わるまで採用結果を確定できない、最終決裁者が長期休暇や出張で不在で決定に至っていないなど、時間がかかることがあらかじめわかっている場合、できるだけ理由とともに時間がかかることをお詫びしつつ、合否の連絡をする期限をあらかじめお伝えしておきましょう。

 「いつ連絡が来るかわからない」のは応募者にとって大きなストレスです。実は合格連絡に気がついていないといったアクシデントが発生していないか、確認の連絡をする応募者も少なくありません。期限内であれば、安心して待つことができます。

 「合否の連絡は合格者のみとさせていただきます」という案内はできる限り避けましょう。企業にとっては工数を減らしつつ、合格者の調整もしやすい方法ですが、応募者にとっては結論がわからない待機期間が長くなり、応募者に寄り添った対応をしない会社として悪印象を持つ可能性があります。

 数多くの求人の中から自社に興味を持ち、応募という手間と時間をかけてくれたことに対する感謝の気持ちをもって対応しましょう。採用連絡をする際の基本的な姿勢です。

 電話での連絡の場合、相手の言葉を遮って話すようなことがないか、せっかちな早口になっていないか、お名前の読み方を間違っていないかなど、失礼がないように対応しましょう。

 また、実際に面接を担当した面接官から直接連絡をする、面接時の交通費を負担するといった細やかな配慮も感謝の気持ちを伝える工夫のひとつです。

 応募に関する問い合わせから書類送付、面接などを経て応募者との「最後のやりとり」となる不採用通知は、企業への印象を最終的に左右する大切なメッセージです。

 将来的に再度採用候補となる、また取引先やお客様としてご縁がいただけるよう、応募者側の立場にたって速やかに、丁寧に対応する手段の候補のひとつとして電話の連絡を検討しましょう。